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万の軌跡と救世主  作者: gagaga
第二部 王都 学園編
80/130

77


 ロディマスとレイモンドの一戦の後、訓練は昼の休憩を挟む為に一時休止となった。

 その間にロディマスはアリシアとミーシャを連れて食堂で食事を取り、それから再び屋内訓練場へと足を運んだ。


 そして訓練場の奥で作業をしている王子の姿が見え、その足元が今まで鉄板で蓋をされていた部分が露わとなっていたのに、ロディマスは気が付いた。

 人の胴体よりも太い穴があるのが、入り口に立つロディマスからでも見えたのである。



 そこに丸太を次々と差し込んでいく王子を見ながら、これは手伝いを申し出るべきかどうかとロディマスは悩んだ。


 そして、見守るだけにした。


「どうせ俺が行っても役には立たんし、今は授業外だ。ゆっくり体を休めよう」


「ええ、そうね。身体は大丈夫そうね。さすがはロディマスだわ、しぶといわね」


「しぶといかはともかく、貴様は鎧を脱いで先ほどから左腕を掻いているが、それは何なのだ?」


「え?いえ、なんでもないわよ。ところであなた・・・」


「なんだ?」


「なんでみんなに嫌われてないの?」


「はぁ!?」


 いきなりの失礼すぎるアリシアの質問に、思わずロディマスが大声を上げた。


 昼を食べ終わる頃から腕を擦り、今や腕を掻いているのが心配になりロディマスが声をかけてみれば、これである。

 アリシアはやはりアリシアだったと、ロディマスはほんの少し距離が近くなったと思っていただけに、ショックでつい語気を荒げてしまった。


「本当に大丈夫なのか!?嘘を吐くとタメにならんぞ!?」


「本当に大丈夫なの。だから放っておいて」


「貴様、まさかアレが再発したのではないだろうな!?」


「それは絶対に違うわ。あら、教官が見てるわよ?」


 ロディマスが痴話喧嘩のようなものをしていると気付いたらしい王子が、ニヤリと笑っていた。

 その笑みに嫌な予感しかしなかったロディマスは、アリシアの事を一旦脇に置いて王子の方へと向き直った。



「ロディマスよ、手伝え」


「む、はい。・・・、おい、アリシア、貴様の所為だぞ」


「なんでよ?そもそもねぇ。あなたがピリピリするのが悪いんじゃない」


「ピリピリしているのは貴様だろう。カリカリか?カルシウムが足りていないのだな、小魚を食べろ。・・・、まぁいい、行ってくる」


「カルシウムって何よ?フン!!もういいわ!!私も手伝うわ!!」


「腕を掻きながらか?冗談はよせ。【リカバリーブロウ】。何が不調の原因かは知らんが、今の貴様は普段とは違う。だからとにかく大人しくしていろ。これ以上余計な手間をかけさせるな」


「ここで回復魔法なんて・・・。も、もう!!分かったわよ!!待ってるわよ!!・・・相変わらずなんだから・・・」


 そう言いながら腕を掻かなくなったアリシアに、もう大丈夫だろうと判断したロディマスは、急ぎ王子の元へと向かった。



 ロディマスは駆け足で王子の元へと辿り着き、そこで丸太を見て、その下に置かれている縄を見てから王子に問いかけた。


「これをこの丸太の上半分に巻き付ければいいのでしょうか?」


「ああ、そうだ。良く分かったな」


「実家でも似たようなものはありました」


「ほう、それはさぞ素晴らしいご実家なのだな。実に素晴らしい」


「そうですね」


「それに判断力もかなりのものだ。実にいいぞ。我が隊にも君のような者が欲しいくらいだ」


「後方支援部隊ならともかく、最前線の部隊にとは、ご冗談を」


 ベタ褒めしてくる王子に、ロディマスは即座に辞退を申し出た。

 ここできっぱりと断っておかないと、本当に卒業後に編入させられかねないからである。

 腐っても王子なので、その程度の権力は持っているとロディマスは警戒していた。


 なお、立てた丸太に打ち込む訓練は、生身の人よりも頑丈で、それでいて金属と違い弾性がある為に体を痛めにくい。

 だから動作を体に覚えさせる為に何度も繰り返す訓練には、うってつけの方法なのである。

 この方法により、ロディマスもライルに【サイレントピアス】を教えてもらったので、思い入れのある方法でもあった。。



 しかしその懐かしき思い出も、目の前の丸太を触った瞬間に消し飛んだ。


「教官、これは、エルダーキプロスの丸太ですか?」


「ほう、良く分かったな」


「これら、全てでしょうか?」


「そうだ、さすが大商人の息子か。これは頑丈で、剣士にも魔法使いにも使える素晴らしい物だ。使い捨てられるのも良い点だな」


「使い捨てる!?」


 エルダーキプロス、ヒノキの古木は、決して安い素材ではない。

 しかも、古木だけあって生産量は多くない。

 まず今あるほどの量を入手するのでさえ大変であり、そしてそんなものを使い捨てる発言は、ロディマスにはどうにも理解が出来なかった。



 そしてロディマスは、疑問を口にした。


「この学園は、それほどまでに資金が潤沢なのですか?」


 この学園には最前線に赴きたくない貴族の子弟が多い。その親元から大量の資金援助があってもおかしくはないだろうと、ロディマスも少しは考えた。


 だが、この場で最高位のアリシアの実家はド貧乏。

 次に爵位が高いレイモンドの実家も、魔物の森に対する防衛費が家計を圧迫しており、伯爵なのにあまり裕福ではない。


 そして、男爵家や子爵家がこれを実現できるだけの多額の寄付をしたとは考えられなかったし、上位の貴族がいるのであれば、彼らのメンツの都合もあるので飛び抜けた額の寄付をしているはずがなかった。


 では、一体どこから金が湧いて出ているのか。



 悩むロディマスに、その質問が意外だったのか。

 王子がしばらく考え込んでから、こう答えてきた。


「学園長には泣かれたが、俺の時代もこれで訓練をしたのだ。やはり、ここの伝統として、これは外せんと通したのだ。訓練が終われば薪にも出来る」


「なん・・・だと・・・!?」



 王立のくせに程度の低い授業内容や、思ったよりも質素な食事内容など、この学園の在り様についてロディマスは疑問に思っていた。

 どこかの良く分からない所の伯爵家の五男やら男爵家の六男などが授業を行なっていたし、学園の裏庭は完全に畑になっていた。


 それも最初はそういう場所だからだと考えていたが、何故、そんな事になっているのか、今、合点がいった。


「それでこの学園は、妙に貧乏くさいのか・・・」


「そうか?最前線ではここの食事のレベルであれば十分に豪勢だと思えるぞ。どうだ、君も最前線で従事してみないか?」


 確かに質の高い訓練を行なうのはいい。

 アリシアの言う通りならば、全員が騎士を目指しているのである。

 実戦に近い訓練を積めるのは願ったり叶ったりだろう。



 しかし、ロディマスは授業と食事の質が悪かった原因がコレだと言うのには、到底納得が行かなかった。


 あまりに非合理的かつ非効率な理由の所為でミーシャが食事でがっかりしていた。

 そんなものは、到底ロディマスには認められなかったのである。



「教官、お話がございます」


「む、なんだ?」


「これの事ですが」


 そう言って話を切り出したロディマスに、最初は難色を示していた王子だが、ロディマスが根気よく説得し続けた結果、状況が改善される事となった。



〇〇〇



「さて、俺はどうするか」


 いざ訓練が始まったら、王子は簡単に説明を行なった後で、自習だと言って壁際に下がってしまっていた。

 完全に教育を放棄している教育者に呆れつつ、ロディマスもどうするか考えた。


 アリシアとミーシャは剣士サイドで模擬戦を行なっている。


「ねぇ、ちょっといいかしらぁ?」


「む?貴様は先ほどの間抜けか」


 声をかけてきたのは、ランニングの際に重装備で周回遅れをしていた者の一人だった。

 その少女はロディマスの痛烈な指摘に怯み、次にその意味を理解してから怒り出した。


「間抜けぇ!?何ですのぉ、もっと違う言い方があるでしょぉ!!あなたぁ、平民よねぇ?私、カーディナル子爵家の四女なのよぉ?我が子爵家の親は、あのランク伯爵様なのよぉぉ!?もっと相応しい対応の仕方と言うものがあるでしょぉぉぉぉおお!!」


 ランク伯爵とは、製塩技術で経済的に飛躍したランク領の領主で、成金である。

 ロディマスの実家近くに住まうバンディエゴ村の住民である元商人たちが最初に奉公に出た領地でもある。


 そんなランク領に対して、良い印象を持っていないロディマスは、辛辣に答えた。


「そうだな。だが、それがどうした?俺が稼いだ金で食っているような連中に払う敬意など持ち合わせていないが?」


「な!?なんですってぇぇぇええ!!ちょぉぉぉっと強かったからってぇぇぇ、いい気にならないでよねぇぇぇええ!!」


 叫び出したカーディナル子爵家のご令嬢に周囲の目が集まる中、ロディマスは力いっぱい反論した。


「ほう、負けた俺が強いとな?嫌味か、貴様!!」


「えぇぇ?怒るのそこなのぉぉお!?」


「ふざけるな!!好きで弱い訳ではないわ!!」


「あぁ、そのぉぉ、ごめんぅぅぅ」


「フン。事実と言うものは時に人を傷つけるのだ。注意しろ」


「ええ、そうねぇ・・・、って違うわよぉ!!平民のくせに何言ってるのよぉ!!」


 ビシッとロディマスを指差して叫んだご令嬢に、しかしロディマスは平然としていた。

 実家のあるペントラルの街の、すれ違いざまに舌打ちやツバ吐きをしてきたダメ貴族たちを思えば、まだかわいい方だと思う余裕さえ、ロディマスにはあった。


 しかし、話し方に違和感があったのでロディマスは警戒した。

 まるで本心を隠しているかのような違和感だらけだったので、ロディマスは少女に対して強い不信感を募らせ、どう対処するか考えた。



 考えた結果、今度は完全に無視する事にした。


「どうでもいい。さて、ひとまずは体を慣らすか」


「ちょっとぉ!!どこ行くのよぉ!!ふざけないでぇぇええええ!!なんで無視するのよぉぉぉぉおおお!!」


「いち、に、さん、し。ふむ、引きつる感じもないな」


 そうしてロディマスは何度も声をかけられたが、その度に全く無視をしていた。

 話し方が間延びしているのに気合が入っている、そんな珍妙な生物の相手など時間の無駄だと感じていたからである。


 そうして10分ほど無視していると、少女の顔が真っ赤に染まっていた。


「ふざけないでぇ!!お前なんてぇぇ魔法で吹き飛ばしてやるぅぅぅぅうううう!!」


 そして、少女が我を失って暴走しかけていた。

 しかしロディマスは、ミーシャやアリシアの迫力には遠く及ばないな、と思っていたので無視をして今度はその場で足踏みを始めた。


「ほっほっほ、ほっほっほ。ほっほっほ」


「こ、このぉぉぉ!!【ファイアボ!?」


「そこまでよ。一体、何をしようと言うのかしら?」


「あぁぁ、アリシア様ぁ!!なんでこんなやつをぉぉ庇うんですかぁぁああ!!」


「待てコーリ!!アリシア様もお待ちください!!俺からコーリに伝えるんで、どうか、どうかご勘弁を!!」


 騒がしい貴族サイドの一切を無視して(もも)上げを行なっていたロディマスは、続いて体を前に倒して、それからめいっぱい後ろへと逸らしていた。


「いっち、にー、いっち、にー」


「離してぇ!!ジャックぅ!!アリシア様もなんでこんなヤツをぉぉ!!もぉ、もしかしてお金ですかぁぁぁ!!平民のくせにこんな所にいるのがおかしいと思っていたのですぅぅ!!こ、こいつがアリシア様ッヲ!?」


「だめだコーリ!!いいからこっちに来るんだ!!」


 興奮して手が付けられなくなってきていた少女の口を少年は手でふさぎつつ、訓練場の隅に引っ張っていった。



 それを見送りながら、アリシアはロディマスに尋ねた。


「・・・、ふう。それでロディマスは何をやっているのかしら?」


「見て分からんか?準備運動だ。先ほど回復魔法で急激に回復させたのでな。皮や筋肉が張らないようにしているのだ」


 ロディマスがそう素直に答えたら、アリシアは肩をすくめていた。

 そしてアリシアは深呼吸を何度かして、落ち着いた所でロディマスを指差して言った。


「あなたね、折角さっきから私が守っているのに何をやっているの?」


「守る?ふむ、うーむ、ふむ。なるほど、そうか」


「そうよ。全く、世話が焼けるんだから。それに魔法を撃たれそうになったのよ?少しは焦るなりしなさいよね」


 ロディマスを守ると言うのは、アリシアが張り付くことで、他の貴族の子弟から手出しをさせないと言うものだろう。

 その程度はロディマスも理解していた。


 中途半端な地位の者が、下位の存在に対して優位に立ち、貶す。

 アリシアはそれを警戒していたのだろう。


 だが、そんなものはよくある話だと、ロディマスは素で先ほどの少女の言を受け流していたのである。

 よってロディマスにはアリシアの行動に感謝する理由がなかった。


 それに、先ほどの少女が使用しようとした程度の弱い魔法ならば、ロディマスには効かないのである。

 つまり焦る理由も、ロディマスにはなかったのだった。



 そうなると後に残るのは、ただただ面倒くさいと言う気持ちだけだった。


「学園を辞めるか?そもそも俺はここに来たくはなかったのだ。辞めれば面倒もなくなるが?」


「ダメよ。パパの顔も立てなきゃいけないし、あなたに選択権はないわ」


「そうか、なら精々注意をしよう」


「・・・、本当かしら?」


 疑心暗鬼に陥っているアリシアに、顎で先ほどの少女を示す。

 するとそちらには、媚びへつらうかのような引きつった笑顔を顔に張り付かせた少女の姿があった。


「アリシア様ぁ、そのぅ・・・あのぅ・・・」


 そう言って無理な笑顔で謝ろうとする少女に対して、ロディマスは手で制した。


 それに驚く少女と付き添いの少年に、ロディマスはこう答えた。


「俺は貴族ではないのでな。礼がなっていないのは事実だ。だが、それを直す気はない」


「えぇ?そ、そうなのですねぇ」


「ああ、だから、俺の態度を見逃せ。それで、今回は手打ちだ」


「・・・?えぇ?」


「俺の言葉遣いや態度を気にするな。場合によっては見逃せ。今後そうするなら、アリシアに謝る必要はないと言ったのだ」


「・・・、そ、そうぅぅ。アリシア様がそう仰るのであればぁぁ、それでいいわぁ」


「私は、いいわよ。ロディマスに任せるわ」


 プイっと顔を背けたアリシアに眉を顰めつつ、ロディマスは目の前の少女に言った。


「だ、そうだ。先ほどのはお互い不幸な事故だったと忘れるべきだ。俺も忘れる」


「分かったわぁ。忘れたわぁ、うん、忘れたわぁ」


「ならいい。もう用がないなら俺は・・・、どうするか。ひとまずアリシアはミーシャの元へ戻れ」


「私はここにおります、ご主人様」


「なんだと!?いつの間に背後に!!」


「いつでもおそばにおります」


 そう言ってニタリと笑うミーシャの所為で格好良く決めたはずなのに台無しな気分となったロディマスは、ミーシャから目を逸らした。

 そして、本気でどうするか悩み始めた。


 正直、今すぐにでも兄ハワードの元へ行き、学園改造計画案を提出したい。

 しかし授業を終えるまでは学園外への外出を禁止されている。

 今回の授業があと何時間続くか分からないものの、何かを行わなければあの王子は納得しないだろう。


 そこまで考え、それでも妙案が浮かばなかったので、ひとまず筋トレを始めた。


「いっち、に、いっち、に」


「もう、あなたね。マイペースにも程があるでしょう。・・・、まぁいいわ、私たちあちらに戻るから。何かあったら言いなさいよ?」


「貴様は俺の母親か!!いいから向こうへ行け!!」


「はいはい、分かったわよ。もう、年下のくせに可愛げがないんだから」


 そりゃ中身40のオッサンですから、とは言えず、ロディマスは黙々と筋トレを続けた。



 そして先ほどの騒ぎで集まっていた面々も、アリシアが立ち去れば自然と離れていき、残ったのは同じ魔法使い組だけだった。


 そんな魔法使い組の一人である、先ほどの少女がロディマスに話しかけてきた。


「先ほどは悪かったわぁ」


「いっち、に・・・、気にするな」


「自覚はあるのねぇ」


「いっち、に・・・、貴様は何なのだ?俺は先ほど忘れろと言ったはずだが?」


「そうねぇ。そうぅ・・・、あのねぇ?」


「なんだ?」


「さっきぃ、お前が強いと思ったのは本当なのよぅ。だから魔法の腕前も見せて欲しかった訳なのよぅ。分かるわよねぇ?」


「いや、全く分からんな」


 ロディマスがそう答えれば、先ほどまで落ち着いていた少女の顔が瞬く間に真っ赤に染まっていった。

 これはまずいと、これでは先ほど仲裁に入ったアリシアが己の不甲斐なさに暴走してしまうと危惧し、慌ててロディマスは弁明をした。


「俺は察しの良い方ではない。分かりやすく、頼む」


「そぉなのぅ。それならぁまだ我慢できるわぁ」


 何を言いたいのかは分かっていたが、とにかくこの場をやり過ごす為に一歩引いてみたのである。

 勝気な性格をしているが、相変わらず小心者なロディマスは、己のそんな小市民な心にそっとため息を吐いた。


 そして、間延びした物言いなのに、どうやらこの少女は相当に短気なようであるとロディマスは気が付いた。

 そんな恐ろしい個性を備えた少女には、余計な口出しをすればまた怒りを買うと考えて、そのまま次の言葉を待つだけにした。



「つまりぃ、今度はお前の魔法を見せなさいと言うのよぅ?」


「悪いなロディマス。彼女、実は無理してゆっくりしゃべってるんだ。見ての通り、ほら、だから、な?」


「知らんな。その気持ち悪い話し方を辞めない限りは、話を聞く気すら沸かんな」


 条件反射で相手を否定したくなる悪癖を持つロディマスがそう指摘すると、またも少女の顔が赤く染まっていった。

 まるで昔から続いている長寿番組のお父さんみたいなヤツだとロディマスは観察しつつ、この後で何が起こるか分からないと警戒を強めつつ、己の迂闊さに呆れた。



 そして少女はプッツンしたようで、先ほどまでとは異なる話し方で一気にまくし立ててきた。


「だまらっしゃああ!!このアホンダラがぁ!!ええからとっとと魔法を見せんかいやぁ!!ザーけとったらイテまうぞ!!」


「・・・、入り混じりすぎて何語か判別付かんな」


「何ゆーとんねん!!」


「だが、面白い。その方がいいぞ、貴様」


 関西弁のようで全く違う、新たな方言を聞いて、ロディマスは思わずそう呟いた。

 前世で親が転勤族だった都合、前世のロディマスも滅茶苦茶な方言を扱うタチだったのである。無論、標準語も話せるが、気が緩むと酷いものだった。

 それが故に深い仲の友人が出来なかったのは、未だロディマスの中に残る苦い記憶であった。


 そんな関係で、思わず少女に共感してしまったロディマスは、少女の事を認めつつあった。


「なんじゃワレぇ!?」


「うむ。変に取り繕ったものよりも、今の方がよほどいいぞ。貴様が最初からそうやって話していれば、願いを叶えるのもやぶさかではなかったな」


「はぁ?なんや、これがえかったんか?ワテ、妙な話し方しとれーへんけ?」


 珍妙な言い方よりも、嘘を吐かない態度の方がよほどに好感が持てる。

 ロディマスは人として、商人としてそんな価値観で彼女をそう評価した。


「妙ではあるが、味がある。俺はその方がいい」


「せ、せやか。あんさん、変わってんな?」


「当然だ。俺は貴様よりも変わっているのだ。負けはせんぞ」


「本当にけったいなやっちゃの。しかも、そんなん言うたんは、あんさんで二人目やで」


「ほう、一人目は誰だ?」


「あっこんおる、ウチの未来の旦那や。さっきウチを止めに来たんがそうや」


「そうか。未来の旦那が相手ならば仕方がないな」


 そう言ってロディマスは、訓練用に置かれた丸太の前に立った。


「それで、俺の魔法を見せればいいのだな?」


「なんや?見せてくれるんか?」


「ああ、今の貴様になら見せてやろう。しっかりとその眼に、焼き付けろ!!」



 そう言ってロディマスは、魔力を右手の平に集中させた。



ここまでお読みいただきありがとうございます。

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