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万の軌跡と救世主  作者: gagaga
第一部 実家編
23/130

20

 公爵家ご婦人との対面も無事に済んだ翌日。

 ロディマス一行は朝早くから出立し、すでにベリスの家にいた。


 朝方を少し回り、人々が活発に動き始める、そんな時間。

 ベリスの家の食卓には、ベリス、ロディマス、ミーシャの他に、当事者であるエリスもいた。


 エリスは昨日のロディマスのゴツゴツとした予想を裏切り、とても華奢な女の子であった。

 しかし、茶色い伸びっぱなしの髪と不健康そうな顔色から、とても可愛いなどとは褒められぬ。

 それがロディマスの第一印象であった。

 とても辛らつな感想であったが、それを顔に出す事なくロディマスは挨拶もそこそこに、話を切り出した。


「これで揃ったな。では契約の内容を確認するぞ」


「あ、ああ」


 一同にお茶を出し終わるや否や、自己紹介もなく唐突に言い出したロディマスに釣られ、もしくはミーシャは空気を察したのか、二枚の契約書を取り出しロディマスに手渡した。

 その契約書を、今度はロディマスが一枚をベリスに向けて突き出して、もう一枚を自分の方に向けたままで読み始めた。


「これは同じ内容だ。後に、両方に著名してもらう。読むぞ。ベリスフィア=ポートマン、エリス=ポートマンは以下の契約を履行すると誓う」


・誓い1 エリスの治療に際して、その病名、治療法、並びに目にする光景、聞いたものの全てを他言しない。


・誓い2 エリスの病の完治・根治に関しては、その責任を治療者に負わせないものとする。


・誓い3 ベリスフィア並びにエリスは、今後ロディマス=アボートの従業員として契約するものとする。



 読んでいて、ベリスの本名がベリスフィアだと今初めて知ったロディマスは、それでも言いよどむ事無く言い切った己を褒めた。

 ライルに書類を作らせて正解だったとも褒めた。

 自分を褒めすぎであった。


「以上に対して、不服がなければサインをしろ」


「何か、急じゃないか?エリスを紹介してないんだが。それとそれって、誓えなきゃダメなんじゃないのか?」


 いきなり始まったマシンガントークに、ベリスもエリスも顔を見合わせて困惑している。

 そして、そのまま畳み込んでしまえると甘い考えを抱いていたロディマスは、無駄な抵抗をせず大人しく治療されろと心の中で憤慨した。

 心の焦りもあったのだろう。

 商談に関しては慎重なロディマスらしからぬほどの強引さで、契約を結ぼうとしていた。


 それと言うのも昨日、本当なら公爵家のご令嬢であるアリシアも参加するはずだった食事会だが、そのアリシアが体調を崩してこれなかったのである。

 大商会と公爵家と言う大きな家同士にも関わらず、とても軽い食事会、両家の顔合わせ程度なので立食方ではなく、ごく普通のテーブル食だったのに、である。


 そこで悪い考えがロディマスの頭を過ぎった。

 ただ座ってご飯を食べるだけでさえ耐えられないと言うのであれば、アリシアの症状はエリスを上回るほどの状況なのだろう。

 さすがにこの想像に、ロディマスは焦った。

 そしてその焦りが、今、最悪の形で出ていた。


 しかしそれでも元日本のおっさんリーマンの記憶を継ぐロディマスは、日本人的な感性で譲れなかったのか、丁寧な相互確認の作業を行なった。


「バカを言え。契約とは一方向のものではない。双方合意が必須条件だ。ただし内容を変える事は出来ん。乱暴な物言いになるが、そこは言い方を変えるだけだ」


 黙ってサインだけさせていれば丸く収まったのに、余計な真似をしたロディマスは、心底から悪役になりきれない半端者でもあった。

 そして当然のようにその裏を突くのような、ある意味では当然の疑問をベリスは投げた。

 そんな彼女にロディマスは身もフタもない言い方で返して、焦っている風なのに生真面目なロディマスの姿がおかしかったのか、ベリスは笑いながらも前日の話を反故にする事なくサインをした。


 ここまで来れば、今日ロディマスが多少失敗しても、流れは昨日の時点で決まっていたようなものである。この空気に、エリスも同意しサインするだろう。

 順調だとロディマスが一安心したその時、大問題が発生した。


「ねぇ、お姉ちゃん。これってどう言う事なの?」


 ベリスの隣では、昨日は寝込んでいて会えなかったエリスが首を傾げていた。

 エリスは年の頃12歳で、ロディマスよりも年上である。しかしずっと寝ていた為か、かなり華奢で小柄だった。

 そんなエリスに寄り添う形で座っているベリスは、何故か目を泳がせていた。

 ロディマスが、そんな挙動不審なベリスを睨んだ。


「貴様、まさか当事者に事情を説明していないのか?」


「そ、そんな、まさか、ねぇ?」


「ねぇって言われても、私何も聞いてないし、困るんだけど」


 慌てふためき、ロディマスとエリスを交互に見て震えるベリスと、本気で困った様子のエリスに、いつもいつも思い通りにいかないなと、ロディマスは頭を抱えた。

 するとその状況に割って入ったのは、まさかのミーシャであった。


「エリス様、よくお聞き下さい」


「な、なに?何なの?」


「私はアボート商会の一人の従者です。ですので、これはアボート商会からの言葉としてお聞き下さい」


「え、アボート商会?何それ」


 エリスがアボート商会すら知らないという事実を聞かされて、ロディマスは思わずベリスを見つめた。

 直接言われたミーシャは、固まっていた。

 そしてベリスは、エリスに抱きついて顔を隠していた。

 しかしベリスの2m近い巨体は小柄なエリスでは全く隠れておらず、むしろ熊が子供に襲い掛かっているかのような謎の存在感を醸し出していた。

 そんな怯える大熊ベリスに、エリスはヨシヨシと頭を撫でながらロディマスたちを睨んだ。


「ねぇ、お姉ちゃん。もしかして詐欺にでもあったの?それともこの人たち、借金取り?」


「ヒェ!?違うよエリス。そんな事は、ないよ?ないよね?」


「俺は詐欺師でも借金取りでもない。それと誰だ、貴様は。豹変しすぎだろう。本当にベリスか?」


 なんとなくそう言う一面もあるのだろうと思っていたベリスの行動だが、ことここに至っては完全に年頃の少女風である。

 見た目がゴリマッチョで肌が赤茶に焼けていなければ可憐な姿なのだろうが、とロディマスは心の中で付け加えた。


「お姉ちゃんは、見た目はこうだけど気弱なの。だからいじめないで」


「いじめてなどおりません。私は契約と、あなたの治療の為に来たのですから」


「そんなの信じられない」


 平行線である。

 怯えるベリスが説明しさえすれば解決するし、エリスが少しでも話を聞くようなら起こっていない問題。

 それにそもそも何故ミーシャが出しゃばってきたのかと見れば、ミーシャは目が吊り上り耳がピンと立っていた。


 怒っている。

 ミーシャが、怒っている。

 怖い。

 そんな感情を胸に仕舞いこみ、冷静になれと自分を叱咤する。

 そして何故こんな事態に陥ったのか、もう一度考える。



◇◇◇


 ベリスは、今回の件をエリスに全く説明していない。こいつが主犯で間違いがない。

 こいつが説明していれば円満解決だったのにと思うが、過ぎたものは仕方がない。



 次にエリスだが、ベリスの本性がコレであれば、気弱な姉を守る為に少しばかり気が強くなっているようだ。

 あとは世間知らずなのだろう。

 この国一番の商会の名前すら知らないとなれば、相当なものである。

 それに、今まで知らなかったが、アグリスはもしかすると元々他国の人間だったのかもしれない。姉妹が獣人であるミーシャを特に毛嫌いする様子がない事からも、恐らくはそうなのだろう。それ自体は都合がいい。


 そしてエリスだが、かなりの時間を寝て過ごしているので、外にも出ていないのは分かる。

 だから、人との円滑なコミュニケーションを形成する能力も低いと見ていいだろう。これは先ほどまでの会話を思い出せば明らかだ。

 彼女の性格の一つに『コミュ障』と付け加えよう。


 しかしそれも大半は姉に任せているとなれば仕方が無いのかもしれない。

 それに彼女も自分より年上とは言え12歳、まだまだ子供である。

 世間的には一応結婚できる年齢らしいが、この世界的には年齢よりも体格が重視されるので、そう言う面でもエリスはアウトだろう。

 そもそも前世日本人の感性を持つ己からすれば、小学生はまだまだ子供だと思ってしまうのも一つの理由だ。

 そんな彼女に強引に契約を迫る己は、正に心の奥底が訴えかけてくるように、鬼畜だがな。



 最後にミーシャだが、コレは自分が悪いのかもしれない。

 恐らくミーシャは今、調子に乗っている。

 獣人に偏見の無い傭兵たちにチヤホヤされ、また、自分も奴隷と言う立場を考慮せずに随分と甘やかしてしまっている。

 その結果、ミーシャは自分が子供である事も、奴隷である事も、そしてこの国では忌み嫌われる獣人である事も忘れてしまっている。

 ただただ研鑽を積むだけで人格を磨くのを忘れていた。そして、そんな日々を送らせていたことを後悔するが、同時に今この時点で気付けたのはまだマシだったな。まだ修正は効くだろう。



 そうとなると、結論はやはりベリスだな。

 こいつをどうにかして動かせば、まだなんとか丸く収まるやもしれん。



◇◇◇



 最終的に、やはりベリスが悪く、また、ベリスを動かせばなんとかなるとロディマスの中では結論が出たが、それでもベリスを糾弾してもこの場の解決には至らないのも分かっていた。

 そこでロディマスは、昨日のベリスとのやり取りを参考にして、同じようにエリスを説得しようと試みた。


「二人とも、黙れ」


「なんで!?私悪くないし!!」


「くっ、はい・・・」


 そうして一旦止まった二人の口喧嘩が再開しないように、二人に釘を刺した。


「ミーシャよ、でしゃばるな。貴様はあくまで俺の付き添いだ。余計な真似はするな、命令だ」


「は、はい。モウシワケゴザイマセン」


 きつい言い方で諌めれば不満タラタラとなったミーシャを、心の底では怯えつつも敢えて無視して、今度はエリスに向いた。


「エリスよ、俺の従者が失礼をしたな。そして先の件、突然の事で戸惑うのも無理はない。そこは謝罪をしよう」


「え?あ、うん・・・どっちも謝って貰うほどじゃないけど」


「ならいい。今後はこのようにならぬようにしよう」


「うん、そっちがそう言うのなら」


「そうか」


 そう言って、一先ず会話を打ち切る。

 そうする事で場の空気を入れ替えようと言う魂胆だったが、図らずとも逃げ腰だったベリスが本当に逃げていて、勝手に家の窓を開けていた。

 会話が外に漏れる危険性があるその迂闊なベリスの行動に注意をしようかと考えたロディマスだが、近くには民家が無い上に、ライル他数名が見張りとして立っていた事を思い出して口を閉ざした。


 すると窓の外を眺めて現実逃避をしていたであろうベリスが怪訝な表情になった。


「おい、あれ、あの爺さんなんであんなとこにいるんだ?」


 目ざとくライルの存在を見つけたベリスが、小声でロディマスに問いかけた。

 対してロディマスはごくごく普通に答えた。


「爺だからな」


「爺だからな!?いやちょっと待って、それで納得するのアンタだけじゃないか!?」


「そうでもない。ミーシャも頷いている」


「ええ、ライル様ですから」


「本当だ!?なんで?」


「ライルだからな」


「ああ、そう、そうなんだ。アンタんトコの執事って、変わってるんだな」


「そうだな」


「ついでにアンタらも変わってるな」


「そうだな」


 かなり投げやりな感じだったが、ベリスが自発的に動いてくれた結果、雰囲気は幾分か柔らかくなったとロディマスは感じた。

 恐らくこれは、対人関係にそこそこ敏感な元傭兵のベリスが気を利かせたのだろうと、ならその気遣いを先に妹に使えとただただ呆れた。

 呆れた上で、エリスに話しかける。


「まず、昨日ベリスとの間にあった話を貴様にもする。その上で、貴様は貴様で判断をしろ」


「う、うん」


「え?アタイは?」


「貴様は契約済みだ。こいつが受けようと受けまいと、俺の下で働くことになる」


「そ、そんな、なら治療は!?」


「そいつ次第だ。だから割り込んでくるな」


「う、あ、ああ。エリス、大丈夫だから、大丈夫だからな!!」


「大丈夫じゃないっぽいんだけど」


 先ほどからエリスが心配なのか、ベリスが何かと会話に割り込んでくるのがわずらわしい。

 そう考えたロディマスは、なんとなく思いついた一言を述べた。


「ベリス、お座りだ」


「あ、はい」


 思わずと言った感じで元の席に座るベリスに、最初からこう言えばよかったのかと思い、次いでロディマスはかえって違う問題が発生してしまったと頭を抱える。

 ロディマスはつい、お前はワンコか!と叫びだしそうになり、唇をかみ締めてその衝動を耐え切った。

 そして目を丸くしているエリスを、驚いている間に一気にたたみ掛けようと考えたロディマスがその隙を突いて攻勢に出た。



「エリスよ、よく聞け。貴様はあと5年ほどしか生きられない」


「・・・、え?」


 突然の死の宣告に、エリスがさらに驚き、固まった。

 そう言えば自分も神とやらに投げやりな宣告をされていたなと思い出して、それを振り払う。

 彼女にはこの先に希望が待っているのだ。ならば早々にそれを理解させてやるのが唯一の優しさだろうと、ロディマスは少しばかり己の姿を投影してしまったエリスに、心持ち優しく本命の話を伝える。


「俺は、貴様の煩っている病の、その治療法を知っている」


「え、ええ!?」


「ついでに、やろうと思えば出来る段階にまでこぎつけたのだ」


 ここまで言えば、強気なエリスも今度は声にならなかったのか、両手で口を隠して大層驚いていた。

 その姿を見て、エリスが落ち着き聞く体勢が整うのを待った後に、ロディマスは説明を続けた。


「ただし、あくまで治験。・・・、臨床実験。いやもっと簡単に言えば治療試験。・・・、まだ誰にも試していないからどのようなな副作用があり、それ一度で完治するかどうか等が分かっていない治療法を、貴様に施す予定だ」


 最初の治験で首を捻ったエリスの為に、徐々に言葉を分かりやすいものに変えていこうとしたロディマスは、前世の記憶の情報を今世で使うのも一苦労だと、結局はうまく伝えられなった己の語彙力の低さを呪った。


「まぁ、そのような所だ」


 結局、曖昧な言葉でごまかした。

 するとそれを聞いていたエリスが、顎に手を当てて考えるポーズを取ってから、静かに口を開いた。


「その、えーと、チケン?治療法ってものは、死んじゃうほど危ないの?」


「多少痛いくらいだ。死にはしないし、死なせない」


「そ、そう」


 ロディマスは治療法を思い出し、痛みもほとんどないが万が一を考えて少しだけ悪い方向を想定して答えた。

 しかし不安を煽るような物言いだっただけに、エリスは慎重に考えているようであった。


 こうやって考えているだけマシかと、全てを投げ捨てて場の状況に流されたまま遠くを見ているベリスを見て、姉妹と言えども見た目も中身も全く似ていないなと、ロディマスは思ってしまった。


 そうして待つことしばし、エリスが意を決したような表情を作っていた。


「ねぇ、他に何か話せないの?ほら、その、支払わなくちゃいけないものとか?」


「そうだな。一つは書面にも有るとおり、貴様らを雇い入れる」


「私たちを?ベリスお姉ちゃんならともかく、私は働けないと思うんだけど」


「貴様も必要だ」


「え?何だろう、深い意味はないって分かってるんだけど、そう言う言い方は照れるよ」


「姉妹揃って貴様らは・・・」


 ベリスも大概だったが、エリスは男慣れどころか人慣れすらしていないからか、随分とウブな反応を示している。そしてこの姉妹は揃ってチョロすぎると、ロディマスは今後の事を思い頭が痛くなった。


 彼女たちにしてもらいたい仕事とは、工場での新しい工房、パン工房の運営である。

 簡単に言えば例の新作パンをそこで生産すると言うもので、その人手として弱みを握れる彼女たちが秘密の厳守と言う意味でも最適だと言うのが、ロディマスの考えである。


 問題は山積みであるが、それでも一つ一つのパーツを少しずつ揃えて行く。そうすればチリが積もって己の破滅ルートを回避できる。

 ロディマスはそう信じて、その一手であるアグリス兄妹の件に手を出したのである。


「それで、他にはないの?何かあるよね?だって、私ってほとんど家にいたから有名ってほどじゃないし。そんな私に声をかけてきたって、何か、あるよね?」


「そうだな、貴様は元々あの傭兵、アグリスの妹だから接触しているだけにすぎん」


「ムッ!!」


 そう言うや、頬を膨らませて不機嫌になるエリス。

 しかしその理由が分からぬロディマスは、気にしない事にした。

 エリスは花も恥らう12歳である。

 コロコロと気分が変わるのも仕方が無いのかと、同じ12歳であるアリシアを思い浮かべてため息を吐いた。

 この世界の12歳は気が強すぎるな。

 そんな一方的な暴論を脳内で展開したまま、ロディマスは先ほどのエリスの質問に答えるのだった。



「マッドワンコ、アグリスを飼い慣らす為だ」


「マッドワンコ!?」


「アグリスをうちの工場の警備兵として格安で雇う。それが俺が求める治療の報酬の一つだ」


「今、ワンコって言わなかった!?」


「それ以外にもあるが、大きなものはこれだ。そうだな?ベリスよ」


「ワンコって言ったよね!?」


「あ、ああ。兄貴には既に話が行ってるから、そこはもう大丈夫だと思う。今頃はこっちに向かってるよ」


「そうか、ならいい」


「ワンコって、ワンコって!!」


「・・・、言っていない」


「いや、絶対言ったよね?」


「・・・・・・、言ってない。貴様の聞き間違いだ」


 頑なに無視し、あるいは否定するロディマスと、話に割り込んでまで追及をやめないエリス。

 例の誤変換がまさかこのような大切な場面で発生するとは、さすがのロディマスも思っていなかった。ゆえに、咄嗟に良い言い訳が出てこなくて、最終的には沈黙する事でごまかすしかなかった。


 それで丸く収まったと、そのつもりであった。


「聞き間違いじゃないよ、絶対に言ったね。ねぇベリスお姉ちゃん」


「あ、ああ、そうだな。なんだいエリス?」


「ロディマス君って、いいとこのお坊ちゃんなの?」


 意外にしつこいエリスに、今度はベリスがそう質問され、意外だった質問内容に思わず首を捻っていたベリスは、ポンと手を打ってエリスに答えた。


「そう、そうだね。そりゃアボート商会の御曹司なんだから、いいとこの坊ちゃんさ。今まで気が付かなかったけど、従者の嬢ちゃんに執事まで専属で居るんだ。そりゃお坊ちゃんだよな」


「そのアボート商会の規模って、どんなのなの?」


「この国一番、だったかな」


「街一番じゃなくて国一番!?なんでそんなすごいトコのお坊ちゃんがこんなとこにいるの!?」


「結局そこに戻るのか・・・、と言うか、ソレを俺が来る前にやっていればこうはなっていないはずだろうが・・・このうんこちゃん共め」


 心底呆れたと目を右手で覆い低く呟くロディマスは、先ほどからこの姉妹に振り回されていると、いつも通り思うように行かない自分の予定を思い起こして歯噛みした。


 しかし気落ちしていても事態は進展しない。

 そう腹をくくり、再度エリスに確認を取った。


「それで、納得したのか?」


「うん!!そうだね。聞きたい事もあるけど、大体は分かったよ。あ、でも私からも一つ、いいかな?」


「聞くだけなら聞いてやる」


「うん!!なら、今度から君をロディ君って呼んでもいい?」


「はぁ?」


「うん、よし決定!よろしくね、ロディ君!!」


「はぁぁぁ!?」


 身を乗り出して強引に握手をしたエリスは、それでもう十分と言う調子で、テーブルの端に追いやられていた書類にサインをした。


「わぁ。いざ自分が治るって思ったら不思議。何しようかなー」


 振り回され呆然とするロディマスをよそに、エリスは終始マイペースを貫いた。


「もうやだ12歳、関わりたくない」


 両手で顔を覆ったまま放たれた、そんなロディマスらしからぬ呟きは、神以外の誰の耳にも届かなかったのであった。


1話遅れで新ヒロイン登場です(゜q゜

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