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それでも俺は異世界転生を繰り返す  作者: 絢野悠
〈actuality point4〉 Second Name
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十五話

 会場の中央へと歩いていくと、相手もまた同じように歩いてきた。小柄な女性。身長はメリルと同じか、やや小さめ。腕も足も細く華奢であった。


 係員に促されて足を止めた。


『それでは第十三試合! よーい……始め!』


 会場が沸く。眼の前のルージュが重心を下げた。


 来る。そう思った瞬間には、目の前にいた。


「はやっ……!」


 慌てて両腕を上げるが、予想とは違う場所に衝撃があった。


 目線を合わせて突っ込んでくるから、上半身に対しての攻撃だと勘違いした。でもルージュの狙いは右足だった。まずは移動力を削ぐというのが最初の一手。


 右足の腿が痺れるように痛かった。筋肉痛にも近い痛み。これさえなければ彼女の動きにもついていかれただろうが出鼻をくじかれた。


 彼女が距離をとる。が、即座にまた接近してきた。


 ここからだ。得意な間合いで勝負を仕掛け、一気に畳み掛けてくるはずだ。


 弧を描き、右の拳が俺の腹部を狙う。鋭く、それでいて力強い。


 目を逸らさず、彼女の動きをずっと見続けた。左の脇腹に攻撃を受けても、目を閉じるなと自分に言い聞かせる。


 続いて右足、左足での連続蹴り。これは両手でさばくことができた。


 まだ反撃はしない。


 攻撃は最大の防御という言葉はあるが、攻撃が最大の隙であることも間違いではない。確実に一発お見舞いできる場所を探すんだ。


 何発かガードが間に合わなかったけど耐えることはできた。やはり攻撃力はそこまででもない。それと華奢であるから、防御力もそこまで高くない。


 もう一度、彼女が距離を取った。


「なぜ、攻撃してこないんだ?」


 ルージュが小さく言った。


「俺には俺のやり方があるんでな」

「そうか。それならこのまま、一気にケリをつけさせてもらおう」


 彼女がサイドステップで移動を始めた。接近してきたときよりも早く、目で追うのが精一杯だった。


 その移動方向は、俺の死角ではない左側。俺の試合を見ていたのか、それとも死角を狙う必要がないと踏んだのか、そこまではわからなかった。


「でも少しずつ見えてきたぞ」


 彼女の体が一層低くなった。


「そうくるかよ」


 直感で足払いだと読み、小さくジャンプした。


 逆にそれすらも読まれていたのだろう。ジャンピングアッパーのように、上に向けての強打。空中では行動が制限される。そんなことは俺だってわかっている。


 蹴り上げて、彼女の拳を打ち上げる。


 着地と同時に拳を構えると、相手も同じような体勢に入っていた。


 お互いに突撃の体勢。重心はより低く、脚力を利用して相手の懐に飛び込もうという姿勢だった。


 ルージュは俺よりも若干レベルが高い。戦闘の経験も俺よりある。なによりも俺と同じくインファイター型。この状況で、前に出ない理由がない。


 だから、彼女の突進に合わせて腕を伸ばす。


「弾けろ、炎よ」


 ここで爆風。彼女はその爆風を避けようとするが、避けた先でさらに爆風を起こす。


 小さく軽い彼女の体が宙を舞った。しかし、華麗に着地した。即座に駆け寄ってくるあたり、良い根性してると関心してしまう。


 俺は爆発を直接当てたわけではないので攻撃にはなっていない。今のはただの威嚇であり、ルージュの動きを抑制するためだけのものだ。


「次は当てるぞ」

「やれるものなら」


 彼女が少しだけ浮いた。そして、飛翔するように突進してきた。


「風属性か……!」


 俺が魔法を使ったのを見て相手も使ってきた。そういうことだろう。


 こうなると必然的に防戦一方になる。相手は空中にいても行動に制限がなくなる。ほぼ飛行しているんだから当たり前か。


 捕まえようとしても上手くいかない。攻撃の手段が増えたことで防御もままならなくなってしまった。魔法を使ったのは悪手だったか。


 勝ち目がないか、と言われるとそういうわけではない。俺の目が彼女の速度に慣れてきているのと、彼女の魔法の特性を把握しつつあるからだ。


 例えば真空波を飛ばされるだとか、風で体を拘束されるだとか、そういうことをされると太刀打ちできなかっただろう。でも彼女は「自分の体をコントロールするため」だけに魔法を使っている。それならば攻撃の種類が若干増えただけ、と考えれば気持ちは楽になる。


 なにより、ルージュがインファイターであることがかなり有利に働いた。


 彼女の攻撃に対してやや下がり、拳の側部から爆風を起こす。傾いた体を、彼女は自分の魔法で立て直そうとする。それを誤魔化すために、今後は蹴り技で応戦しようとする。


「ここだ!」


 この場合、蹴り技に威力はほとんどない。当たれば当然痛いのだが、勝負を決めるだけの威力はないのだ。


 この攻撃は誤魔化しであり、体勢を立て直すための一手だからだ。


 蹴りを右腹部で受ける。見た感じだとクリーンヒットかもしれないが、俺はそれに対して準備をしている。痛いけど、前に突き進む。


 右手を伸ばし、ルージュの腹に触れた。


「吹き飛べ!」


 思い切り、爆炎をぶちかました。


 そう、準備していたのだ。即興で考えて撃ったわけじゃない。だから威力だってかなり強めだ。


 煙に巻かれながら、小さな体が吹っ飛んでいく。


 地面に体を擦り付け、けれどなんとかこらえたのか、反動を利用して両の足で踏ん張った。


 すかさず追いかける。


 逃げるだろうと思われる方向に爆風。これで逃げ道は塞いだ。逃げることはできたとしても、爆風がある方向だと速度が落ちる。彼女の戦い方はスピードが命。ならば、速度が落ちるのを嫌うはずだ。


 爆風を利用して急接近。ルージュを追い払う時に爆風を利用して、移動にも使えるんじゃないかと考えたがそれが正解だったらしい。


 彼女が初めて防御の体勢を取った。それが負けに繋がる行動だと、きっと彼女も気付いているんだろう。だから彼女は常に攻め続ける戦い方をしてきたんだから。


 右ストレートを寸止め。同時に差し出した左手で爆風。体勢が崩れたところでタックル。浮いたところで、寸止めしていた右手を開いて爆撃。


 全身を地面に打ち付けながら、彼女は転がっていった。そして、彼女が立つことはなかった。


『勝者! イツキ選手ー!』


 こんな根比べみたいな戦い方、今まで一度もしたことがなかった。でもメリルと戦っていたことで早い攻撃には慣れていた。ルージュがインファイターで本当によかったと思う。


 仰向けで浅く息をしていたルージュに歩み寄った。


「なに?」

「いや、悪かったなと思って」

「馬鹿にしてるの?」

「女の子にこういうことするの初めてなんだよ」


 手を差し出すと、彼女が俺の手をまじまじと見ていた。


「情けはいらないわよ」

「いい勝負だったじゃねーか。情けじゃねーよ。ほれ」


 彼女はため息をつき、俺の手を取った。


「歩けるか?」

「問題、ないわよ」


 そう言いながらもよろけている。


「仕方ないか、我慢しろよ」


 そう言いながら、彼女の体を抱きかかえた。


「お前! やめろ! 恥ずかしいだろ!」

「更衣室まで運ぶから大人しくしてろって」


 暴れる彼女を押さえ込みながら、俺はそのまま会場を後にした。


 今日はこれで終わりだし問題はないだろう。


 会場を出て彼女を下ろすと、顔を真っ赤にしながらそそくさとどこかに行ってしまった。元気、あるんじゃねーか。


「イツキ?」

「おお、フレ…イア?」


 鬼の形相で立ちふさがるフレイア。その隣には眼光で人を殺しそうなメリル。なんだ、なにがあったんだ。いや、俺はなにをしたんだ。


「話があるから、これから付き合ってね」

「いやー、俺疲れてるから帰って休みたいんだけど……」

「付き合ってね?」

「は、はーい……」


 その後、会場の更衣室でフレイアとメリルにめちゃくちゃ怒られた。


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