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それでも俺は異世界転生を繰り返す  作者: 絢野悠
〈actuality point4〉 Second Name
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十二話

 目を開けると、涙目のメリルの顔が飛び込んできた。


「イツキさん! よかった……」


 顔面の右側の痛みよりも、失敗したという気持ちの方が強かった。


 そう、俺は「殺してもらうこと」に失敗したのだ。


 無理矢理体を起こし、ベッドに座り込んだ。


「まだ体を動かしては……」

「大丈夫、大丈夫だから」


 なんとか口は動く、依然情報は左側からしか入ってこないが、会話もできるし意識もはっきりとしている。


「なにがあったんですか? なにを、していたんですか?」

「だからそれはさっき言ったじゃない。イツキの魔法に対する抵抗力を試そうとしただけなのよ。ちょっと、失敗しちゃっただけなの」


 フレイアの声が徐々に小さくなっていく。暗く沈んだその顔は、俺やメリルではなく、ただただ床を見続けていた。


「フレイアの言う通りだ。今の俺ならこれくらいは耐えられるだろうなって、お願いしたんだ」

「本当、なんですか?」

「ああ、本当だ。だから心配しなくていい。それより、悪いんだけどノドが乾いたから水でも持ってきてもらえるか?」

「え、ええ、わかりました」


 ドアの向こうへと消えるまで、メリルの顔から疑念が張り付いたままだった。


「失敗、したんだな」

「ごめんなさい」

「いやいい。違う、よくないけど、仕方がない」


 シーツを握りしめ、そう言った。


 今すぐに大声を上げて暴れまわりたい気分だ。でも、フレイアに頼んだのは俺だ。自分じゃなにもできないくせに、全部他人のせいになんてできやしない。


 そうやって考えると、思った以上に冷静なことに気がついた。そうだ、まだ終わってない。これで終わりじゃないんだ。


「俺の右目は?」

「しばらくは使い物にならないと思う。治療すれば治る。魔法が掠っただけだから。耳も口も焼けただれてるし鼓膜も破れてるけどそれも元には戻る。ただ、時間が必要」

「大会は明日からだ。日程はどうなってたっけな」


 コロシアムを出るときに渡された紙を探す。が、見つからない。


「これ?」と、フレイアが紙を渡してくれた。「ありがとう」と言って、その紙を受け取った。

 残ったのは二十四人。明日で二十四人から六人に減り、明後日で六人から二人まで減る。最終日に決勝戦という日程だ。六人から三人になったあと、残った三人でクジを引いてシードを決めるようだ。

「その日程はいつもと変わらない。だからそれまでに治せば、なんとかなるかもしれない」

「そもそも決勝戦に出られるかどうかも怪しくなってきたけどな。相手は俺よりもレベルが高いだろうし、一度でも負ければ双葉が死ぬ」

「……ごめんなさい」


 二人の間に沈黙が降り立った。数秒、数十秒が数分、数時間にも感じられた。唇を噛み、指を何度も組み直すフレイア。その姿を見て、ついに沈黙に耐えきれなくなった。


「俺こそごめん。でも、もう一度だけ頼みたいことがある」

「ルイに負けたあとのこと?」

「そうだ。なんとかして双葉を持ち込んで、俺と一緒に殺して欲しい。と言っても俺が負けた時点で双葉は殺されるだろうから、ルイが俺を殺すのと同時にって感じにはなるけど。双葉に触っていないと、一緒に帰れない」


 フレイアが俺の方を見た。その瞳は潤んでいて、けれど光は失われていなかった。


「わかった。約束する。私の最大級の技で、アナタを殺すわ」

「そうしてくれ」


 彼女なら任せられる。盲目的かもしれないが、俺と彼女には絆がある。だから、大丈夫だ。


 そこでメディアが帰ってきた。すぐに診察と治療をしてもらう。と言っても医者ではないので本格的な診察はできない。今の状態から回復するのにどれくらいかかるとか、そういった感じの簡単な診察だ。


「決勝戦に間に合うかは正直微妙な線ね。治療系の法術を使える者がつきっきりで治療してもどうかわからない。見込みはあるけれど、私たちだって治療にだけ全力を注げるわけじゃない。デミウルゴスの件もあるし、魔力が底を尽きればしばらく治療もできなくなる。だから、難しい」


 言いたいことはよくわかる。ただ俺としては全力で治療して欲しいし、今すぐにでも助けたいのだ。


 頭を抱えそうになるのを堪えて、小さく頷いた。


「わかった。よろしく頼む」

「じゃあ早速治療魔法をかけましょう。アナタはそのまま眠っていいわ。かなり眠いでしょう?」

「すぐにでも眠りそうだ」

「寝ている最中にヒーリングをかけてあげる。明日には鼓膜くらいは治っているでしょう。目の方が深刻だから重点的にはやるつもりだけど」

「メディアが言うなら安心だ」


 横になると、すぐにメディアがヒーリングを掛け始めてくれた。温かく、頭の真ん中からなにかが引っ張られるような感覚だった。けれど嫌な感じはしない。むしろ心地良いような、そんな気分だった。


 すぐに眠気がやってきて、心地よい浮遊感と共に意識を置き去りにする。明日の対戦相手はギート=ジョーンズ。レベル78の大柄な男だったと記憶している。


 そんな記憶と共に、俺は眠りについた。


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