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それでも俺は異世界転生を繰り返す  作者: 絢野悠
〈expiry point3〉 Who's Guardian
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十一話

 朝起きてもフレイアは帰って来なかった。


 さすがになにかあったのでは、と考えざるを得ない。


 ライセンスからメッセージを送ってみることにした。同時に、スマフォで双葉に「具合が悪い。休むからあとよろしく」とだけメールをした。


 俺の予感が正しければ、学校に行く前に双葉と優帆が部屋に来るはずだ。なにをするにしても、まずはそれをやり過ごす必要がある。


 布団の中に入って横になる。階段を下りる二つの足音。その十分後、二つの足音が階段を上がってくる。ノックが二回。


「はいよ」と俺が応えると、ゆっくりとドアが開いた。

「一葵、大丈夫?」


 心配そうな顔をした優帆が顔を出した。


「ああ、とんでもなく具合悪いってわけじゃないし、一日休めば大丈夫だ。たぶん風邪だと思うし、あんまり近づかない方がいいぞ」

「帰りになにか買ってくるからゆっくり休んでよ」

「心配かけて悪いな」


 いや、本当は嘘をついてすまない、という気持ちの方が大きい。


「うん、ちゃんと休んで、明日また学校行こうね」


 パアッと明るい笑顔になって、優帆が階段を降りていった。


「お兄ちゃん、フレイアさんどうかしたの?」

「帰って来なかった。連絡も取れない」

「探しに行くんだね」

「そうするしかねーだろ。マスクもするし、サボったのがバレないようにだけしとく」

「うん、わかった。くれぐれも無茶はしないようにね」

「おう、優帆のことよろしくな」

「じゃあ行ってきます」

「いってらっしゃい」


 双葉もまた階段を下っていった。


 玄関のドアが閉まった音を聞いてから私服に着替えた。マスクをして、少しだけ厚着をした。こうすれば体格も少しだけごまかせるだろう。


「それにしてもアイツら、登校の準備早すぎないか……?」


 そういえば優帆の化粧がかなり薄かった気がする。双葉は元々すっぴんだけど。それでも二人共可愛い部類に入る。実はかなり美人に囲まれて生きているのでは。


 そんなどうでもいいことは置いといて、ライセンスとスマフォと家の鍵をポケットに入れた。


 リビングに行くと朝食が用意されていた。トーストとスクランブルエッグ、ウインナー二本にヨーグルトだった。飲み物はカフェオレだ。ちなみに俺はブラックコーヒーは飲めない。苦いから。


 それらを胃に押し込んでから家を出た。そこでもう一度ライセンスで連絡を入れてみた。すると、すぐに返事がきた。


「お腹減った……っておい、心配させといてそれかよ……」


 メッセージにはフレイアの現在位置情報が添付されていた。その情報を頼りにして、俺は駆け足で目的地へと向かった。


「あ、来た来た。おーい、こっちだよー」


 公園のベンチから立ち上がり、フレイアが手を振ってきた。


「こっちだよじゃねーだろ、一晩中どこにいたんだよ」

「ホントにごめん。調査が長引いちゃってさ」

「さすがに長引きすぎだろ」

「ホントは六時くらいには終わってたんだけどさ、あの時間に帰ったら起きちゃうかなって」

「そういうのはいらないから、頼むからちゃんと帰ってきてくれ。心配なんだよ。眠れなくなるほどじゃないけど」

「ちょっと、最後のやついらないでしょ。普通は眠れないほど心配だとか、食事も喉を通らないとかあるじゃないの」

「それでも心配は心配なの。とにかく、次からはちゃんと連絡するように。この前フレイアが言ったことだろ?」

「優帆ちゃんのことで頭がいっぱいかなーと思ってさ」

「一理あるけどそれとこれは別。次からは頼むぜ?」

「りょうかいしましたよーっと。それじゃあご飯食べに行こうか。駅前にあるレストラン行ってみたいなー」

「ここから駅って歩いて二十分くらいかかるじゃねーかよ……」

「まあまあ、こういうのもデートだと思ってさ」

 と、俺の腕を抱き込むフレイア。何度もされているというのに慣れない。顔も近いし妙にいい匂いがする。一日風呂に入ってないんじゃないのかよ。女の子というか、コイツの生体は神秘に満ちている。

「お前と出かける時ってだいたいデートだと思うんだけど」

「私とのデート、イヤなの?」

「イヤじゃ、ないけど」


 上目遣いで見るんじゃない。心臓がどうにかしてしまいそうだ。


「なら決まり! 調査の結果とかは家に帰ってから話すからさ、それまでは男女のデートってことで」

「飯食いにいくだけじゃねーかよ」

「それでもデートはデートよ。傍目から見れば立派なカップルじゃない」

「それ以上言うんじゃない」

「なんで?」

「……しいから」

「ん? なんて?」

「ニヤニヤしてんじゃねーよ! 恥ずかしいからっつってんだよ!」

「かわいーんだー!」

「ほっぺを突くんじゃない!」


 とか口では言うが、内心相当嬉しいと思っている。当然だ。こんな可愛い娘にこんなことされて、嬉しくない男なんかいないだろう。


 結局駅前まで腕を抱かれたままだった。少々歩き辛かったが、そんなことがどうでもよくなるくらいに柔らかかった。そう、柔らかかったのだ。男は皆柔らかい物が好きなのだ。


 レストランでは「どれだけ食うんだよ」と言いたくなるくらいに、フレイアはたくさんの料理を頼んでいた。飲み物は水だけだったが、ドルチェまで頼むというのはさすがであった。


 家に戻って、フレイアは風呂へと直行した。玄関から上着を脱ぎだすものだから目のやり場に困ってしまった。


 彼女が風呂に入っている間にコーヒーを淹れた。部屋に運んで待っていると、フレイアがバスタオルで髪を拭きながら入ってきた。同じシャンプーを使っているというのに、髪が長い女の子が使うとここまで破壊力があるのか。


 バスタオルを肩にかけたフレイアが対面に座る。テーブルの上にライセンスを置き、神妙な顔つきになった。


「それでは結果を報告します」


 やや間があって、咳払いを一つ。


「昨日私が追ったのは二人。製薬三課課長のイシグロ、男。検査部部長のサルワタリ、女。魔法で五感を強化して、二人が呼ばれているのを聞いたから間違いないとは思う」

「二人も追ったのか。っていうか同時にそんなことできないだろ」

「あー、それがね、イシグロは日勤だけどサルワタリは夜勤だったの。だから帰れなかったんだけど」

「夜勤組か、それならまあ仕方ないか。で、結果は?」

「二人共黒。特にサルワタリの方はいろんなことを知ってると思う。イシグロは上から言われて行動してるって感じだったけどね」

「イシグロは命令されて薬の製造をさせられてるんだろう。サルワタリの方はどんな感じだ?」

「頻繁に誰かと電話してた。地下がどうとかって言ってたかな」

「あの大きな工場の地下、か。大手製薬会社だけあって警備も厳重。どうやって入るかな」

「しばらくはサルワタリを張ることにする。だから夜は帰れないかな」

「あんまり無理すんなよ。今日はもう疲れたろ、ゆっくり寝ろよ」

「うん、ありがと。そうさせてもらうよ」


 あくびを一つ。のそのそと地面を這ってベッドに潜り込んでいった。


「髪の毛いいのか?」

「起きてからー」

「ボサボサになっても知らんぞ」

「そしたらお願いー」


 それだけ言って、すぐに寝息が聞こえてきた。お願いってなにをだ。俺に髪をとかせというのか。


「うむ、悪くない」


 ってバカか俺は。


 フレイアに近づいて寝顔を見た。幸せそうな笑顔で眠る彼女は、いつもの頼りになる彼女ではなかった。こういう顔をずっとしてくれればいいが、今はそうもいかないだろう。ミカド製薬とは早めに決着をつけたいものだ。

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