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それでも俺は異世界転生を繰り返す  作者: 絢野悠
〈expiry point3〉 Who's Guardian
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七話

 リビングに行くとフレイアがテレビを見ていた。膝を抱えてソファーに座っている。こういう姿もギャップがあって可愛いな。


 双葉はまだキッチンで料理中か。いい匂いがする。


「もうちょっと待っててね、すぐできるから」

「うーい」


 そう言って、フレイアの隣に腰を下ろした。


「そっちはどうだった?」


 テレビに視線を向けたまま、フレイアにそう問いかけた。


「銃を持っていたヤツは死んだ。でも殺したのは私じゃない」

「銃を持ってたヤツの仲間か」

「うん、たぶん。銃弾で撃ち抜かれたんだけど、撃った人はすぐにいなくなっちゃった。追いかけようとしたけど見失って……」

「手がかりも特になし、と」

「そうね。町内の散策とかもしたんだけどさ、それっぽい人も全然いないし。でも私から逃げられるってことは、そういう意味なんだけどな……」

「確かに。今の俺ですら普通の人よりも身体能力が高い。そんな俺たちから逃げられるってことは、俺たちと同じく冒険者かもしくは――」

「あの薬によって身体強化をして、なおかつ人間としての体を保っている」


 二人の間に沈黙が降り立った。


 考えているんだ。俺も、フレイアも。


 この世界に冒険者がいるというのは脅威だ。特に敵側にいるとなると、一般人が何人死ぬかわからない。


 薬を打って身体強化しているとなれば、そっちはそっちで厄介だ。こちらも一般人の手には余る。あの化物たちの能力そのまま人間の姿を保っているのだから。


「でも先手を打ててよかったわ」

「これからは、こっちから打って出ることも必要になるかもしれないな。できればちゃんとした形で、決着をつけるために」

「今すぐ、っていうわけにはいかないかな。様子見は必要だし。でも、やっぱり死ぬのはイヤね」

「俺もできれば死にたくないな。お前や双葉が死ぬ姿も、見たくないよ」

「私も。だから、これからは二人が学校に行ってる間に見回りをするわ」

「大丈夫か?」

「大丈夫大丈夫、見つからないって」

「いやそうじゃなくて、お前の身体がさ」

「問題ないよ。死ぬよりましでしょ?」

「確かに、そうなんだけどさ」


 そうなんだけど、心配なことに変わりはないんだよなぁ……。


 フレイアが足を伸ばし、腕を高く上げて身体を伸ばした。


「まあ、被害がなくてよかった。と思うしかないかな」


 本当に「良かった」って顔をするもんだから、こっちもなんだか嬉しくなった。


「そうだな。お前が無事でよかったよ」

「いや、そういう意味じゃなくて……」


 思わずフレイアの顔を見た。フレイアも俺の顔を見ていた。


 少しずつ上昇していく体温と、少しずつ赤くなっていくフレイアの顔。それがまた気恥ずかしくて、俺たちは同時に顔を背けた。


 それから、顔を背けたままテレビの音声だけを楽しむ形になってしまった。いや、まったくテレビの内容は頭に入って来ないんだが。


 赤くなったフレイアの顔を思い出す。その度に、こちらが恥ずかしくなってしまう。


 悔しがった顔、笑った顔、怒った顔。その全てが思い出されて、さらに恥ずかしさが増していく。


 だが、俺はまだ彼女の泣き顔を見たことがない。彼女が強いのか、それとも泣くほどの出来事がなかったのか。


 何度も死んでいるのに泣くほどの出来事がない、というのもまた不思議な話だが。


「できたよー、手伝ってー」


 キッチンから双葉の声がした。これは間違いなく天の声だ。


 急いでフレイアの元を離れてキッチンへ。皿を持ってダイニングへ、キッチンに戻って、皿を持ってダイニングへ。結局、食事の九割を俺が運んでしまった。実際早く夕飯を食べたかったのは事実だが。


「「「いただきまーす」」」


 手を合わせて、全員同時に箸を持った。


 学校帰りの話通り、双葉はコロッケを作ってくれた。


 一人三つずつ、ちょっと小ぶり。でも中身は一つ一つ違う。妙に手が込んでいて、それでいて美味しい。


 一つはカレー、一つはじゃがいも、一つは海老クリーム。うん、どれも美味しい。


 噛めばサクッと、中はホクホク、濃すぎず薄すぎず適度な味付け。最高だ。


「クリームコロッケは味わって食べてね? 作るの難しいんだから」

「そうなのか? コロッケって全部一緒なんじゃ?」

「上手くやらないと、揚げてる最中にホワイトソースが爆発しちゃうんだよ」

「いろいろ頑張ってくれてるんだな……ありがとうな、愛してるよ」

「愛してるだなんて大げさだなぁ」

「俺の胃は双葉に掴まれてるからな。愛してると言っても過言ではない」

「美味しい……」


 と、フレイアがぼそっと呟いた。割り込んできたわけではないのかもしれないが、会話の切れ目に言うものだから呟きが強調されてしまった。


「双葉、ホントに料理上手ね」

「コツさえ掴めば簡単ですよ。調味料とかも計ってやってるわけじゃないから」

「目分量なの?!」

「全部目分量ですよ。そうじゃないとすごく時間がかかるので」

「でもそれだと毎回味違うんじゃないの?!」

「正確に同じ味は出せないけど、大体は同じになりますよ。これも慣れのたまものです。というか、前回作った料理の味とかも、食べた側が完璧に覚えてるわけじゃないので」

「そういう、ものなのね……」

「今度一緒に作りますか?」

「ホント?! いいの?! 私料理めちゃくちゃ下手だけど?!」

「任せて下さい、これでも教えるのは得意ですから」


 そう言いながら腕まくりをする双葉。


「おお、師匠……」


 そう言いながら目を輝かせるフレイア。


 なんだこの空間は。と思いながらも箸をすすめる俺だった。


 食事の後、洗い物は俺が担当した。双葉は洗濯機を回しながら洗濯物を畳んでいる。


「私もなんかやること……」


 ダイニングからフレイアがこちらを覗き込んできた。


「隠れてないで出てきなさい。俺が洗った食器を拭いてくれ」

「お、それくらいなら私にもできる!」


 駆け寄ってきて俺の横に並んだ。そして、ふきんで食器を拭き始めた。


「拭いたのは食器棚ね。同じお皿の上に乗せてくれればいいから」

「がってん」

「いつの時代の人だよ」


 こんなくだらないやりとりをしながら洗い物を済ませ、コーヒーを淹れてリビングへ。


「ほれ」とコーヒーをテーブルに置く。当然三人分だ。


「ありがと、お兄ちゃん」と、双葉が微笑んだ。


 守りたい、この笑顔。


 双葉もちょうど洗濯物を畳み終わったようだ。二人分だとそんなに時間もかからないのだろう。

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