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それでも俺は異世界転生を繰り返す  作者: 絢野悠
〈actuality point 3〉 Kindness Piece
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十四話

 モンスターとは戦わなくてもよくなった。しかし下がっていく気温と慣れない山道が体力を奪っていく。俺も、双葉も息が上がっていた。メリルだけ、なんともなさそうに歩いていた。元々ギルドに所属してたって言ってたし、その時に鍛えられたのか。


 ただ歩いているだけなのにこんなにも疲れるのか。もう二時間以上歩いている。降雪量も増えてきた。


「そろそろ頂上ですよ」


 先頭のメリルが首だけをこちらに向けてきた。


「結構、かかったな」

「疲れてますね。ティアマトと戦う前に少し休みますか?」

「ティアマトって強いか? お前は自信ある?」

「私は大丈夫だと思います。ちょっと時間はかかりそうですが倒せるでしょう」

「それならいい。俺はできるだけ早くティアマトを倒して血を持って帰りたいとこなんでな」

「わかりました。そのまま進みましょう」


 そして、頂上へと足を踏み入れた。


 拓けた空間。荒れた地面。その中央にはドラゴンが眠っていた。翼を降ろし、身体を丸めていた。


「よし、行くぞ」

「はい」とメリルが。

「ええ」とメディアが言った。

「大丈夫かよ双葉……」

「うん、大丈夫。後ろは任せて」


 まだ少し息は切れているが、たぶん大丈夫だろう。


 俺が走り出すと、後ろから三つの足跡がついてきた。


 ティアマトがこちらに気が付いて身体を起こす。顔を天に向けて大きく咆哮。こちらを向いたかと思えば火の玉を吐き出してきた。


 火の玉を避けて速度を上げる。上空に飛ばれても厄介だ。一気に近づいてあの翼を片方だけでもなんとかしなければ。


 おそらくダッキングなんかは使えないと思う。ティアマトは身体が大きいし、ダッキングで懐に潜り込むようなこともできないだろう。それなら強引に、エンハンスだけで近づいてぶん殴る。


 ティアマトが二本の足で立ち上がり、翼をバサバサと広げた。


「そうはさせ――」


 俺が言いかけた時、後ろから何発も銃声が聞こえてきた。気がつけば、ティアマトの右翼に六発の銃弾が打ち込まれていた。


 メリルだろうと、振り向くことはしなかった。


 彼女の攻撃でティアマトが身体のバランスを崩した。飛べないわけではないだろうけれど、時間稼ぎができたのはありがたい。


 一気に近付き、左脚に右フックをかます。目一杯の強化と、腰を使った一撃がいい感じにヒットした。


 ティアマトが大きく鳴いた。


 一旦離れて、今度は逆側の足に向けて一発。拳を打ち込んだ際に爆破を起こす一撃はドラゴンにも有効みたいだ。


「もういっちょ!」


 そう言って拳を引いた瞬間、ティアマトの足が浮いた。


 見上げるとティアマトが翼を羽ばたかせていた。こうなってしまうと俺の出番はなくなってしまう。ジャンプして攻撃することはできるけれど、風属性の魔法とかが使えないので一度飛ぶと無防備だ。


「頼むぞお前ら!」


 直進して、飛んでいるティアマトの背後に回った。


 メインアタッカーであるメリルが先頭、ディアと双葉がその後ろで並んでいる。ティアマトからの攻撃を双葉が迎撃、ディアがメリルと双葉を支援。メリルが銃撃でティアマトへと銃弾を浴びせ続けていた。


 俺にもなにかできないかと思った。そこで、一番低い位置にある尻尾が目に入った。右に左にと揺れる尻尾。脚部にエンハンスを集中させれば届くんじゃないだろうか。


 目測二十メートルちょっとというところか。傷を負っているせいかそれ以上上昇しない。


 二度、三度と深呼吸。そして助走。助走の段階で足へのエンハンスを強めていく。そして跳躍と同時に一層エンハンスを強めた。


 右手を伸ばして尻尾を掴む。でもこれだけじゃすぐに振り落とされてしまう。掴んだ瞬間に右腕の力で上へ。左手で尻尾の中腹を掴み、更に上へ。肌がザラザラしている上に、皮膚自体があまり硬くない。これが原因でドラゴンの中でもティアマトは強い方じゃないんだろう。


 こうやって繰り返し、ティアマトの背中に乗った。


 俺の存在にティアマトは気付いてるはずだ。でも下からの銃撃をないがしろにはできない。今の俺はやりたい放題ってわけだ。


 背中にいる状態で力を溜める。足ではなく腕にだ。


 痛がるティアマトが上空を旋回し始めた。これでは攻撃ができない。捕まっているだけで精一杯の状況。メリルの方はしっかりと狙いを定めているようだが、双葉の方の迎撃が追いつかないのが現状だった。


 仕方がないと言っても、このままだと壊滅しかねない。空を飛んでいるこの状況でも、背中に乗っているだけというわけにはいかなくなりそうだ。


「本当は頭をぶん殴ってやろうと思ったが……」


 背中の鱗に足を引っ掛け、背中を殴りつけた。ティアマトが鳴く。俺が背中を殴る。ティアマトが鳴く。これが四回続き、ティアマトの旋回が止まった。


「待ってました!」


 一気に背中を走り込み、頭の上で飛び上がる。


「喰らえ!」


 頭上に一撃。ティアマトは鳴かなかった。その代わりに高度が一気に落ちていく。翼の動きが鈍くなり、落下し始めていたのだ。


 ヤバイ、と思った時には地面に激突。俺は宙を舞っていた。攻撃に気を取られすぎてしまった。


 思い切り背中から着地してしまった。


「いっつー……」

「なにをしてるんですか! ティアマトはまだ生きていますよ!」


 ディアが俺の横を駆け抜けていく。振り向けば、ティアマトとは結構離れてしまっていた。


 なんでディアが前に出てるんだ。そう考えてすぐに思い直した。彼女が俺の前に出てきたのは俺が倒れたからだ。俺を守るためだと、彼女がバリアを張っているのを見てその考えにいきついた。


「ありがとうよ!」


 ディアにそう言い、俺はまた駆けていく。メリルのお陰でティアマトは地面に釘付けだ。


 できるだけ数少ない攻撃で終わらせたい。それならどうする。どう攻撃するのが一番いいんだ。


 走りながら考え続け、二本の足で立つティアマトの下に潜り込んだ。


 双葉に向かって合図をする。足を狙ってくれ、と。


 そうすると、双葉とディアが二人でティアマトの足を狙い始める。少しずつグラつく身体。これでいい。もうこれしか考えられない。


「これしかねーだろ」


 腰を落とし、魔力を溜める。エンハンスだけじゃない。拳には炎を宿した。

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