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それでも俺は異世界転生を繰り返す  作者: 絢野悠
〈actuality point 3〉 Kindness Piece
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十話

「自信は、ないよ」

「そうだろうねぇ」

「自信はないけど、やらなきゃなんないんだろ? 今この状況でできるのは戦うことだけだ」

「町の人はどうする?」

「町の人も助けられる方法がどこかにあるはずだ」

「理想論は身を滅ぼすよ? 理想を語って、ろくな死に方をした人をボクは知らない」

「それでも道はそれしかない。まあ、デミウルゴスが襲ってきたらの話だけど」

「そうだね。実際、ボクもその意見には賛成だよ。勝てるかどうかはまた別の話になっちゃうけどさ」

「とりあえず、俺はいつでも戦えるように準備してくるよ。新しいガントレットが欲しいんだ」

「わかった。近くに武器やがあるから行ってくるといい。あーでも、ちゃんとした鉄板が入ったヤツを買うといい。小手というか手甲という言い方の方が正しいかな。キミの戦い方だとすぐボロボロになりそうだしね。ついでに靴もボロボロだからグリーブも買って来ると良い」

「わかった。じゃあ行ってくるよ」

「気をつけてね。戦闘になりそうだったら逃げること。刺客が来た場合は間違いなくキミよりも強い」

「抜かりはないさ。逃げる技術だけは割りと自信がある。かっこ悪いことだけどな」

「いいんだよ、それで」

「それじゃ、行ってきます」


 宿を出て、町民に聞きながら武器屋を探した。グランツが言った通りにかなり近くにあった。前回のダンジョンで結構な額のお金を手にした。できるだけ高価で長持ちするやつが欲しい。


 ということで、ミスリル製のガントレットとグリーブを買った。お陰で財布はスッカラカンだ。銀色よりも鮮やかな銀色。それは銀色なのでは、と思うけれども考えないようにしよう。


 武器やから出てすぐのところで、目の前で少女が倒れていた。倒れていたのではない、倒されたのだ。


 白く長い髪の毛。顔立ちは幼い。身長も低く発育もあまりよくなさそうだ。うん、あの双子よりも幼い感じだ。つっても全身マントで覆われてるから詳細まではよくわからんが。


「おい! どこ見て歩いてんだよ!」


 少女の前には長身の男。冒険者なんだろうなと思った。茶色いロン毛で目つきが悪い。


「す、すみません……」

「謝って済むと思ってんのか? 詫びでもしてもらわなきゃ、割にあわねーよなぁ」


 いや、謝って済むだろと思うが、ああいう輩には通じないんだろうな。


 男は少女の身体を舐め回すように見ていた。これはあまりいい予感がしない。できれば面倒事は避けたいが、このまま見て見ぬふりもできないな。


「あのー」

「んだよてめぇ」

「すいません。その子、俺の連れなんですよ。その子がなにかしたのなら俺が謝ります」


 スッと彼女の前に出た。


「謝罪はいらねーよ、だから金よこしな」

「申し訳ないんですけどお金はないんですよね。貧乏人なもんで」

「ああそうかい。これなら――」


 男が拳を僅かに上げた。拳はそのまま俺の顔面めがけて飛んでくる。


 見える。スローモーションとまではいかないが、フレイアとの模擬戦や今までの戦闘のお陰だろう。


 その拳を左手で払い落とし、右拳でアッパーをかます。けれど攻撃は当てずに寸止め。寸止めって確か相当難しいような気がしたけど、なんとか上手くいった。


「この子が悪さをしたなら謝ります。でももし、特になにもしていないのであれば、このまま続きをしましょうか?」


 男は苦い顔をして「クソっ」と言いながらどこかに行ってしまった。内心「うひょー、俺かっこいー」とか思わないでもないが、今はそんなこと言っていられない。仲間を呼ばれる可能性もあるし、この子を安全な場所まで運ぶことが最優先だ。


「ありがとう、ございます……」


 少女の顔を覗き込む。小顔に収まる大きい瞳。でも鼻とか口は小さめ。薄汚れている割りには髪の毛がサラサラと風になびいていた。


「大丈夫か? 立てる?」

「ええっと、無理そうです……」

「そんなに強くぶつかったのか」

「いえ、その」


 もじもじと下を向いた。その時、誰かの腹の虫が鳴った。


「もしかして、腹が減って動けないのか? もしかして、腹が減ってフラフラしててぶつかったのか?」

「なにも言い返せません……」

「ああ、そうだな、もうなにも言い返さなくてもいいぞ。とりあえずテキトーなレストランにでも入るか」


 防具を買って金が無いと言っても、食事をするくらいの金はあるはずだ。この子はとんでもない大食いでもなければ、だが。


「仕方ない。ちょっとの間我慢してろよ」


 そう言ってから彼女を抱き上げた。いわゆるお姫様抱っこというやつだ。


「え、あ、あのこれ」

「いいからちょっと我慢せい」


 予想以上に軽い。これくらいの女の子はこんなにも軽いのか、と思ってしまうくらいに軽かった。


 そんなこんなで二人でレストランに入った。店の前に出ていたメニューはリーズナブルで、これならば少し多目に食べても問題なさそうだ。


 入り口から一番近い場所に座り、メニューを渡した。


「好きなもん頼めよ。でも三品までだからな。俺もあんまり金がない」

「でも……」

「後から金返せとか言わないから心配すんなって、ほら」


 少女はおずおずと手を差し出してメニューを受け取った。


「わかりました、ありがとうございます」

「それでいい。キミ、名前は?」

「メリル=ハレットです。えっと、アナタは?」

「悪い悪い。俺はイツキだ。イツキ、ミヤマ」

「イツキさん、ですね」

「さん付けってのはちょっとくすぐったいけど、まあいいだろう」


 メリルはハンバーグセットとカレーを頼んだ。


「メリルはここの住民なのか?」

「いいえ、冒険者です」

「冒険者? 誰かと一緒なのか?」

「えっと、あの、いいえ。私一人です」

「一人で冒険者するにはまだ年齢的に早いと思うんだが……」

「ちょっと前まではギルドに入っていたんですけど、ダンジョンの中でギルドが崩壊してしまいまして。それで一人に……」

「そりゃ悪いこと聞いちまったな」

「大丈夫ですよ。本当のことなので。それに、イツキさんと出会えましたから」


 そのセリフに不覚にもキュンとしてしまった。こんな幼い子に胸をときめかせてしまうなんて、俺はいったいどうしてしまったのか。


「ちなみに言っておきますと、私は十六歳ですよ」

「うそー!」

「やっぱり、幼く見えますかね?」

「うーん、控えめに言っても幼く見えるね」

「ははっ、会う人みんなに言われます……」

「いや! 悪いことじゃないと思うよ! うん! 若いってのはいいことだ!」

「イツキさんもまだ若いのでは?」

「十七だからメリルとはほとんど変わらないな」

「そう、ですね」


 口元に指を当てて微笑む。その姿に心が癒やされる。こういう奥ゆかしい感じの女の子とは接点がないからかもしれないな。

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