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それでも俺は異世界転生を繰り返す  作者: 絢野悠
〈actuality point 1〉 Hello World
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三話

 例えばスキルの中でレベルを誤魔化したりするものがあった場合、俺が彼女の背中を狙っているということもあり得るわけだ。それなのに、懇切丁寧に教えてくれる。


 この世界には六つの大陸がある。それぞれが国として存在しているが、国同士が結託して国家統合政府なるものが造られた。ダンジョンは国家統合政府が管理し、ダンジョン一つにつき迷宮管理営業所を一つ設け、クリスタルの換金をする換金所、ダンジョンに潜るためのパーティを斡旋したりパーティを組んでくれそうな人を探す待合所、ダンジョンの説明を受ける案内所がある。


 で、ライセンスは冒険者としての講習や試験を受けないともらえないらしいのだが、なぜか俺は最初から持っていた。ちなみに冒険者とはダンジョンに潜り、モンスターを倒し、クリスタルを換金したりダンジョン内で拾ったアイテムを売って生計を立てる人たちのこと。その冒険者たちが仲間意識の元で作った集団のことをギルドというらしい。この辺もネトゲとかと変わらないようだ。


 と、ここまで説明してもらったところで町に到着した。


「ここがアルハント。営業所がある町はいろいろ揃ってるから、冒険者にとって困ることはまずないと思う」

「なるほどね、ありがとう。それとごめん」

「なぜ謝る?」

「……いや、気にしないでくれ。ここまで案内してくれてありがとうな。どうやら俺は冒険者としてやっていくしかないみたいだ」

「正直なところ、アンタが何者なのかはわからない。でもレベル1だったのはホントみたいだし、この世界についてなにも知らなかったというのもホントだと思った」

「なんだろうな、そこまで信頼されるようなことはしてないけども」

「アンタの瞳には曇りがない。と、個人的には思っただけよ。私はこれから用事があるから行くけど、もしなにかあったら連絡をくれればいい」

「連絡? 連絡って、ケータイとかスマフォとかあるのか? 見るからに中世ヨーロッパとかそういう雰囲気なんだけど」


 この中世ヨーロッパ的な雰囲気もまたありふれた異世界転生とかネトゲっぽい部分でもある。嫌いじゃないけど。


「ケータイもスマフォもわからないがライセンスにはそういう使い方もある。ライセンス出して」

「ほい」


 俺がライセンスを出すと、彼女は自分のライセンスの表面を当ててきた。一瞬だけ黄色く光り、その光がすぐに収束する。


「どうなったの、これ」

「アドレスを交換した。こうやってライセンスの表面同士をくっつけるとフレンドになれる。フレンドになると音声で連絡を取れるほかに、その人がダンジョン内にいるのかダンジョンの外にいるのかがわかるようになるの。カードの縁を指で横、縦ってなぞると小さいモニターが出て来るでしょ?」


 言われた通り、カード外側を指でなぞった。すると小さくて半透明なモニターが出てきた。登録フレンド、登録ギルド、装備、取得技能なんかが見られるようだ。


「ほー、すごいな。いやでもライセンスを取られて無理矢理フレンドになることとかはないのか?」

「それはない、らしい。私は経験がないけれど、お互いにフレンドの意思があり、尚且つ本人同士がライセンスを持っている必要があるから。脅されてフレンド登録しようにも、登録の意思がないからできないということみたい」

「未知の技術だなそれも。おっけー、またわかんないことがあったら連絡させてもらうよ」

「そうだ、これあげる」


 薄汚れた茶色の革袋を差し出された。受け取って中を見てみると、さっきの城で拾っていたクリスタルだった。一つや二つじゃない。最低でも大小合わせて三十個くらいはありそうだ。


「これはキミが倒したモンスターのだろ?」

「アンタはレベルも低いし装備も貧弱、それになんの道具も持ってない。これを換金して身の回りの物を揃えると良い。宿代も必要だろうし」

「そこまでしてもらうわけにはいかないんだが」

「じゃあ野宿する? 今のレベルだと、この辺のダンジョンに潜ってもすぐ死んじゃうと思うけど」

「イジメっ子かよ……」

「だから受け取りなさいって。人間一生持ちつ持たれつ。代わりと言ってはなんだけど、もしも私が困った時は助けてね」


 一瞬にして、花が咲くような笑顔になった。なるほど、咲くという字をえむと読む理由もなんとなくわかる。普段の彼女も可愛いけど、笑った彼女はなにものにも変えられないほどだった。俺よりずっと強いはずなのに、こう、この笑顔は守りたいとか思ってしまう。


「わかった。ありがたく受け取っておくよ」


 彼女は「それじゃあ」と言ってどこかに行ってしまった。


「また会えるといいな」


 ちょっと寂しいけど、さっきの話を思い出して営業所へ。換金所でクリスタルを出すと、数分と経たずにお金が出てきた。五万ギームらしいが、それがどれだけの価値があるのかわからないので困ったものだ。


 その後町にでて様々な店を回ったが、このギームというお金は円とそこまで変わらない価値を持つようだ。


 この世界は、俺が知っている世界じゃない。でも共通する部分もいくつかある。まずは動物。食用や愛玩などもそうだが、乳牛などもちゃんといる。移動には馬車を使ったりと、俺がいた世界にいた動物がいるのだ。モンスターはダンジョン内だけで、外にはちゃんとした動物がいるというのが驚きだ。


 空いている宿を探して泊まることにした。値段は安く、一泊千ギームだと言われた。なぜそんなにも安いのかと聞いてみると、宿屋は国からの補助金が入るのだと言う。


 部屋に入って鍵をかけた。店を見て回っている時に、これから必要になりそうな物はいくつか買い込んでおいた。まあ、傷薬とか煙玉とか、簡単な装備とか。俺は拳闘士なのでガントレットは重要。あとは彼女の装備を見習って金属製の胸当てとグリーブ、ヘッドギアなんかを買った。鎧の下に着るインナーを三着購入した頃には、換金したお金の半分を使っていた。幸いだったのは装備に対して適応最低レベルが設けられていないこと。つまりめちゃくちゃ強い装備が手に入れば俺でも使えるということだ。


 ベッドに身体を放り投げた。


 木造の天井を見上げてため息を一つ。俺もアニメとかゲームは好きなので異世界転生というものに憧れがなかったわけじゃない。が、意外と面倒くさいんだなというのが正直な感想だ。

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