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それでも俺は異世界転生を繰り返す  作者: 絢野悠
〈actuality point 2〉 One loss
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十一話

「別に隠すようなことでもないが、お前に言うのはなんかイヤだ」


 アルはやはり俺のことが嫌いなのでは。


「ちょっと恥ずかしがってるだけ。私が説明する」

「恥ずかしがってないわ!」

「嘘。同い年くらいの男の人と会話する機会がないから仕方ない」

「だー! 言うなー!」


 なるほど、警察でも基本的に年上ばっかなんだな。


「私たちの曾祖母の名前はアルメイリアと言う。一代で大きな会社を立ち上げて、その会社はなおも生き続けている。私たちはそんな曾祖母の名前を受け継いだ」

「おお、アルとリアか。え? 真ん中は? お母さん?」


 ふるふると、リアが首を横に振った。


「その昔、リュメイラという女の子がいた。私の姉であり、アルの妹。私たちは三つ子だった」

「その昔、ってことはもう……」


 今度は小さく頷く。


「メイは優しく、包容力にあふれていた。子供ながらに私たちの中で一番大人だった。私はメイが泣いたところを見たことがない。私やアルが泣いていると、一番最初に頭を撫でてくれた。性格と行動だけならば間違いなくメイがお姉さんだった。でも、ある事件に巻き込まれた」

「いいわリア、そこからは私が言う」

「でも」

「いいから」


 アルは咳払いを一つしてから、リアからバトンを受け取るように話を続けた。


「今から五年前に連続誘拐事件というのが起こった。全部で十件だったかな。八人目の犠牲者がメイだったの。運が悪かったとしか言いようがない。朝起きて、私とリアがベッドから出る前に、メイが一人でトイレにいった。私たちは三人で一つのベッドに寝ていたのだけれど、私たちは寝起きがよくなくて」

「トイレに行ったくらいで攫われるのか?」

「犯人は強盗でもあったのよ。大きな物音がした。ガラスが割れる音、木材が破壊される音、金属が打ち合う音。私たちは一気に覚醒して、恐る恐るリビングに向かったわ。そうしたら母と父が血だらけで倒れていた。倒れてはいたけれど動いてもいた。私たちの姿を見て犯人が逃げ出したのだけれど、メイはその犯人に抱えられていた。頭は真っ白だったけど、なんとかしなくちゃと思って両親を起こした。警察と病院に連絡を入れた」

「両親は無事だったのか?」

「ええ、今も生きてるわ。その三日後、メイは少し離れた場所にある小屋で見つかった。山の深いところにある、旅人用の休憩所みたいな小屋ね。最悪だったわ。服は着てなくて、手足は変な方向に曲がっていた。何箇所も縄で縛られたような跡があって、誰がどうみても犯人の性のはけ口にされたように見えるでしょうね」

「……」


 これ以上なにを言えってんだ。同じ男としては当然許せないが、彼女たちにとっては犯人と同じ性別でしかない。


「そんな顔しなくていいわ。犯人とアンタが同じだとは思わないから大丈夫。ただね、私たちはその犯人を探し出したいの。顔は覚えてる、声も、身長も、あの時見えた大きなキズも」

「大きなキズ?」

「ボロボロのズボンにノースリーブシャツだったんだけどね、肩から胸にかけてかなり大きな火傷の跡があったの。それを証拠にして犯人を探したい。私たちはそう考えて警察になった」

「でも、なんていうか、警察だと結局復讐とかはできないよな」

「最初は復讐も考えた。でもそれじゃダメだって気がついたの。私たち一般人では、復讐はおろか探し出すことも難しいから。それならば、復讐への気力を犯人捜索、犯人逮捕に向けようって二人で話し合ったの」

「そんなことが、あったのか。なんか、ごめんな」

「別に謝られても困る。でも、そんな火傷の跡を見かけたら教えて頂戴。逮捕くらいは私たちの手でやりたいの」

「……おーけー、了解したよ」

「うん、頼んだ」


 そこで、分かれていた三人と合流した。


 合流した途端に同じような隊列に戻り、俺の横には再度フレイアがやってくる。


「どうしたの? なんか複雑そうな顔して」

「いや、アルとリアが警察になった理由を聞いてさ、あの二人の目が真っ直ぐな理由がわかったんだ。その半面、その正直さは彼女たちの足を引っ張りそうだなって」

「あー、あの話聞いたのね。協力しろって?」

「そういうこと。でも、それくらいならいいかなって。あとでアドレス交換しておこうかな」

「そういう名目で女の子のアドレスをゲット……手慣れてるー、怖いー」

「やめんか」


 ちょっとブルーになりかけてたが、フレイアのお陰で助けられた。コイツといると明るくいられる。今の状況でフレイアがいなくなったら相当キツイだろうな。


 そこから進み続けて一時間は経過しただろうか。地下二十階を過ぎたあたりで空気が変わった。空気が薄く、すえた臭いがする。今まではほぼ無臭だったし、地下であっても息苦しさなど感じなかった。なによりもヒカリゴケがまったくない。


 リアが魔法で作ってくれた光の球だけが頼りだった。


 若干の息苦しさのせいか、汗が余計に出てきてしまう。


 額や鼻の下の汗を袖で拭った。フレイアたち〈蒼天の暁〉は汗一つかいていないようだが、双子には汗を拭うような仕草が見える。これもレベル差ってやつか。


「ストップ」


 ヒュンタイク姉妹の足が止まる。俺が「どうした?」と言うよりも早く、リアが自分の唇に人差し指を当てていた。アルは遠くを凝視して微動だにしない。


 通路の向こう側になにかあるのだろうか。この通路自体はかなり広いだろうけれど、ヒカリゴケがないせいか暗闇が濃い。前も後ろも右も左も、魔法で作った光の球さえも周囲を補完しきれていない。つまり、端がまったく見えないのだ。だから「広いだろう」という憶測でしか話ができない。


 なんだか生臭い匂いが鼻孔をつついた。生臭いなんてものじゃない、強烈な腐臭だ。


 その瞬間、アルが「ハッ」と息を吐いた。


「伏せて!」


 俺だけが声に反応できなかった。が、誰かが俺の頭を無理矢理下げさせた。


「いてっ!」

「ちょっと黙って!」


 声の主はフレイアだった。彼女が俺の後頭部を押さえ込んだのだろう。


 今まで俺が立っていた場所をなにかが通過した。生臭く、生暖かい。


 それが通り過ぎてすぐに皆が立ち上がる。ここでもまた俺だけが遅れてしまった。俺の右手をアルが、左手をリアがとった。

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