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それでも俺は異世界転生を繰り返す  作者: 絢野悠
〈expiry point 7〉Count down
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六話

 炎を宿した拳を握りしめる。それを地面に叩きつければ、炎は部屋全体に広がっていった。


 パキンパキンとガラスが割れるような音がたくさん聞こえてきた。これだけ豪快に燃やせばウイルスも全滅だろう。あとで強引に埋めるつもりだし、燃やした上で埋めてしまえばさすがに誰も手は出せない。


 この施設にもう人はいないはずだ。なので最後に気になった場所に行くことにした。そう、まだ先を見ていないシャッターの向こう側だ。


 シャッターの横にあるボタンを押してみるが反応はない。俺がテキトーに暴れすぎて配線でもやられたのか。そんなことを思いながら強引にシャッターを破壊した。


 シャッターの向こうは大きなエレベーターになっていた。ウイルスの棚をまるごと巨大エレベーターで運ぶってことか。


「この上ってどうなってんだ?」


 きっと山のどこかに出るんだろうが、どこに出るのかが予想できない。そこまで拓けた場所があっただろうか。


 思い立ったら気になってしまう。


 周辺にあるボタンをいくつかおしてみるが反応がなかった。ということは結局破壊するしかないってことだ。


 エレベーターの天井をぶち抜いて上に登った。すごくちゃんと作られていって、ここが山の中だってのを忘れそうになるくらいだ。


 壁を蹴ったりワイヤーを伝ったりして上に登っていく。数分程度登り続けて上部にある天板も破壊して外に飛び出した。


 地面に降り立って周囲を確認する。ちょっと派手にやりすぎたかなと思ったが問題はなさそうだ。拓けてはいるが周囲に動物もいない。おそらくミカド製薬所有の場所なんだから人はいないと思う。


 しかし疑問は残る。こんなところにウイルスを出してどうやって回収するっていうんだ。まあ方法なんて一つしかないんだろうけど。


 きっとここにウイルスを出してヘリコプターかなにかで運ぶつもりだったんだろう。空路は安定とは言えないが、ミカド製薬ほどの資産があれば金は問題ない。陸路よりも誰かに捕まることもないし、早く遠くに運ぶには最適だ。


 けれどどうしてか引っかかる。ヘリコプターでは目立ちすぎてしまう。今まで目立たないようにと立ち回っていたミカド製薬がそんな大胆なことをするかどうか。


「目立ってもいいと思わなきゃこんなことしないよな……」


 目立つのは問題なくて、ウイルスは完全に近づいてる。


 ハッとして息を呑んだ。


「ヘリでウイルスをばらまくつもりだったのか……?」


 可能性は否定できない。しかしここで一人で悩んでもあまり意味はない。それに製造施設は破壊したしヘリでの散布は不可能だ。


 指を組んで大きく伸びた。あとはフレイアと双葉がうまくやってくれれば万事解決。双葉はミカド製薬本社にウイルスがあるかどうかを確認しにいっただけなので、実質はフレイアの帰還が肝になる。アイツの戦闘能力なら、もしかしたら俺よりも早く片付けているかもしれないな。


「うし、とりあえず施設を埋めるか」

「もしかして――」


 そんな時、声が聞こえてきた。聞き覚えがある声だが、ここで聞くことなど絶対にないはずの声だ。


 勢いよく振り返った。


「このまま終わりだとか思ってないよね」


 ニヤリと笑うルイが立っていた。


「お前、なんで……」


 それ以上言葉が出てこなかった。唇が震え、呼吸を整えるのが難しくなっていた。


 ルイは未来の人間だ。当然過去であるこの場所にいるはずはないし、そもそもいてはいけない存在なんだ。


「わからない? ボクにはこれがあるからね」


 そう言って手に持っていた大きな「なにか」をこちらに投げて寄越した。大きい大きい、人くらいの大きさがあるなにか。


 くるくる回りながら、長い毛のような物が宙を舞っていた。毛がついていて、四本の長細い物がついている「なにか」だ。


 それが俺の目の前に落ちた。


「なんで……」


 それは俺を見上げていた。瞳に光がなくなったフレイアだった。体は痣だらけで髪の毛はボサボサ、顔は腫れ上がっているけれど間違いなくフレイアだ。


「そいつがいなきゃボクもここにはいないからね」

「フレイアの時間跳躍能力か!」

「そうだよ。だってあそこにはいっぱいあったじゃないか。使い捨ての時間跳躍装置フレイアがさが」

「使い捨て、だって?」

「元々そういう目的で作られたクローン体だよ。過去を変えるために魔女クラウダが作った装置さ」

「一人の人間だ。そんな言い方するんじゃねえ……!」

「いいや違うね。でなければあんなにも不出来な人形を何十体も作りはしなかっただろうし。わからないのかい? 一人じゃないんだよ。同じ顔をした似たような人格のお人形だよアレは」

「それ以上口を開くんじゃねーよ!」


 一気に頭に血が登った。


 地面を踏みしめて一気に近づいた。そして右拳を、そのへらへらした顔面に力いっぱいぶちかましてやった。


 はずだった。


「キミ、弱くなった?」


 顔面の数センチ手前で受け止められた。

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