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それでも俺は異世界転生を繰り返す  作者: 絢野悠
〈expiry point 7〉Count down
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三話

 そうして、深夜十二時を迎えた。


 食事をして、用を足し、一通りの準備を済ませてからボロ屋を出た。フレイアがどこから用意した少しぴっちりした厚手の全身タイツ。下地は黒で白いラインがところどころに入っている。それを三人とも着ているのだが目のやり場に困ってしまう。


「このスーツはミカド製薬に侵入した時に入手したものなの。絶縁機能がついていたり、汗をかいてもすぐ乾いたりといいことだらけだから」

「そういうのはもっと早くわたすべきじゃない? なんでギリギリに渡した?」

「サプライズ的な?」

「プレゼントじゃないんだから嬉しさとかないって」


 とてつもなくくだらないやり取りだがなんだが楽しくなってしまう。もしかしたらこれが最後になるかもしれない、とか思ったら物悲しい気もする。


 いや待てよ。俺が死ぬとその日がループする。ってことは実質終わりがないということだ。二人が死んだあとで俺が眠らなければなんとかなる。


「まあまあ、ないよりはあった方がいいでしょ?」

「そりゃそうだ」


 なんて言いながら笑いあった。


「じゃあ、無茶せずしっかりやろうか」

「無茶せず、な」

「全部終わったらまたここに集合でいいの?」

「そうだな。まあ終わったら誰かの手伝いに行ってもいいしな」

「そのへんは気分で変えよう。イツキもフタバも頑張ってね」

「おう」

「はい」


 そんな軽いやり取りをして、最後に手を上げあって散っていく。


 二人が暗闇の中に消えていくのを確認してから、山の研究所に向かって走り出した。ボロ屋を出る時に物音を消すサイレントという魔法をフレイアにかけてもらったので物音は気にしなくてもいい。それに研究所の方も物理的にぶっ壊すつもりだ。これでウイルスとワクチンを奪取できなければ終わり。それならできることを全部するしかない。


 研究所に到着して入り口を見た。おそらくまた土で隠れてしまっているんだろうが、外に警備は配置されてはいない。最初に侵入した時は齊間景が手引していたから警備がないのか、とも思ったがそうではないらしい。高いセキュリティに信頼を寄せているんだろう。きっと俺やフレイアのように、意思を持ったまま化け物になった者のことを考えて作られていないんだろう。


 入り口をぶっ壊す前に研究所の内部を思い出す。まだ完成品でないなら、出入り口を確保できるなら手当り次第ぶっ壊しても問題はないだろう。そのためには最下層、最深部に行かなきゃならない。


 脱出した時、俺は薬物のせいで頭がどうかしていた。思い出そうとしてもあまり深いところまでは思い出せない。思い出せるところまで思い出し、あとはアドリブでなんとかするしかないかもしれないな。


 入り口であるハッチの上に立って深呼吸した。


「うし、行くぞ」


 拳を上に引いたあと、魔力を込めて目一杯叩きつけた。


「作戦、開始だ」


 落下していく。着地と同時に場所を把握して走り込んだ。大丈夫、齊間景と一緒に行ったところまではちゃんと覚えている。


 すぐさまアラートが鳴り始めて赤いランプがくるくると回り始めた。


「侵入者だ! 捕まえろ!」


 警備員と移動型の警備ロボットが出てきた。


 人は殺さないに越したことはない。ロボットだけ破壊して警備員は気絶させるにとどめる。そう思っていた。


 しかし警備員たちは俺の姿を見ると、ポケットから小瓶を出して躊躇しながらも中身を飲み干したのだ。中には泣いているやつもいた。


 みるみるうちにそいつらは化け物になっていく。ここの警備員もなにかしらの弱みを握られていたのかもしれない。そうでなければウイルスらしき飲み物を飲んだりしないだろう。これで殺さざるを得なくなったか。


 ビッグアント、オーク、リザードマン、スカルナイトにグレムリン。圧は感じないから俺よりずっとレベルは低いはずだ。いや、コイツらのレベルが低いというよりは俺のレベルが高くなったんだ。フレイアとそこまで変わらないレベルにまで上がっているのだから、これくらいのモンスターを倒せないのは問題だ。


 全員頭をぶん殴って殺した。一発殴っただけで頭が弾けた。それくらい、コイツらと俺には力の差がある。姿がモンスターのコイツらと、力が化け物じみてる俺は、どっちが本当の化け物かわかったもんじゃないな。


「アホくさ」


 今更こんなことを考えても意味はない。俺個人の時間は無限に等しいものがある。だが他の人間の時間は有限で、ウイルスを撒かれてしまえばそこで負けが確定してしまう。負けないためには、勝つしかない。


 研究員や警備員を片っ端から殴り殺した。少しずつ感覚が麻痺してくる。この鉄臭い臭いも、頭が潰れる時のグニャリとした感覚も、人を殺めているという感性さえも、なにもかもが本来の俺からかけ離れていく。


 それでもやめることなんて許されない。魔法をぶっ放しながら走り続けた。途中の小部屋もふっ飛ばして来たし打ち漏らしたなんてことはないと思う。


 そうやって最下層までやってきた。目の前の大きなドアを炎でふっ飛ばす。一応振り返って確認するが追っ手はいないようだ。

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