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それでも俺は異世界転生を繰り返す  作者: 絢野悠
〈actuality point 7〉True meaning
222/252

三十八話

 会話が止まった。不思議と嫌な空気ではないが、気まずいことには変わりない。


「とりあえずすぐにでもエルドートに戻ろう。馬車はもう用意してあるから」

「いつでも行けるってわけだ」

「ミリシャって子の話もついてる。ミリシャの両親に関してはゲーニッツがなんとかしてくれるから大丈夫だと思う」

「そうか、それならよかった」


 ここまで連れてきておいてどうすることもできませんでした、じゃさすがに気の毒だ。両親を盾に脅されて、今度は自分の命を盾に脅されたのだ。当然俺にだって良心はある。できることならミリシャは両親と共に家に帰れるようにしてやりたい。


「でもなんで彼女を連れてきたの?」


 フレイアの疑問はもっともだ。非戦闘要員であるミリシャを連れて歩くなど足かせがついてるのと同じことだ。それにミリシャに対してルイが発振器をつけていないとも限らない。


「俺だって最後までどうしようか迷った。でもこれが正解だと思った」

「彼女になにをさせたいの?」

「クラウダと会わせたい。ミリシャのスキルは治癒だから、もしかしたらクラウダにもなにかしら効果があるんじゃないかと思った」

「なるほど、そういうことね」


 うんうんと頷いているあたり一応納得はしたらしい。


「そうだ、クラウダから伝言があるの」

「俺にか?」

「ええ。そろそろ時間切れかもしれないって」

「時間切れ、か」


 クラウダが言うところの時間切れは、おそらくこの世界が終わることを意味しているんだろう。


「時間切れって割には呑気だよな。アイツもお前も」

「実感がないからね。それにイツキが救ってくれるんでしょ?」


 なんて言いながらフレイアが目を細めて笑った。胸が、強く締め付けられた。


「お前は知ってるんだろ?」

「知ってるって、なにが?」

「俺が過去を変えればこの未来は消えるんだ。ってことはお前も消えるってことだ」

「知ってるよ。知ってるけどこれが正解だって信じてるから。私たちが信じてきた道が正しいって、イツキが証明してくれるんでしょ?」


 嘘偽りがない目をしている。俺を、魔女を、フレイアたちはどうしてここまで信じられるんだろう。


 でもそれは聞いちゃいけないんだと思った。魔女もそうだが蒼天の暁もそうだ。長い時間をかけてこのためだけに命をかけてきた。来たるべき日のためだけのために駆け抜けてきたんだ。そこに対して俺がどう思うとか関係ないのだ。それが、この世界のあり方なのだから。


「ああ、俺がなんとかするよ」


 そっと手を握ると、フレイアがきゅっと握り返してくれた。


 見つめうと、自然と顔が近づいていく。そして、ゆっくりと唇が触れ合った。すぐさま唇を離すが、また顔が近づいて何度も何度も、ついばむようなキスをした。


「こういう仲になるとは思わなかったな」


 フレイアが「へへっ」と笑う。それが可愛くてまたキスをした。


 肩を掴むと、フレイアがハッとしたように体を強張らせる。俺がなにをしようとしているのかなんとなく感じとったのかもしれない。それでも嫌がるような素振りはなかった。


「ちょっと待って」


 が、そっと胸を押された。


「ど、どどどどど」


 ちょっとよくわからない感じになってしまった。感情がぐちゃぐちゃでどう対処していいかわからない。


「えっとね、その、ほら」


 フレイアが指を差した。そこにはすやすやと眠る双葉がいた。まあ確かにこんなところでいろいろできないわな。


「た、たしかに」


 なんというか微妙な空気になってしまった。双葉は寝てるし、俺とフレイアの関係はちょっと難しい感じになってる。


「そういえばなんだけど、フレイアは俺のことが好きってことでいいんだよな?」

「そ、そういうことになるかな。イツキは?」

「俺も好きだよ」

「そう、なんだ」


 またなんともいえない空気になってしまった。


 ってそうじゃない。


「俺たちって、今どういう関係なんかな」

「あー、っと、それ、はー……」


 部屋の天井を見て視線をさまよわせている。おそらくはフレイアもまた似たようなことを思っていた。と思いたい。


 大きく深呼吸をしてから俺を気持ちを伝えることにした。


「俺はさ、フレイアと恋人になれたらなって思うんだけど、どうかな」


 フレイアの顔がどんどんと赤くなっていくが、おそらく俺の顔の方が赤いだろう。


「私も」


 穏やかな顔で語りだした。


「私もイツキとそういう関係になれたら嬉しい」


 今まで見てきた微笑みの中で一番輝いているように見えた。そう言ってくれたことが嬉しかった。


 しかし、どうしてかフレイアの顔が曇り始めた。


「じゃ、じゃあ……!」

「でもごめん」


 空気が固まった。重く、なにかがのしかかるようだった。なにを言われたのかがわからなかったからだ。

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