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それでも俺は異世界転生を繰り返す  作者: 絢野悠
〈actuality point 7〉True meaning
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三十話

 立ち上がって素早く移動する。足を向けたのはレストランだ。こういう田舎町でもレストランくらいはある。


 と思っていたがなかなか見つからない。牧場や畑ばかりと言ってもそれなりに大きいので移動に苦労する。


 少し離れたところで「レストラン」の看板を見つけて胸を撫で下ろした。これで前に進める。


 入ってすぐにカウンターに向かった。


「お客さん、このへんじゃ見ない人だね」


 レストランの店主らしきおじさんが声をかけてきた。金が無いので注文はできない。それを言ったら反応は二つ。邪険にされて追い出されるか、ちゃんと話を聞いてもらえるかだ。


「悪いんだけど食事しに来たわけじゃないんだ。いろいろあって俺たちは長距離の馬車に乗ってて乗り過ごしちゃってさ。起きたら荷物はなくなってたしここがどこかもわからないしで大変なんだ。地図とか見せてもらえないかな?」


 そうだ。真実を混ぜつつ嘘をつくのだ。こうやって言えば少なくとも金が無いことに関しておかしな目で見られることはなくなるはずだ。


「寝てる間に盗られたか。大変だったな」

「まあね。ただここの場所さえわかればなんとかなると思うんだ」

「わかった、ちょっと待ってろ」


 店長は奥へと入っていった。地図と町の名前さえわかればなんとかなる。エルドートからどれだけ離れているかにもよるが……。


「アンタすごいね」

「なにが」

「はっ、流れるように嘘が出てくるなって」

「ふざけんな。最初からこういう人間だったわけじゃない」

「私たちのせいなわけじゃないでしょ。元々の人間性が問題だっただけ」

「俺の人間性をお前たちが変えたんだよ。全部じゃなくても、間違いなく部分的に変えたんだ」

「バカみたい。責任転嫁にしか聞こえないんだけど」

「言ってろ」


 そうしているうちに店長が地図を持ってやってきた。カウンターから出てきて俺の横に座る。


「ここはガドラって町なんだが、地図上でいくと右下にあたるな。ちょうどこのへんだな」


 店長が指を差してくれる。


「ちなみにエルドートってどこかな」

「エルドートは……ここだな」


 店長が差した場所は地図上でガドラよりも左上、中央の方だ。そもそも大陸が違うようなのだが、エルドートに戻るにはどれだけかかるんだ。


「エルドート出身なのか?」

「いや、そこに知り合いが多いんだ。位置的に船を使わないとダメそうだけど、どこかに港ってある?」

「この辺には港はないんだ。海沿いが全部山だからね」

「じゃあ一番近いところはどこになる?」

「ここだな。コロトって港町だな」


 コロトはもっと右の方、大陸の東端近くまでいかなきゃいけない。


「でも馬車でだいたい五日くらいはかかるな。そこからエルドートで三日くらいだろうな」


 前に船に乗ったときも結構かかった記憶がある。


「申し訳ないんだけどこの地図もらえないかな?」

「それくらいならいいよ」

「それと所属ギルドと連絡をとりたいんだけどなにか方法ないかな? ライセンスなくしちゃって……

「あー、それなら町の端にある派出所があるから行ってみたらどうかな。警察ならギルドと連絡とれると思うし」

「そうなの?」

「警察がどうしようもなくなったときにギルドに協力を仰ぐこともあるし、警察の方でギルドの管理とかもしてるんじゃないかな」

「なるほど。本当にいろいろありがとう。それじゃあ俺たちは行くよ」


 地図を持って立ち上がった。ミリシャの腕をぐいっと引っ張り出口に向かう。


「ちょっと待ちな」


 と、店長に呼び止められた。


 振り返ると胸になにかが投げ込まれた。慌てて手を出して受け取ると、厚紙に包まれたなにか柔らかいものだ。


「顔がひでーよ。それでも食え」


 なんて言いながら接客に戻っていった。厚紙を少しめくるとサンドイッチが入っていた。一つや二つじゃない、三角形のサンドイッチが八個くらい詰め込まれていた。


「ありがとう」


 俺がそう言うと店長は笑いながら手を振ってくれた。


 正直かなり腹は減ってたし、このまま港町を目指しても途中で倒れていただろう。まあサンドイッチだけでどれだけやれるかはわからないが。


 サンドイッチを持ったまま目立たない場所を探した。


 暗がりの裏路地に入って、大通りから見えない場所で腰をおろした。


「こんなところで食べるつもり?」

「目立ちたくないからな。こらよ」


 サンドイッチは四つ区切りのものが二つ。だから半分をミリシャに渡したのだ・


「いいのか? 独り占めしなくて」

「お前のことをイジメたくて連れてきたんじゃない。さっさと食え」


 ミリシャはため息をついたあとで渋々といった顔をしてサンドイッチに口をつけていた。コイツも空腹だろうに少しずつ食べていた。どこか上品に見えるのはコイツの育ちが実はいいのか、それとも俺の目がどうにかしてしまったかの二択だな。


「私のことを見てる暇があったら口を動かしたらどうだ?」


 睨まれた。


「わかってる」


 俺もガツガツと食べないように心がける。余裕がないと思われたくないからだ。常に優位を維持していきたい。


 それにしてもミリシャはやはり育ちがいいのかもしれない。食事の所作もそうだが座り方にも品がある。


 と、ジロジロ見てるのはよくないな。


 さてこれからどうするかな。


 馬車を借りる金はない。かといって歩いていくとなれば最低でも六日はかかるだろうし、その間の食事や宿代なんかもかかるだろう。が、そもそもやっぱり金が無いという問題がどうしても壁になってしまう。


 食べながら頭を抱える。本当に解決策がみつからない。山を越えてショートカットしても船がなきゃ意味がない。空を飛ぶようなこともできないし、それはミリシャだって同じだと思う。

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