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それでも俺は異世界転生を繰り返す  作者: 絢野悠
〈actuality point 7〉True meaning
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十四話

 双葉もいろいろと考えることがあるだろうに、どうしてか食事の手はほとんど止まっていなかった。


「でもさ、俺は頑張れば科学技術の発達で地球の崩壊を食い止めることもできたと思うけどな」

「んー、私は無理だと思うけどな」

「なんでだ?」

「この一億年の間に少しずつ地球はやせ細っていったってクラウダさん言ってたよ。モンスターによって大地は削られ化石燃料は短期間で消失した人間の数も動物の数も減って、地球は少しずつ小さくなった」

「それが問題なのか?」

「地球が小さくなったっていうことは公転の周期が変わるってことだよ? 私たちがいた過去での太陽と地球の距離とは変わっちゃってるっていうこと。地球が縮小して体積が減少したということは、それはつまり他の星とぶつかる可能性があるということでもあり、ぶつからなかったとしても銀河系の遠くに追いやられてしまうということでもあるの。体積が小さくなると太陽の重力に鑑賞する力が弱くなるから。公転の軌道から外れたらどうなるかは計算してみないとわからないけど、今も太陽から離れてるのかもね」

「それだって科学と魔法でなんとかなったりするんじゃないのか?」

「未来を見て、その結果として未来がないってわかったからそうしたんじゃない?」


 言われてみればそうか。


 しかし、なんとなく釈然としないのはなんでだろうな。


 いろいろと考えて食事をしていたせいか、正直味はよくわからなかった。双葉としゃべりながら、しかもその話の方に集中していたもんだから少しばかりもったいないことをした。


 食堂を出て自室の方へと足を向けた。


「お前、これからどうするんだ?」

「クラウダさんに呼ばれてるんだよね。すぐ終わるらしいけど」

「その後は?」

「特に用事はないかな。図書館にでも行ってこの世界のこと、というか未来のことを少しだけ勉強しようかなとは思ったけど」

「なるほど、そりゃいい」


 未来にどんな出来事が待っているのか、それを調べるのも悪くない。


 いやそうじゃないな。単純に知りたいんだ。俺たちがいる現代から、この世界に至るまでの歴史を。世界的な文明は退化し、けれど局所的な科学力の発達が起きた。その状態を維持したまま、いったいどれだけの年月を過ごしてきたんだろう。考えただけで頭が痛くなりそうだ。


「お兄ちゃんも一緒に行く?」

「そうだな」


 双葉は少し暗い顔をしたあとですぐに笑顔に戻った。


「わかった。クラウダさんとの用事を終わらせてからだから、こっちの用事が終わったら迎えに行くね」

「遅くなるようならメッセージくれ。時間つぶしてるから」

「うん、それじゃあね」


 双葉は前を向き、振り返ることなく駆け出した。


 その後姿がどこか寂しそうで、悲しそうに見えたのはどうしてなんだろうか。


 部屋に入ってベッドに座り込む。双葉とは約束したがクラウダの用事というのが非常に気になるところだ。俺の妹にまで変なことをやらせようっていうんじゃあるまいな。


 考えたところで始まらないし、クラウダの部屋を覗くような勇気もない。あの魔女が持つ力はあまりにも底が見えないからだ。魔法でもスキルでも記憶の改竄くらいだったら平気でやりそうだ。今の俺が持ってる記憶だって、本当に俺が経験したすべての記憶かどうかもあやしいもんだ。


 そう思いながらも信頼している部分があるのも間違いない。どうしてなのか、彼女の言葉には重みがあるのだ。その重みが体にのしかかると、それが正しいのだと安心してしまうのだ。


 彼女の言葉に身を委ねたことを後悔しなければいいが。


「うし、ちょっと体でも動かすか」


 ベッドから飛び上がって軽く体操をする。体を目一杯動かしている時は余計なことを考えなくても済む。と思う。


 前まではそこまで体育会系なノリじゃなかったんだが、未来と過去を行き来するようになってからそういう思考というか、そういう体になってしまったようだ。


 ドアに近づきドアノブを握る。外には人の気配。


 生唾を飲み込みながらドアを思い切り引いた。


 ドサッという音と共に、ドアの向こうにいたメイドが尻もちをついた。


「ど、どうかなさいましたか……?」


 さすがに気の所為だったか。というか少しばかり気にしすぎなのかもしれない。


 だがデミウルゴスが本気を出せばこの町に攻め入ることもできることは証明されている。これくらいの注意は普通くらいに思っておいていいだろう。


「ごめんごめん、驚かせちゃったな」


 手を差し伸べると、メイドが俺の手を握った。


「いえいえ、あんなことがあったばかりですから仕方ありませんよ」

「そうだね、仕方ないよね」


 その声に聞き覚えがあった。


 左に顔を向けた。


 心底楽しそうに笑うルイが手を伸ばしていた。


 メイドはなんとか突き飛ばしたが、ルイの手が俺の顔を強く掴んだ。


 次の瞬間、俺の視界はブラックアウトした。


 これからどうなるかなんて考えたくもない。いや、考える前に俺の意識は暗闇の中に溶けて消えた。


 最後に考えたのは、あのメイドが無事かどうか。ただそれだけだった。


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