十三話
食堂につくと席は半分ほど埋まっていた。時計を見ると昼食時をやや外れた時間だ。
席をとってから注文をした。俺が頼んだのはオムライス、双葉はパンとスープとサラダのセットだった。
「やっぱり受け入れられない?」
先に口を開いたのは双葉だった。
「ここが未来っていうことに関してか?」
「それ以外ないと思うけど」
「そういうお前はすんなり受け入れてるみたいだな」
「最初は驚いたよ。でもなんだろ、いろいろ話を聞いてたらなんとなくだけど納得できるかなって」
「いろいろって?」
「メイドさんたちにこの世界のことを聞いたの。だからかな、ライセンスに関しても腑に落ちたっていうかなんていうか」
「ライセンスがどうしたってんだ。あんな謎技術の結晶となんか関係あんのか?」
「あれも一応科学的にはちゃんとしてるってこと。さすがに分解はできないけど、中には電子機械が詰まってるみたい。重力エネルギーを利用して常に電力を供給できるようにしたとか。機械というか、部品を作るのにも気を使ってるんだって。ブラックホールを利用して圧縮率を上げて加工してるとも言ってた。でも魔法がなければブラックホールを利用することもできなかったみたい」
過去に試験段階だった技術と、未来で得られた魔法という特異能力によって今の環境が作られたってわけか。
「この世界にそんな技術があるとは思えないんだが……」
「それはきっと技術の進歩が局所的に行われていたからだと思うよ。文明としては少しずつ進んではいるけど、誰かが高等な技術を独占していたら様々な技術の発展は非常に緩やかだと思うし」
「でも誰かしらとんでもない天才ってのが現れてもおかしくないだろ?」
「それを防いできたんじゃないかな、クラウダさんは」
「なんでそんなこと」
「私にもわからないよ」
と、言ったあとで「あー」となにかを思い出したように声を上げた。
「技術の発展がすべていいことだとは限らないから」
「いろんな物が発明されて文明が進化するのはいいことだろ? 特にこの世界にとっちゃ、モンスターを退治するための方法だっていっぱい見つかるだろうし」
「問題はそこじゃないんだと思うよ。この世界は「モンスターに蹂躙された世界」であっても「モンスターが支配する世界」ではないってこと。つまり今はモンスターに関しては話題を放置しておいていいんだよ」
「でもクラウダはモンスターが溢れるって」
「それはこの地球そのものに限界が来てるからであって、モンスターを除去しても抜本的な解決にはなりえないんだよ。だからモンスターを倒す力や技術が発展しても意味がない」
「それなら地球を存続させる技術が発明される可能性だってあったんじゃないか?」
「それもそうかも。でも問題があるの」
「人が少なくなったこととか?」
「それもあるんだけど、技術の発展を促すことはできても完成させられるかは別の話ってこと。同時に、たとえば未来予知できる人間がいて、その人間が「地球を存続させる未来」を見られなかった場合」
「世界が終わる未来しか見えない、か」
「技術が発展するっていうことは、世界を存続させたがる人間の技術も、世界を滅ぼしたい人間の技術も発展させてしまうということになる。もしもそれで地球の寿命が縮まるようなことがあれば技術の発展を食い止めて延命した方がいいっていうことにならないかな」
「延命、ねえ」
「延命できなければ私たちはここにいないわけだしね」
ああ、そうか。どんな方向性であってもこの地球を存続させることに注力したってわけだ。
「でもこの世界を滅ぼしたいってやつがそうそういるとも思えないんだが」
「いるでしょ。デミウルゴスが」
「あいつらは世界を破壊したいのか?」
「壊したいんじゃない。運命を受け入れようっていうことだと思う。この世界が滅ぶのであれば、ここに住む人間はそれを受け止めるべきだっていうのがデミウルゴスの考え方だと思うし」
そこで料理がやってきた。
二人同時に食べ始めるが会話はまだ終わらない。
「でもデミウルゴスって俺たちがいた時にもあったのか?」
「それはわからないけど、それに近いものはあったんだと思う。逆を言えばそうでなければあのウイルスが作られなかったんじゃないかとも思うけど」
「ウイルスが作られたのは製作者の思想が反映されているからか」
「結局の所、ウイルスが止められなければそれが世の中の運命ってことになるだろうし。その人の中では、だけど」
「なんて自分勝手な……」
「人の思想なんてそんなものだと思うよ。現実世界でもそうだったでしょ? 私達には理解できないけど、渦中にいる人はその思想に心酔しきってるから。心酔っていう言い方はよくないけど、言い方を変えればそれを正義だと信じてる。実際は誰にでもあることだから、私たちも人のことは言えないんだよね」
「人間だしな」
「そうだよ。だから世界を滅ぼそうっていう人がいても、世界を見守ろうっていう人がいても、世界を救おうっていう人がいても、世界を塗り替えようっていう人がいてもおかしくない」
「たまたま俺たちは魔女の側にいたってだけの話か」
「クラウダさんの考え方を否定するわけじゃないんでしょ?」
「そりゃな、他に方法がなけりゃ選ぶしかない。消去法だろ」
食事を食べながら会話を続けた。




