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それでも俺は異世界転生を繰り返す  作者: 絢野悠
〈actuality point 7〉True meaning
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九話

「わかった、俺が間抜けなのは認める。でもそれはちょっと置いておこう」

「いいだろう。地下でワクチンを手に入れれば、化け物どもにそれを使えばいいだけだ。そのワクチンは治癒もできるが予防もできる。つまりそれをばらまけば他の連中は化け物になることはない」

「でも地下はセキュリティがキツイんじゃないか? 確かフレイアがそう言ってたような気がするんだけど」


 フレイアを見ると、コクリと一つ頷いていた。


「より上位権限を持つ者の網膜が必要になるわ。今までよりもずっと権限を持つ者を殺す必要がある」


 やや違和感がある喋り方だった。クローンだから性格なんかが違うのか、それとも元々フレイアが演技をしてただけなのか。正直、こればっかりは今すぐにどうにかなる問題じゃないな。


「別に殺さなくてもいいだろ。連れていけばいい」

「イツキばそれができる? 反撃される可能性があるお荷物を抱えて、真正面から敵が向かってくる。そんな状況で誰かを犠牲にすることなく切り抜けられると、本気で思っているの?」


 フレイアは「できない」と言いたい。そして俺よりも賢く強いフレイアが「できない」と言う以上、俺ができるとは考えられない。


 前よりも少しだけ、ほんの少しだけど彼女に圧を感じるようになった気がする。もしかしたらもう、彼女は彼女でなくなってしまったのかもしれない。


「わかった。じゃあ上位権限を持ってるやつを殺して眼球を手に入れるところから始めればいいのか?」

「私はそう思ってる」

「で、その上位権限者って誰だ? 斎間景でも追っかけて捕まえるか? また返り討ちにあうかもしれないけどな」


 思わず鼻で笑ってしまった。フレイアや双葉を危険に晒したのは俺の責任だってのに。自分の行いを振り返ってバカバカしくなってしまったのだ。


「その必要はない。人を殺す必要も、な」


 クラウダが俺とフレイアのやり取りに割り込んできた。この行動に関して、俺は少なからず安堵した。今の心境だとフレイアと二人きりになるのも息が詰まりそうだ。別に彼女のせいではないけど、どうしてもダメみたいだ。


「必要はないってのは、網膜の代わりになるものがあるってことでいいのか?」

「網膜の代わりになるものはない。だが網膜そのものを取得することは可能だ。次に過去に跳躍した時間はちょうど宇都美丈一が殺された直後のことだ。すぐに宇都美の家に行き、宇都美の網膜を採取しろ。それから地下へ侵入してワクチンを奪取しろ。ワクチンが手に入り次第、前に監禁された場所へ行け。そこにはウイルスがあるから、そのウイルスとワクチンを混合させれば任務は完了だ」


 俺とフレイアはワクチンの入手とウイルスの破壊。双葉は感染し力を手に入れた三人を倒す。本当に上手くいくのか少し疑問は残る。いくらクラウダと言っても完璧ではないし、俺がいた世界に生きているわけじゃない。なんでも見通しているわけじゃない者の作戦が完璧であるわけがないのだ。


 しかし、俺は頷くことしかできなかった。こちらは人数が少なくやれることも多くない。従うのが一番楽で、一番確実だと知っていた。


「これで終わるのか」

「上手くいけば終わる」

「終わったらどうなる?」

「元の生活に戻れる」

「こんな状態でか? 俺も双葉ももう普通の人間じゃないぞ」

「ワクチンを投与すれば元に戻る」

「でもそれ以外は元に戻らないんだろ?」

「死んだ人間や起こった出来事の話か? それならば変わることはない。もう起きてしまったことだからな」

「いくら頑張っても過去は変えられない、か」


 自分の周りにいた人間は守れた。友人たちも、妹も、フレイアも。でも人体実験の被検体や研究者の親族、ウイルスに感染したなんの関係もない一般人。戦ったりなんてのとは無関係の人たちも何十人と死んでるはずだ。


「いいかイツキ。お前にいくつか言っておかなきゃいけないことがある」

「なんだよ急に。説教か?」

「説教というわけじゃない。事実を伝える必要があると思っただけだ」

「言いたいことがあればさっさと言えよ」

「じゃあ言わせてもらうが、これはお前の生活を元に戻すために始めたことじゃない。世界を存続させるためにやろうとしたことだ。お前の生活、お前の人間関係、お前の意思などどうでもいいことだ」

「そんなことわかってるさ。俺が選ばれたのだってこのスキルのおかげだろ」


 ハローワールド。この力がなければ俺がここにいる理由がない。


「そうだ。そしてなによりも、この物語の主人公はお前じゃない」


 ガツンと、後頭部を殴られたような気分だった。


「それ、どういう意味だよ」

「意味もなにもない。世界を再生させるというこの件において、お前はただの駒でしかないってことだ。どうやってもお前は私の駒だ」


 クラウダは「ふふっ」と笑った。


「以上だ。やることもわかっただろう。今日は休んで飯を食って寝ろ。少なくとも私はもう限界だ」


 クラウダは立ち上がり、侍女たちに支えられながらベッドに戻った。横になったかと思えば寝息をたてる。それほどまでに疲れた、ということなのはよくわかった。


 仕方なく俺たちもクラウダの部屋を出た。クラウダに言いたいことはたくさんあるが、クラウダ以外にも言いたいことはある。まずはそっちを片付けてもいいだろう。

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