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それでも俺は異世界転生を繰り返す  作者: 絢野悠
〈actuality point 7〉True meaning
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六話

 急いで起き上がった。ルイが十メートルのところまで近づいてきている。後ろを振り返るとフレイアの首を掴んで持ち上げている大男がいた。アイツにふっとばされたのか。


「二対一だとでも思ってたのかい?」

「うるせーよ……」

「それにさ、ボクは戦闘に関して高潔なわけじゃないんだよね。気高さとか尊さとかもどうでもいいんだ。勝てばいい、それだけだ」

「ああそうかい」


 どうする、どうしたらいい。


 ルイをこのまま放っておくわけにはいかない。というかコイツが俺を放っておかない。


 しかしフレイアを助ける必要がある。でも助けられない。


「ねえイツキ」

「なんだよ」

「【破滅の子】のことを本当に知らない?」

「知らない、って言ったら教えてくれんのかよ」

「簡単になら教えてあげられるよ。イツキのためだからね。でもその前にこっちをなんとかしないとね」


 ルイが指を鳴らした。次の瞬間、離れた場所でボキリと鈍い音がした。


 顔を向けると、大男の手の中で体を痙攣させるフレイアがいた。


 一気に頭が沸騰するような感覚。それとともに大男に向かって駆け出した。思い切り拳を振り抜いて、大男が軽々と吹っ飛んでいった。


 地面に落ちたフレイアを抱きかかえた。口端からは紅い雫が垂れて落ちる。口元に耳を近づけるが息はすでに絶えていた。


「ふっ……」


 奥歯を強く噛み締めた。


「ふざけんなてめぇ! フレイアを殺す必要がどこにあるってんだよ!」


 ルイは腹と口を抑えて笑っていた。


「なにが楽しいんだよ!」

「破滅の子っていうのはね、数千年も前から伝わるおとぎ話でもあり伝承だよ。簡潔に言えばある一人の男がこの世界を滅亡させるという話さ」

「それが俺だってのか」

「そうだよ。それ以外ありえない。蒼天の暁の中に突如現れた低レベルの男。魔女と手を取った炎を纏いし破滅の子。キミが炎を扱っていること、そして魔女と結託していること。レベルの急激な上昇。それらを加味して、ボクらはキミが破滅の子だという結論に至った」

「だったらなんだってんだよ。俺はなにも知らねえよ!」

「キミが知らなくても、ボクらにとっては重要なんだよ。デミウルゴスはこのときのために組織として運営されてきたんだ」

「破滅の子を殺すことがデミウルゴスの目的だったってことか?」

「まあ、そういうことになるね」


 ルイはまた笑った。


 俺が破滅の子だとすれば、デミウルゴスは俺を殺すために創設された。デミウルゴスが俺を殺すのはこの世界を存続させるため。俺はクラウダたちと協力して過去を変えようとしている。


「俺を殺して、どうしてこの世界が保たれると思ってるんだ?」

「意味がわからないな」

「クラウダが言うにはこの世界はもう限界なんだろ? モンスターが地上に出てくるんだろ? 地球が壊れて、この世が終わる」

「わかってないね、キミは。そうやって滅ぶのであればそれは運命だ。しかし破滅の子が世界を終わらせるのは違う。理に反している」

「なんだよ理って……。伝承で破滅の子が出てくるなら、破滅の子が世界を滅ぼすのだって運命だろ」

「破滅の子はこの世界を滅ぼすんじゃない、この世界を終わらせるんだ。本来あるべきこの世界をね」


 もしかしてこいつ、俺が過去を変えようとしていることに気づいてるっていうのか。しかしルイの口からそれに該当するような言葉は一言も出てこない。


「滅ぼすと終わらすってなにが違うんだ?」

「とぼけても無駄だよ。破滅の子の特徴の一つにレベルの上昇が早いというのがある。それはなぜか。何度も何度も同じ時を繰り返すからだ。レベルの上積みもそうだけど、繰り返すことで格上の相手にも勝つことができる。そうやってキミは乗り越えてきたんだ。そうだろう?」


 背筋が冷たくなるようだった。


 確信している。コイツは、俺を破滅の子として処理するつもりだ。


「あの時、双葉を凍らせた時に殺すべきだったのかもな」

「それはボクのセリフでもあるね。妹ちゃんではなくキミのことを氷漬けにしておくべきだったよ」

「さあ、お前にそれができたかな」

「できるさ。ボクはキミより強いから」


 正直自信はない。しかしここで負けたら、きっと俺には未来がない。殺しておけばよかった、ではなく氷漬けにしておけばよかったというところからもわかる。ここで負ければ、俺は死ぬことなく一生この世界に囚われる。


「でもまあ、今日はこの辺で帰ろうかな。さすがにアレを相手にはできないからね」

「アレ?」


 親指でルイが指差した。その先、遠くには黒い服を着た老婆が立っていた。


「クラウダ……」

「さすがに魔女の相手はできないからね。本来であれば闇討ちする予定だったんだけど、動き出すのがお思いの外早くてさ。キミのせいかな」

「かも、しれないな」

「じゃあやっぱり先に魔女が邪魔だね。ちゃんと留意しておくよ」


 ルイは俺に手を振り「じゃあね」と言った。ルイは自分自身の影の中にトプンと落ちていった。クソ便利な魔法も使えるじゃねーか。


 視線を下げてフレイアを見た。よくよく考えれば、俺がフレイアの死に顔を見たことは一度もなかった。フレイアが死んでしまえば過去に跳躍できないからだろうな。

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