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それでも俺は異世界転生を繰り返す  作者: 絢野悠
〈actuality point 7〉True meaning
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四話

 つまり、そういうことだろう。


「そこまでしてこの世界を変えたいのか」

「変えなくても、結局同じだとすればどうだ」

「意味がわからないんだが。なにが同じだってんだ」

「この世界を変えなくても、この世界は近いうちに滅びる運命にある。ウイルスによって大地が侵されたあの日から、地球は少しずつ衰退していった」


 クラウダは窓の外、遠くを見た。


「あのウイルスは人をモンスターに変えるだけではない。ウイルスに適応できた者はモンスターに変わることなく、別の力を得ることになった。それが魔法とスキルだった。モンスターとしての力を得るか、人としての力を得るかのどちらかだった。人類はモンスターを隔離するために地下に穴を空けた。魔法で封をし、ダンジョンを設けてモンスターのレベルごとにダンジョンへと転送する装置を作った。最近は高レベルのモンスターが低レベルのダンジョンに出現し始めたこともあり、その装置が壊れかけているということもわかった。モンスターの動きも活発化し始めた。この世界はもう限界なんだよ。ウイルスが蔓延しパンデミックが起きなければ、一億年後のこの世界はもっと豊かでいられるはずなのだ」


 ミカド製薬がウイルスを完成させ、それをばら撒き、世界を一気に塗り替えた。俺はそれを阻止するために現在と未来を行き来させられてたってわけか。


「でもそうなったらアンタらはどうなるんだよ。この未来が消えるってことはアンタらだっていなくなるのと一緒じゃないのか」

「だからこそデミウルゴスは止めたがってるんだ。私たちは自分が消えてもなお、正しい世界を望んでいる。つまりはデミウルゴスが世界存続派、魔女派が世界再生派というわけだ。そしてこれから、世界存続派に政府が加わることになるだろう。隠蔽ももう限界だ。戦争が起きるのも時間の問題だろう」

「時間の問題ってことは、俺が行き来するだけの時間も減ってきてるってことで間違いないんだよな?」

「そうだ。余裕がなく、すぐにでもミカド製薬をどうにかしなければいけない」

「言ってくれるけど、俺はその件に納得したわけじゃないからな。俺を騙して、その上言うことを聞けなんて傲慢もいいところだ」


 そうだ。俺がコイツらの言うことを利く理由なんてない。ここが未来だなんていう証拠もないんだしな。


「わかっていないのはお前の方だな。今まで散々体験してきただろう。この未来はお前たちの世界、つまり過去にウイルスをばら撒かれるから存在するのだ。私たちの言うことを利くということは、自分たちの世界を救うということになるんだ。自分たちの世界を守ろうとは思わないのか?」

「脅しか?」

「脅してなどいない。助けようとは思わないのか。お前の両親を、妹を、幼馴染を、友人を。お前にしかできないことなんだぞ」


 俺が世界を救う。でもそうすることで失われる命もある。


「お前の考えは理解できる。しかし、この未来こそが間違いであると考えたらどうだ」

「ウイルスがばら撒かれる未来を間違いで、そこから来る未来もまた間違いってわけか」

「そう考えれば気は楽だろう。やってもらえるな?」

「でも本来俺が死ぬはずだったのはあの自転車事故だと思う。そこから俺は生き残ってるのに、どうして未来が微塵も変わらないんだ? バタフライ・エフェクトって小さな出来事でも未来には大きく影響するっていうことじゃないのか?」

「SFでいうところのバタフライ・エフェクトか。確かにそういった出来事は存在するが、未来が変わっていないということは、そのバタフライ・エフェクトがどこかしらで消されたということになる。小さな変化は大きな変化に抗えない。飲み込まれ、消えていってしまう。一億年の間にお前が生き、ミカド製薬といざこざを起こしたことさえも無に帰る。ウイルスのパンデミックはそれほど大きな事象ということだ」

「俺が生きているってことだけじゃ意味がないっつーことかよ」

「例えばそうだな……お前が生き延びて子供を作ったとしよう、それはバタフライ・エフェクトが成功しているということになる」

「成功ってどういうことだよ」

「まあ聞け。じゃあもしもその子供が子供を生んで、でもその後で子孫が死んでお前の遺伝子が途絶えたとしよう。二百年後でも三百年後でもいい。そうした場合、四百年後にはお前の遺伝子は残っていない。お前が車に轢かれて死んでいようが、お前の孫が死んでいようが、結果的にはお前の遺伝子が未来に存在していないのであれば同じことだ。お前は日本人だったな?」

「ああ、そうだけど」

「アニメやゲームも好きだったという情報もある」

「それも合ってる」

「ならシュレディンガーの猫も知っているだろう。あの話は日本人は好きだったな。それと一緒だ。箱の中で死んでいるのか、それとも生きているのか。観測者次第で結果が分かれる。箱を開けるという観測者の行為が全てを決める。この場合、お前がどこで死んだところで、四百年後の観測者としては「イツキはの遺伝子は途絶えている」という結果にしかならないわけだ」

「じゃあ俺が生きてたって意味ねーじゃねーか」

「このままでは「お前が生存している」ことに関してはなんの意味もない。世界も救われない。が、お前は未来と過去を往復していろんな物を得ただろう? それらがあれば世界を変える可能性が飛躍的に上がる。この場合、お前のレベルが上がることで生存率が上がりウイルスを根絶する可能性が上がるということだ」

「俺が生きている、という事実には意味がない。でも生きている間にパンデミックを食い止めれば――」

「そうだ、未来は変わる」


 俺が一億年後の未来にバタフライ・エフェクトを起こすにはミカド製薬をなんとかしなきゃいけないってことか。


「全部うまくいった後、俺はその後も人間とは別の存在のままなのか? 俺はウイルスに適応したってことになってるんだよな?」

「そのへんはなんとかしよう」

「なんとかってそんな言葉で納得できるわけないだろ……」

「なんとかすると言ったらなんとかする。魔法もスキルもモンスターも見てきただろう。それならばなんとかできるとは思わないか」

「まあ確かにそうだけど……」


 なんとかしてくれるんだろうなとは思う。だがその方法がわからない。


「こちらの事情はすべて説明した。理解できたか」

「理解はできた。でも、ムカついてることには変わりない」

「だろうな。だからお前の言うことは基本的には受け止めるつもりだ。特別待遇、というやつだな」

「それで納得できるほど大人じゃないけどな」

「そうかもしれないが、今はそんなことを言っていられない。下の方ではデミウルゴスとの戦闘が始まっているみたいだからな」


 こうしている間にも魔女派とデミウルゴスの戦闘は続いている。


 一般人は世界の真理を知る者たちの身勝手のために戦わされていると考えれば胸が痛くなる。

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