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それでも俺は異世界転生を繰り返す  作者: 絢野悠
〈actuality point 7〉True meaning
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二話

 クラウダは俺の背中側に向かって人差し指をクイクイっとやって誰かを呼び寄せた。足音が近付いてきて、俺の横を通り過ぎた。


 そしてクラウダの横にクラリッサが立った。


「本当であれば、もう少しだけ先延ばしにするはずだった」

「どのあたりまでだ?」

「もう少し、もう少しだ。デミウルゴスの正体を掴んで、どうしてこうなってしまったのかをしっかりと解明してから、納得した上でお前に明かすつもりだった」

「でもそれができなかった」

「未来視の能力者が死に、私たちは自分の手で救世主を導かなければならなくなった。未来視の能力者だけではない。ライセンスの記述を書き換えた能力者もそう、誰かの能力を知る能力者もそう。私は長く行き過ぎた。けれど、生きるしかなかった。お前を、救世主をこの場に呼ぶためにな」

「俺が救世主?」


 しかし、特に驚きはしなかった。このクラウダという女性が嘘をついていないと思えるのだ。どうしてかまではわからない。


「私が犯罪者でその片棒を担がせようってわけじゃない。どうやって証明すればいいかわからないが、こればかりは信じてくれと言うしかない」

「それはまあいい。で、なんで俺なんだ?」

「何度でも蘇ることができるからだ。その能力さえあれば、私たちがやろうとしていることが実現する。いや、その能力なしでは実現しない。が、逆にその能力だけでは実現しないのも事実だった」

「俺以外にも誰かいるってのか? もしかして双葉じゃないだろうな」

「お前の妹ではない。そもそも、お前以外のピースは揃っていたからな。あとはお前だけだったんだ。お前をこちら側に連れてくる。それだけで良かった。未来がわからなくとも、お前たちの能力さえあれば私の宿望は果たされる」

「なんで俺だけじゃ駄目だったんだ? 俺に力がないからか?」


 俺の他にとんでもない性能を持った能力があるのか、それとも単純に俺の戦闘能力が低いからなのか。それが気になってしまった。


「お前の能力では私の元に到達することが不可能だったからだ」

「でも現にこうして目の前に立ってる」

「目の前に立っているという現実こそが、お前の能力以外が介入している証拠だとは思わないか?」

「ちょ、ちょっと待ってくれ」


 ライセンスを取り出してPスキルの欄を見た。確かに「他人に口外すること」以外は前と一緒だ。他に変化はない。


 そう、変化はないのだ。



【Pスキル:ハローワールド】

死んだ際に経験値や記憶を引き継いだままその日を繰り返す。なお身体は成長しない。



「どこにも、書いてない……」

「何がだ?」

「異世界がどうとか、そういうことが一切書いてない」


 最初は疑問に思っていた。ライセンスに書いてあることと自分の身に起きている事象にズレがあるということ。しかし俺はそれを無視したのだ。「こういう世界なのだからなにがあっても不思議ではない」と勝手に決めつけた。俺から見てこの世界はファンタジーなのかもしれない。だから、俺は物事の接合性を無視し続けた。


 無視、し続けたのだ。


「ようやく向き合ったみたいだな」


 と、クラウダは薄く笑った。


「なんでここを書き換えなかったんだ」

「気づくかと、淡い期待を抱いていた。別に気づかなくてもよかったが、気づかないでいてくれた方がやりやすかったからな、その指標にしたかった」

「じゃあもしかして、俺は本当に同じ日を繰り返すしか能がないのか?」

「繰り返せるだけ奇天烈だぞ。だがお前が言うように、お前は死んだ直後に能力を発動させ、睡眠をターニングポイントにして復活する。つまり、時空や次元などを超えることなどできはしない」

「じゃあどうして俺はここにいるんだ? 誰が、なにをしたんだ?」

「その答えが私の隣にある」


 クラウダがチラリと横に視線を向けた。その先にはフレイアがいた。


「フレイアが鍵なのか?」

「フレイア、ライセンスを見せてやれ」


 ライセンスを操作しながらフレイアがこちらに歩み寄ってきた。差し出されたライセンスを受け取り、表示されている内容を読んだ。



【Aスキル:タイムアウト】

自分の命を引き換えにして次元を跳躍する。



「お前のAスキルも書き換えてあったのか……」

「まあ、そういうこと」


 フレイアの笑顔がどことなくぎこちなかった。しかし不自然ではない。むしろこちらの方が自然なくらいだ。


「でも跳躍ってどういうことだよ」

「そこからが本題だ。今まで様々な疑問が湧いて、そして解消された部分もあるな。お前はここを、この世界をどう思う?」

「質問の意図がわからないが良い世界だとは思う」

「ファンタジーが好きか?」


 この質問に関しては意図がどうとかではなく、その言い方そのものに違和感があった。この人の口から放たれる言葉としてはどこか不自然で、なにか引っかかるところがあったのだ。

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