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それでも俺は異世界転生を繰り返す  作者: 絢野悠
〈expiry point 6〉 Pleasure seeker
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五話

 そういえばスキルの内容なんかを最近確認していなかったな。


 自分のスキルを確認するためにハローワールドの詳細をタップした。



〈ハローワールド〉

死んだ際に経験値や記憶を引き継いだままその日を繰り返す。なお身体は成長しない。



 俺のPスキルの内容は変わっていない。だが物凄い違和感がある。


「セカンドワードがない……?」


 最初にフレイアと出会ったときにはセカンドワードという追加効果があったはずだ。



〈ハローワールドの詳細を本人から伝えられるのは一人だけ。もしも他の人間に伝えようとした場合は、伝えられた人間が死亡する〉



 その文面がなかったのだ。


 なにが起きているのかまったくわからなかった。


 どこをタップしてもセカンドワードは出てこない。これが事実であるなら、この能力を誰か告げたとしても人が死ぬことはない。


「いや違う。そもそもセカンドワードが本当にあったのならそれ自体が矛盾するんじゃないか?」


 そうだ。俺の能力は「死んでもやり直せる能力」なんだ。ハローワールドの能力を他人に伝えたところで、俺が死んでやり直せば関係なくなる。つまりデメリットにはなりえない。なによりもどうして一人だけならば伝えていいのかも疑問だ。


 でも最初は書かれていたはずのセカンドワードがなくなった理由がわからない。逆を言えばそれが書かれていた理由もわからないのだ。


 ライセンスに文章を追加する、なんていう能力があるかどうかまではわからないがあの世界ならあってもおかしくはない。ではどうしてその能力を使用したのか。答えは簡単だ。ハローワールドの特性を誰にも知られたくなかったからだ。じゃあ知られたくない人間は誰だ。


「デミウルゴスか、魔女か」


 デミウルゴスはたぶん違う。正確には今まで俺の前に現れたヤツらは知らなかったはずだ。知っていたら俺のことを真っ先に確保しにくるはずだ。


 そう言えば俺を捕まえようとしてたやつもいた気がする。となればやはり、デミウルゴスの上にいる連中は知っていた可能性は高い。それでも俺のライセンスに細工をする理由はない。


 答えは一つしかない。


「魔女クラウダはなにかを隠している」


 結論は出た。


 現実世界に来る前もそうだ。俺はクラウダを問い詰めようとした。アイツはなにかを知っているし、それを俺に隠している。俺だけなのか、それとも他の連中にも隠しているのかまではわからない。さすがにそこまでの答えが出せるほど情報は持っていない。


 次に異世界に行ったときは問い詰める。そのためには材料が必要だ。クラウダを追い詰めるための情報が。


 しかし隠してるとしたら隠す必要がどこにあるというんだ。俺には知らせたくないことで、かつ魔女に有益なことだ。それには俺が魔女にとって必要であることが前提になる。もしも俺という存在が不必要ならば、わざわざ魔女の総本山に連れていく意味がない。


 ちょっと待てよ。俺のライセンスに細工をしたのが魔女だったとしたら、俺がエルトードに行くことは偶然じゃなくなるじゃないか。〈蒼天の暁〉が俺をエルトードまで連れてきた。魔女が俺のことを操ろうとしてるなら〈蒼天の暁〉が俺に接触してきたのも偶然じゃない。となれば〈蒼天の暁〉とは一体なんなのか。


「ただのギルド、冒険者たちの集団ではない」


 異世界での権威である魔女。そしてその犬であるギルド。きっとなにかある。それはわかっているが、なぜ俺なのか不明だ。


 ハローワールドの能力を知り、それを使ってなにかをしようとしている。そこまではなんとなくわかるが、それ以上のことはわからない。


 わからない、なにもかも。


 魔女の画策によって蒼天の暁が動いているなら、間違いなくフレイアも俺のことを知っていたはずだ。


 そんなことを言い始めたら俺はなにを信じればいいんだ。あの笑顔も、あのぬくもりも、励ましの言葉も、なにもかも嘘になってしまう。


 けれど俺にはそれを問い詰める勇気なんてない。フレイアがそれを認めてしまったら俺は彼女を軽蔑せざるを得ないからだ。そうなったらもう二度と同じ関係には戻れないと思う。俺もフレイアも、お互いに歩み寄ることはできなくなると思う。


 でも確定ではない。魔女のことも蒼天の暁のこともフレイアのことも、すべて、まだ確証に至っていない。今確実なのはデミウルゴスが俺の能力のことを知っているということ。そしてクラウダが俺に対してなにかを隠していること。この二点だ。


 そこで、ドアが開く音がした。双葉とフレイアの喋っている声がした。二人同時に帰ってきたのだ。


 強く、両手で頬を叩いた。


 悟られるな。双葉にもフレイアにも、そして優帆にも。この胸のうちを悟られてはいけないんだ。


「なんで優帆のことなんか。バカらし」


 妙なところで鋭いから、俺が悩んでればまたちょっかいをかけてきそうだ。


 そう考えると優帆は俺が悩んでいる時に限って自分から声を掛けてくることが多いような気がする。あれが狙ってやっているのだとしたら、アイツは俺のことを相当見てるんだろうな。


「んなことあってたまるか」


 勢いよく立ち上がり一階に向かうことにした。なんとか気持ちをリセットしていこう。異世界でやることもそれなりに多いかもしれないが、それ以上に現実世界でやることの方が多いのだ。


 ミカド製薬がウイルスを製造しているのであればそれを止めなければいけない。なぜウイルスを作っているのかも突き止めたいし、もしも散布されるようなことがあれば阻止する必要も出てくる。


 今はこちらの世界でできることを考えよう。異世界のことは、異世界に戻ってから考えても遅くないはずだ。

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