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それでも俺は異世界転生を繰り返す  作者: 絢野悠
〈actuality point 6〉 Feelings falling
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三話

 フレイアに案内されて城の中へと足を踏み入れた。メイド、執事、兵士とさまざまな人間が城の中を行き交っていた。


「ここ、本当に魔女家なのか?」

「まあ魔女っていえば王様と同じくらいの権力があるから。それに魔女は人々を守る義務があるし、民衆からの支持も厚いから」

「いよいよ俺の中にある魔女の概念から完全にかけ離れたな」


 この世界では強い魔法が使える女が魔女であり、悪いことをしたり誰かをたぶらかしたりするのはただの悪女なんだろう。


 城の中は巨大なステンドグラスが並ぶ窓があったり、通路なのに大きなシャンデリアがぶら下がっていたりと完全に外とは別世界だ。


 階段を登って、登って、登って、一応ニ階や三階などはあるらしいのだが、直接魔女の部屋に向かう階段を登って五階にやってきた。


 部屋の前には特徴的な白い衣装を来た女性が立っていた。メイド服ではなく、白い修道服という方が合っている。


「お久しぶりですフレイア様」

「久しぶりアニス。クラウダはどうしてる?」

「起きておいでですよ。こちらへどうぞ」


 アニスと呼ばれた女性がドアを開けてくれた。


 通された部屋は広く、中央にはこれまた大きなベッドが置かれ、上には一人の老婆が寝ていた。上半身はやや斜めになっており、座っているようでもあり寝ているようにも見える。


 フレイアが言うように顔はしわしわで、手にはあまり力が入らないのか、白い修道服を来た女性に水を飲ませてもらっているところだった。


「来たか、フレイア」

「久しぶり、クラウダ」


 迷うことなく歩み寄り、フレイアはベッドの横に立った。あっけにとられて立ちすくんでいた俺たちだったが、フレイアに手招きされてベッドの横へ。


「お前たちか、蒼天の暁に入りたちという者たちは」


 ゆっくりと動いた唇から、しゃがれた声が聞こえてきた。苦しそうには見えないが、これが精一杯だとすれば先はもう長くないかもしれない。


「そうだ。行く宛もないから、入れてもらえるとありがたい」

「そう、か」


 クラウダは浅いため息をつき「問題ない」と言った。つぶやきのような小さな声だった。


「いいのか?」

「ああ、大丈夫だ。ただし、他の兵のようにちゃんと訓練しろ。そこで基礎体力、基本戦術を身に着けてからだ。衣食住は保証しよう。ここで暮らし、ここで生きるといい」

「あ、ありがとう」


 なんだろう、このもやもやした気持ちは。感謝することはあっても、こんな気持ちになるだなんて相手に失礼じゃないか。でも、クラウダに言われたことで俺は余計に迷ってしまったんだ。


 この世界で生きるのか、現実世界で生きるのか。


「フレイア、申し訳ないのだが今日はクラウダ様の調子がよくない。話はここで切り上げ、彼らを部屋に案内してやってくれ」


 クラウダに水を飲ませていた女性が言った。


「わかったよノーラ。それじゃあ行こうか。もう部屋は用意してあるんだ」

「展開早いな」

「イツキたちの話は前にしておいたから、お伺いをたてる前にこうなることは決まってたってこと」


 俺たちはクラウダの部屋をあとにし、自分たちの部屋をあてがってもらった。


 一人一室であり、現実世界での自室の二倍以上ある。こんな部屋をもらって本当にいいのだろうか。


 この部屋に来る前に、食堂や風呂場なども案内してもらった。食堂は各自好きな時間に行っていいらしい。食堂には常にシェフがいるようで、どの時間に行っても食事を提供してくれるとのことだった。


 防具を脱いでベッドに寝そべった。ふかふかで気持ちがいい。そのへんの安宿とは雲泥の差だ。


 最初はこの世界で生きていくための手段として、蒼天の暁に入ろうと思っていた。しかし、俺は現実世界へと戻ることができるのだ。ならばこの世界で生きなくてもいいのだ。


 それでも、この世界も悪くないんだ。現実世界よりも自由で、魔獣を倒したり依頼を達成すればお金は手に入る。魔女派にいれば衣食住は心配ない。勉強も進学も、就職活動も必要ない。


 そしてこの世界にはフレイアがいる。


 胸がチクリと痛んだ。


 目蓋を閉じればフレイアの顔があった。短い間だが彼女には世話になったし、いろんな顔も見てきた。過去のことなんかはよく聞いてないが、そんなことはどうでもいいとさえ思ってる。


 そういえば、俺はフレイアの過去のことをほとんど知らない。フレイアは現実世界で俺の家に泊まってるんだし、俺のことはよくわかっているはずだ。


 じゃあ俺はどうなんだ。フレイアに好意を抱いているくせに、彼女のことをなにも知らないじゃないか。


 俺はなんで彼女に惹かれたたんだ。彼女のどこが魅力的だったんだ。顔か、身体か、性格か。好きになる理由なんて正直なんでもいいんだ。いいはずなのに、どこか引っかかるんだ。


 そうしているうちに、眠気の沼が俺の身体を包み込んでいった。食事もまだだし風呂にも入りたい。しかし昨日もあまり眠れていないことが重荷になって、どんどんと沼に沈んでいってしまうんだ。


 食事も風呂も、フレイアのこともまたあとでいい。今は少しだけ眠ろう。そしてさっぱりとした頭で、あとで考えよう。

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