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それでも俺は異世界転生を繰り返す  作者: 絢野悠
〈actuality point 6〉 Feelings falling
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二話

 朝を迎えても雨は止まなかった。ここまでは前回と一緒だ。


 四人で話をして、昨日メリルが言っていた案を採用することにした。


 風を作るのはフレイア、操作するのはメリル、外敵からの対処は俺と双葉で担当することになった。


 このまま小屋の中にいることもできる。水ならば魔法でなんとかなるかもしれないが食料はどうにもならない。このまま体力を消費するよりは、動けるうちに切り抜けてしまおうという前回と同じ思考の元でこうなった。


「いい? 身体強化は絶対に解かず常に全力疾走でいくよ」

「わかってる。的にならないようにだな」

「そういうこと。じゃあ、いくよ!」


 フレイアがドアを解き放つ。そして一瞬で風を形成。メリルがそれを見て渦を作り出した。


 俺たちは小屋を飛び出して森の中を駆けていった。先頭からメリル、フレイア、双葉、俺の順だ。


 前回は双葉が何回も転んでしまったが、どうやら今回はそんなことはなさそうだ。というかそもそも双葉は特に鈍くさいというわけではない。特別運動が得意というわけではないが、俺の目から見ても平均よりは運動ができるはずだ。


 ではなぜ双葉は「二度も」転んだのか。


 いや杞憂だろう。今回はもたついた様子もないし、前回は具合いでも悪かったと考えれば合点がいく。逆にそうでないとすれば別の要因があるということになる。


 首を振って考えを取り払う。ようは双葉が転んだりしなければいいだけだ。もしもなにかあれば俺が最後尾で双葉を支えればいいだけのことだ。


 思ったよりも順調に進んでいたが、ここで予想外のことがおきた。


「雨が、上がった……?」


 確かに前回よりも長く走った。けれど敵がなにもしてこないまま雨が上がったのだ。


 風の渦が解除された。しかし、これはいったいどういうことだ。


「どうしたんですかイツキさん、そんな怖い顔して」

「ああ、メリルか。ちょっと気になることがあってな。それ以上に、俺はこの未来を見ていない。だから今後どうなるかがわからないんだ」

「未来予知も万能ではないんですね……」

「未来予知が完璧ならピンチなんて一つもないだろ?」

「確かにそうですね」


 メリルは「ふふっ」と柔らかく微笑んだ。


「どうするイツキ。このまま進む?」

「行くしかないだろ。不安要素は消えたんだから、行かない理由がない」


 フレイアも双葉もなにも言わなかった。だが二人のあの目は俺を心配している目だ。


「大丈夫だ、行こう。エルドートはどっちだ?」

「……あっちだ」


 フレイアが先頭に立ち、俺達はエルドートへと向かうことになった。


「ここからどれくらいあるのかわかるか?」

「さすがに正確な距離はわからない。森に入ってすぐに雨が降って小屋に入ったから、たぶんあと五キロくらいじゃないか?」

「結構あるな」

「広いから仕方ない。それに森が広くないと、デミウルゴスのような敵が現れたときに障害物として機能しないから」

「確かにそうだが――」


 前方に人影があった。この場で喜んで手を振れたらよかったのだが、どうやらそうもいかないらしい。


「また会ったね、イツキ」

「久しぶりだな、ルイ」


 そう、双葉を氷漬けにした男だった。両脇に立っている男たちはルイの部下かなにかだろう。前会った時と変わらない、ニヤニヤと軽薄な笑みを浮かべていた。


「ホント奇遇だよね。こんなところで会うなんて」

「奇遇って感じには見えないけどな。エルドートは魔女がいる町だぞ。お前らデミウルゴスとは犬猿の仲じゃないのかよ」

「さあ、どうだろうね。ただ一つ言うことがあるとすれば、今日は別になにかをしに来たわけじゃないってことさ」

「そんなわけないだろ。ここまで来といてなにもしないって? デミウルゴスらしくないんじゃねーか?」

「本当のことだよ、安心してもらっていい。今は、の話だけどね」


 ルイは手を上げて「じゃあね」と姿を消してしまった。なんなんだアイツは。双葉もいるし、戦闘にならなかっただけありがたいのだが、なにもしなかったという部分が気になって仕方がない。


「とりあえず行こう。考えても始まらないし」

「そうだな。注意しながら進もう」


 ルイと出会ったことで考えることもあるし、余計に警戒しなければいけないのは事実だ。でもエルドートが近いというのも事実である。


 その後も特に変わった様子はなかった。時間はかかったが、ちゃんとエルドートに到着した。


 壁は高く、メイクールと似たような造りなんだろうと想像に難しくない。


「想像よりも早く着いてしまった」


 なにもないのはいいことだと理解している。しかしここまでなにもないのは逆に不安になってしまう。


「ここまで来れば一安心だな。このまま魔女のところに案内するよ」


 門番に話をして巨大な門を開けてもらった。


 町自体は他の町と大差ない。特別裕福というわけでもないみたいだ。活気はあるし、行商人の行き来もある。


 しかし、町の中心にはここからでも見えるほどに大きな城が建っていた。


「もしかしてあそこに魔女がいるのか?」

「そういうこと。また歩くことにはなると思うけど」

「まあ、それは仕方ないだろうな」


 正直なところを言えば休みたいところだが、できるだけ早く魔女に会った方がいいような気がする。デミウルゴスがあの森の中にいたということはいつ襲われてもおかしくないのだ。


「そういえば今までなんとなく訊いてなかったんだけど魔女にも名前あるよな?」

「言ってなかったっけ? クラウダ=ラシュフォードだ。西の魔女、プレセンテマタールとも呼ばれる」

「やっぱすごいんだよな?」

「魔法に関して言えば、東西南北の魔女に勝る者はいないって言われてるくらいだからね。たださ、もうかなり長生きしてるからさすがに体の方が自由にいかないって言ってた」

「長生きってどれくらい? 千年とか二千年とか?」

「正確には私も知らないけど一億だとかなんとか」

「一億!?」


 さすがに長生きすぎて引くんだけど。


「すごい魔力を持ってるからこそその魔力で永らえてきたみたいだ。でも一年くらい前からかな、人前に姿を見せなくなった。元々しわしわのおばあちゃんだったし、仕方がないのかなとは思うけど」

「じゃあもしかするとそろそろヤバかったりすんのか?」

「その可能性も充分ある。今は魔女派の信者が看病してるはずだけど、いつ死んでもおかしくないな」

「クラウダが死んだらどうなるんだ? 次の魔女候補はいるのか?」

「誰がなるのかまでは知らないけど、本人はもう決めてるんじゃないかな。たぶんそれは、その時が来ないとわからないと思う」

「それなら余計に早く会っといた方がいいな」


 町の中を進んで城の前へ。やはりデカイ。王様でも住んでるんじゃないかと思うくらいのお大きさだ。当然門番もいるし、兵士らしき人たちが訓練している声が聞こえる。ここは本当に王様の城なんじゃないだろうか。

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