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それでも俺は異世界転生を繰り返す  作者: 絢野悠
〈expiry point 5〉Secretive behavior
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十四話

 あの事件の関係者、主に加害者側の大半は停学処分になった。中でも不良と呼ばれる連中には退学になったやつもいたようだ。玲音は停学で済んだようだが、朝すれ違った際にめちゃくちゃ睨まれた。これに懲りて大人しくなってくれると嬉しいのだが。


 停学になったヤツがどうして停学になったのかは学校中に広まった。しかし双葉や俺の名前が出てくることはなかった狭いコミュニティで起こったことだから当然のことではあるが、名前が出なくてホッとしている。俺はいいとしても、双葉や優帆の名前は出てほしくない。


 学校生活もいつもどおりに戻っていくことだろう。優帆への告白も、俺への告白も、そういったことを忘れられるはずだ。


 放課後になり、俺は教室の掃除を済ませた。たしか今日は優帆がゲームをしにうちに来ることになっていたはずだ。一緒に帰りたいとも言っていたから、きっと下駄箱で待ってることだろう。


 けれど、優帆は下駄箱にいなかった。靴はない。アイツはあんな性格ではあるが、約束を破るようなことは絶対にしない。イヤイヤであっても連絡の一つは入れるはずだ。


 嫌な予感がする。


 その時、スマートフォンが鳴った。電話だ。


 画面にはたっつんと表示されている。


「おう、どうした」


 受話器の向こうからは荒い息が聞こえてきた。


「なんだよ、ランニング中か?」

『――れた』

「ん?」

『優帆ちゃんが、攫われた』


 今、たっつんはなんと言ったのか。


「よく聞こえなかったんだけど」

『優帆ちゃんが攫われたんだよ。クソっ、追いかけたんだけど向こうは車だった。アイツが車の中にいたんだよ。なんつったか、あの一年の女だ』


 サーっと血の気が引いていくようだった。冷たいものが背中に押し当てられたような緊張感と、カーっと頭に血が登っていくような感覚が混在していた。


「もしかして香本さんか」

『そいつだ。あの女が指示出してたんだ。早くいかねーとどうなるかわかんねぇ』

「どこだ、どこに向かった」

『河川敷の方だ。恋情橋の方』


 本当の名前は円乗橋だが、男女の恋が実るという昔話があるので恋情橋と呼ばれている。ここからだと普通に走っても十分はかかる。


「どんな車だ」

『黒い最新型の大型ワンボックス』

「写真はあるか?」

『撮ってある』

「すぐ送ってくれ。追いかける」

『そこから追いかけてどうなるってんだ』

「やってみなきゃわからないだろ。この通話が終わったら写真送るの忘れるなよ。じゃあな」

『お前――』


 会話を強制的に終わらせた。靴を履き替えている間にたっつんから写真が送られてきた。車の車種もナンバーもバッチリ写ってる。


「ありがとうよ」


 僅かにもつれた足も気にせず、前のめりで駆け出した。考えてる暇はない。とにかく、追いかけなきゃ話にならない。なりふりかまってなんていられるもんか。


 道路に出て脚に力を込めた。身体強化は全開。極力人目に触れないようにはするがそれも限界があると思う。


「構うもんか」


 絶対に優帆を見つけてやる。助け出すんだ。アイツは、アイツは――。


「大事、なんだよ」


 恋情橋に向かって走り続ける。といっても一分程度あれば充分だ。



 走りながらナンバープレートを確認するが見つからない。

 橋に到着して辺りを見渡すと、橋の下方の河原に一台の車が止まっているのが見えた。ナンバープレートも一致している。


 一目散に駆け出して車の元へ。奥にはボロボロの建屋が見えた。農作業具を入れるような小さな小屋だ。中からはゴソゴソ、ガサガサと物音が聞こえてきた。


「優帆!」


 壊す勢いでドアを開けた。床には優帆が寝かせられていた。口にはガムテープ、手足は縛られ、男たちに組み伏せられていた。


「なんだてめぇ!」


 大きめの野暮ったい服を着た大男が襲いかかってきた。胸ぐらを掴み、そのまま外に投げ飛ばした。


「コイツ!」


 次々に男たちが襲いかかってくるが俺の敵じゃない。


「そんなんでやれると思ってんじゃねーよ!」


 俺はそう叫びながら男を殴りつけた。男が吹っ飛んで壁に穴が空いた。一応加減はしたつもりだが、わずか程度の加減ではあまり意味がないかもしれない。


 男たちを全員ぶっ飛ばしたあとで気付いたが、小屋の隅の方で香本が震えていた。友人であろう女生徒三人と身を寄せ合って、俺を見て顔を青くしていた。


「おい」


 俺が言うと「ひゃい」と、なんとも言えない返事をしてきた。


「優帆にも双葉にも二度と近づくな。いや二人だけじゃない、俺の友人たちにも、優帆の友人たちにもだ。俺に関係しそうな人間全員に近づくな。次はこれだけじゃ済まさないからな」


 香本を含めた女生徒たちは涙ながらに首を縦に振っていた。何度も、何度も、確かめるように、壊れた人形のように首を振っていた。


 優帆の手足のタイラップを無理矢理引きちぎって、口に貼られていたガムテープを剥がした。


「アンタ、今のなに?」

「いいから。あとでちゃんと説明する」


 優帆を抱き上げて小屋から出た。その際にもう一度香本たちを睨んだ。これで二度とこんなことは起こさないだろう。問題があるとすれば、俺に超人的な能力があると知れたことだろう。


 なによりも優帆にどう説明すればいいのかを考えなければいけない。どう説明すれば納得してくれるだろうか。どうやって誤魔化せばいいのだろうか。いっそこのまま、優帆も一緒に異世界に連れていってしまってはどうだろうか。いろんな考えが浮かんでは、消えていった。

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