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それでも俺は異世界転生を繰り返す  作者: 絢野悠
〈expiry point 5〉Secretive behavior
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八話

 待て待て、どうしてそうなる。なんで俺が優帆と付き合わなくちゃいかんのだ。


「今日はどうしたの? こんなところに呼び出して」

「ごめんごめん。話したいことがあってさ」

「話なら教室でも廊下でもできるでしょ?」

「そうなんだけどさ」


 優帆は腕を組み、いつもと変わらぬ様子で喋っている。逆に芳村はいつもよりも小さくなって頬なんかを掻いて恥ずかしがっている。芳村のか確実に演技だろう。


「で、肝心の話の内容は?」


 芳村が急に背筋を伸ばし、キメ顔と言わんばかりにキリッと決めてきた。


「葦原のこと、ずっといいなって思ってたんだ。優しいし可愛いし、喋ってると「もっと一緒にいたい」って思うんだ。だから俺と付き合って欲しい」


 わざとらしく制服のズボンを握りしめてやがる。細かい演技が上手すぎて脱帽である。だがなんだろう、このやり取りを見ているとなんだか胸がもやもやしてくるというか、脳が温まってくるというか、なんとも形容し難い気持ちになってくる。


「どう、かな」


 そこまで聞いた優帆が鼻でため息をついた。


「あのさ、そのセリフを一体どれだけの女の子に言ってきたの?」

「葦原だけさ。決まってるだろ」

「今まで付き合ってきた女の子は?」

「告白されたから付き合ったんだ。そういうのもダメなのか?」

「別に悪いとは言わないわよ。付き合ってみなきゃわからないこともあると思うし」


 そこを肯定するってことは、芳村とも付き合う可能性もあるのか。優帆が今考えていることがよくわかない。同時になんでかわからないが胸のもやもやが強くなっているような気がした。


「それなら――」


 芳村がなにかを言おうとした時、優帆は右手を突き出してそれを制した。


「そういう考え方があるとは思うしそういう考え方をしてもいいとは思う。でも私はそういうの無理だから」

「俺なら葦原に尽くせる。なんだって言うことを利くし、毎日好きだって言える。いつでもどこでも言える」

「そういうことじゃ、ないんだけどなあ……」


 予定調和レベルで断ったことで胸がすいた。一瞬だけ「もしかして受けるのか?」とも思ったがそんなことはなかった。そうだよな、お前はそういう女じゃない。


「じゃあどういうことなんだ?」


 芳村が身を乗り出したことで二人の距離が縮まった。おい、それ以上近づくんじゃない。


「芳村くんはさ、もしも私が転んだら助けてくれる?」

「そんなの当たり前じゃないか。手を差し出して助けるよ」


 なにを言い出すかと思えばそんなことか。誰だって女の子が転んだら助けるだろ。


「私が買い物しててさ、でも財布の中身がちょっと足りないことに気付いたとして、そうしたら芳村くんはどうする?」

「そんなの払うに決まってるじゃないか」

「ご飯は奢る?」

「もちろん」

「じゃあ……そうね、私がゲームやりたいって言ったら私が飽きるまで付き合ってくれる?」

「あ、当たり前だろ? 葦原がゲームやるイメージなかったけどいくらでも付き合うさ」

「私が新しい服着てきたら褒める?」

「さっきからなにが言いたいのかわからないけど、俺は葦原のこといつも考えてるよ。だから新しい服を着ても当然本心で褒めるし、髪を切っても心から似合ってるって言うさ。それが相手のこと想うってことだろ?」


 俺もそう思う。でも優帆は納得がいかないという顔をして、組んだ腕を解いて腰に手を当てた。


「私はさ、転んだら助けて欲しくないのよ。ただ転んだだけだし、一人で立ち上がれないほどヤワじゃないし。でも起き上がった後で心配はして欲しいのよ、虫がいい話だけど」

「それくらいなら俺も――」

「私はさ、買い物をしててお金が足りなくなったり、食事をしたときなんかに奢ってもらうのや嫌なのね。だって私の買い物だし、私が食べた食事だもの。食うものに困るほど困窮した生活をしてるわけじゃないんだからちゃんと払うわよ。だからお金が足りなかったら借りるし、食事は割り勘がいい」


 それでも言い足りないのか、優帆は一度呼吸を整えてから更に話し始めた。


「ゲームをやりたいって言い出したのは私だけどさ、ずっと付き合ってもらうっていうのはちょっと違うじゃない? 気を使ってまで一緒にゲームしたくないわけ。コイツ、実はもうやりたくないのかなとか考えるのは嫌なの。あと新しい服も切った髪も、その場ですごい褒められるのは恥ずかしいからやめて欲しい。どうやって反応していいかわからないから。でも褒められたくないわけじゃないのよ。だから食事中とか、映画が始まる直前とか、これからなにかをするっていう前に小さく褒めて欲しいのよ。そうすれば恥ずかしい反応しなくていいじゃない? 褒められるのは当然嬉しいけど、あんまり嬉しがってるところは見られたくないのよ」

「そ、そんなこと言われても困るよ」


 そりゃそうだ。理想が高いとかそういうんじゃない。つまるところ「私に合わせろ」と言ってるのと一緒だ。どれだけ自己中なんだ。


「私はね、そういう人を好きになったの。私に合わせるつもりもないのに、気がつけば歩幅が合って、男とか女とか関係なく対等な関係を築ける人。そうじゃなきゃ、私みたいな面倒な女は無理なのよ」


 優帆は「それじゃあ私は帰るから。今日のことは忘れてあげる」とこちらに歩いてくる。このままドアの隙間から覗き見しているわけにもいかなくなった。


「深山のこと言ってるのか!」


 と、芳村が叫んだ。なんでここで俺の名前が出てくるんだ。確かに優帆といる時間は長いが、男女としての関係で見れば俺の名前が出てくるのはおかしい。いやでも周りから見ればそういうふうにもみえているのか。

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