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それでも俺は異世界転生を繰り返す  作者: 絢野悠
〈expiry point 5〉Secretive behavior
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六話

 部屋に入って薬品棚へ向かう。指を使ってロックを解除しラベルを確認。終わり次第その部屋を出て次の部屋へ。結局、ティマイオスとクリティアス以外のラベルは確認できなかった。


「そっちはどうだった?」


 と俺が訊くとフレイアは小さく首を振った。


「簡単にはいかないか。それにミカド製薬の限界がここなのかもしれないしな」

「それ以上のものがまだ造れない、と」

「そういうこと。でもこの短期間に上位のウイルスを造ったってことは、近いうちにウイルスを造る技術が進化するかもしれない」

「ウイルスを選別する方法があれば、イッケイが持っていたウイルスとの比較もできるんだけどね」

「今日のところは引き上げるしかなさそうだな。ウイルスを持ち帰るわけにもいかないし」

「ミカド製薬が普通じゃない研究をしてるっていうのは確かだと思うけどね」


 一つの封筒が差し出された。


「これは?」

「中見て」


 言われた通りに封筒の中身を確認する。入っていたのは数枚の書類と数枚の写真だった。


「研究内容か?」

「たぶんね。紙で印刷しないと安心できないタイプの人がいて助かった」


 資料の内容はウイルスを摂取した人間の過程やウイルスが生存できる日数を記したものだった。


「ティマイオスウイルス。注射器による被経口摂取のみで感染。経口摂取では人の免疫に勝つことができず、どうやっても風邪の症状程度にとどまる。元々ティマイオスウイルスはヒトゲノムに影響することでしか生存できず、一度結びつけばティマイオスビーストへと変貌する。しかし変質する人体にも差があり、変貌せずに死亡するケースもいくつか見られた。ウイルスとしての耐久性を高めることが第一の課題となる。第二の課題はティマイオスウイルスへ変貌後、最長でも三日程度しか生きられないことである。個体としての耐久性、生物としての生存能力を高めることが最大の難点だろう」


 他にもいろんな数式やら記号やらが並んだ資料もあるがさすがにそれは読めない。


「クリティアスウイルス。極小範囲であるが空気感染を可能にした新型。経口摂取による感染も確認。人が元来持つ免疫にも抵抗でき、ヒトゲノムと結びつくよりも前に免疫系統を侵食する。ウイルスが空気中で生存できるのは数秒程度、霧状まで細かくしてしまうと効果がほとんど見られない。ある程度の摂取量が原則として必要と思われる。感染者は数秒、長くて一分程度でクリティアスビーストへと変貌する。クリティアスビーストとしての生存期間は長くても二ヶ月程度。最初は一週間も保たなかったクリティアスビーストだが、ウイルスとしても生物としても生存能力を高める方法が掴めつつある」


 つまりティマイオスが先発、クリティアスが後発ということになる。


 しかし、これを見る限りでは短時間でウイルスを進化させたとは思えない。クリティアスウイルスの資料を見る限りでも二ヶ月は最低でもビーストを生存させていたということだ。俺が最初に遭遇した狼男が現れた時にはすでにクリティアスウイルスの実験がある程度進められていたということになる。


「俺たちが思った以上に事態は深刻なのかもな」

「私もそう思うけど今日はこの辺で潮時かも。もしかしたらこことは別の場所に別の研究施設があるのかもしれないしさ」

「そうだな。ミカド製薬がウイルスを造り、進化させ続けているっていうのがわかっただけでも収穫だ」

「ただし、その進化は早めに止めなきゃいけない」

「できるだけ早く、どこで次のウイルスが作られてるか調査しよう」

「そっちは私の方でやっとく。一人で飛び回った方が気が楽だし」

「足手まといだって言ってるようなもんなんですけど?」

「そんなつもりはないけど似たようなものだね」

「キツイなあ……」

「言われたくなきゃ、もっと頑張ることだね」


 パンパンと背中を叩かれた。たぶん本気で励ましてくれてるんだと思うけど、心に負った傷は結構深い。


 一応周囲を確認しながら地上に戻った。警備員は今まで通り敷地内外をぐるぐると警備していた。


 身体よりも精神的に疲れてしまった俺は、家に帰ってすぐ風呂に入った。だが問題はその後だ。


「ねえ、どうして入ってきたの?」


 ちなみに俺のセリフである。


「いいじゃん。私も疲れたし、イツキがお風呂から上がってくるの待ってるの面倒くさかったんだ」


 ちなみに俺は今髪を洗ってもらっている。


「でも絶対こっち向かないでね」

「わかってる、わかってるから」


 たまーに背中にいい感触があるんだけどマジで一糸まとわぬ姿で乱入してきたんだな、とか考えてしまう。


 俺にはお風呂イベントはまだ早すぎる。風呂から出た時には半分のぼせかけてしまっていた。


 風呂から上がってベッドに倒れ込むと、同じようにフレイアもベッドに入ってきた。男が横にいて、よく秒で眠りにつけるもんだ。もう寝息をたてている。


「俺も寝るか」


 少しだけフレイアの寝顔を見てから俺も目を閉じた。最初はドキドキして眠れなかったが、疲れと慣れの相乗効果で今日はちゃんと眠れそうだ。


 目を閉じれば暗闇。全身に重力が一気にのしかかってくる。気を抜いたら、その重力は意識までも沈めていった。睡眠という心地よい沼へ、ただひたすらに沈めてくれるのだ。

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