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それでも俺は異世界転生を繰り返す  作者: 絢野悠
〈expiry point 1〉 Common Destiny
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四話

 ベッドに座り、俺のことをジト目で見つめるフレイアの姿。


「あ、ごめん。食事忘れてたわ」


 そうだ、食事を用意しておくなんて言っててなにもせずに家を飛び出したんだ。


「おなかへった」

「ホント、申し訳ない……」

「おなかへったー!」

「すまん、これから夕食だから、それが終わるまで待ってくれ。ノド乾いてないか?」

「水だけはもらった。最初はわからなかったけど、いろいろやってるうちに水の出し方はわかった。トイレもね」


 なるほど、フレイアは慎重で飲み込みが早いタイプなのか。双葉が騒いでないところを見ると家を壊したわけでもない。


「ホントにごめん」


 バッグと制服を壁に掛けてから勉強机の一番下の引き出しを開ける。そこからいくつかのお菓子を出してフレイアに投げた。


「これでも食っててくれ」


 いろんな味がついた棒状のスナック菓子が四本、中にチョコが詰まったマシュマロくらいの大きさのお菓子の箱が一つ。


 封の開け方を聞いてくるとは思ってなかった。案の定、彼女は自分で模索してちゃんと封を切った。


「うおっ、甘くておいしい」


 一口食べて、目を輝かせながらそう言った。あの世界じゃこういった加工品はないだろう。あっという間に全部食べてしまった。「もうないの?」という感じの上目遣い。可愛いんだけどあまりにもあざとい。自覚があるのかないのかわからないところが困りどころだ。


「おにーちゃーん! ご飯できたよー!」

「す、すぐ行くー!」


 あまり大声を出さない双葉が、いつもよりも大きな声を出して俺を呼んでいる。そんな普段人に見せない部分を俺に見せてくれる双葉がとても可愛い。なんて思いながら階下からの声に返答した。


「じゃあもうちょっと待っててな」

「できるだけ早くしてねー」

「はい」


 素直に従っておくしかないだろう。フレイアが腹を空かせているのは俺のせいなんだし。


 テーブルについて、双葉と向い合って「いただきます」と手を合わせた。


「お兄ちゃん、なんか疲れてるね」

「そうか? ちょっと暑さにやられてるだけさ、心配ない」

「ならいいんだけど……」

「そういう顔すんなよ、可愛い顔が台無しだ」


 俺がそう言うと、双葉は顔を真っ赤にした。


「なんでそういうこと言うかな!」

「なんで照れてんだよ、今に始まったことじゃないだろうに」

「もう! そんなことばっかり言ってるからシスコンだの変態だのって言われちゃうんだよ! 特に外で言うのはやめて!」

「怒らなくてもいいだろ……可愛いのはホントなんだから……」

「お兄ちゃんのそういうところが嫌いなの!」

「逆を言えばそういうところ以外は大好きってことだな! はー、愛されてるなー俺」

「すぐ軽口叩くんだから」

「でも怒ったところも可愛いんだよなー」

「早く食べちゃってよ! 洗い物しなきゃいけないんだから!」

「へいへい」


 双葉が言う通り、こんなんだから周りからおちょくられちゃうんだよな。兄妹そろって。


 ただ双葉がイジメに遭ったりはしてないみたいだからいいだろう。裏の顔とかはあるかもしれないけど、昔から優しい子だった。集まってくる人たちもいい人たちばかりだ。


 お兄ちゃん、立派に育ってくれて嬉しいよ。まあ双葉は俺と一緒にいたくないかもしれないけど。


 食後、双葉が洗い物を終えるまで待った。正確には風呂に入るまでだ。


 双葉が風呂に入ったのを見計らい、冷蔵庫の中の残り物をテキトーに皿に乗せた。アイツは風呂が長い。女の子ってのはそういうものかもしれないが、双葉が長風呂なのは昔からだ。単純に風呂が好きなんだろう。


 部屋に戻り、に残り物の皿と白米をちゃぶ台の上乗せた。


「お、ようやくご飯きたー」

「どうぞ」


 箸ではなくスプーンとフォークを渡した。飲み込みが早いフレイアでもさすがに箸は難しいだろうし。


 静かに食べ始めたフレイア。お菓子を与えた時も思ったが、腹が減ってたはずなのに食べ方が綺麗だ。焦ることもなく、モクモクと食事を口に運ぶ。静かなのに早い。でも咀嚼はしっかりしてる。


「私の顔になにかついてる?」

「え、あ、いやなんでもないよ」

「そう? ならいいや」


 そしてまた食事に戻った。


 ポケットからスマフォを取り出す。時刻は八時前。そろそろ動き出した方がいいかもしれない。


 動き出すと言ってもなにをすればいいかは考えていない。が、実は学校でいろいろ試してみたことがある。


 キャスターライセンスの機能はこの世界でも通用する。当然のようにスキルやレベルも適応される。体育では力を抑えなきゃクラスメイトと同じ動きができないくらいだった。帰る前にいろんな部活を見て動きを真似てみたが問題なかった。


「なあフレイア」

「ん?」

「これから俺と出かけないか」

「どこ行くの?」


 彼女はスプーンとフォークを置いた。食事をすべて平らげたようだ。


「学校だ。俺のハローワールドは死ぬことでその日をループできる。で、俺は本来いるはずのこの世界で死んで、お前がいたあっちの世界へ行った。俺はお前に助けられて、でもメイクールで殺された。そしたら今度は、あっちの世界じゃなくて本来の世界に戻ってた。つまり、俺はこのままだとまた死ぬことになるだろう。どうやってお前がこっちに来たのかはわからないし、向こうの世界に戻してやりたいって気持ちもある。でも、俺が死んだ理由というか、死ぬ前にマズイことになっていたのは確かなんだ」

「そのマズイことを解消したい、と」

「そういうこと。お前には悪いとは思うけど――」

「いいよ、問題ない」


 俺の言葉を遮った。彼女の顔に迷いなんかなかった。


「ありがたい。鎧は邪魔だから俺の服を来てくれ。靴も新しいのがあったと思う」


 クローゼットの下から新しい靴を出してフレイアに履かせた。当然、服も靴下も貸した。


 青いハーフパンツと白いティーシャツ。下着だけはどこかで買うしかない。


 俺はジャージに着替え、玄関から運動靴を持ってきた。


 窓をから身を乗り出して、近くに人がいないことを確認。


「行くぞ」


 地面に着地、足は痛くない


 俺の横にフレイアが着地。こちらも大丈夫そうだ。


 自転車を使わなくてもいいだろう。徒歩十五分なら走って十分。今の状態なら五分もいらないかもしれない。

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