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それでも俺は異世界転生を繰り返す  作者: 絢野悠
〈actuality point 5-2〉 truth obligation
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五話

 エドガーは汚らしい笑顔を浮かべたまま、突っ込んでくるアルを上から押し付けようとした。アルはサイドステップでそれを躱しながら鎌の先で腕を切りつける。


「きかねーんだよ!」


 振り下ろされたはずの腕が急に進行方向を変えた。急いで鎌の柄で防御するが、あまりの力に宙を舞い、壁に背中を打ち付けてしまった。


 身体は痛い、だが怯むなと自分を叱咤する。


 地面に着地し、またすぐに向かっていく。先程の攻撃でよくわかった。力はどうやっても及ばないが、間違いなく素早さだけならばこちらが上だ。一撃もらってしまったのは不意打ちのようなもので、一発目を避けられたということは見てから避けられるということだ。


 だから大丈夫だ。


「いくぞでくのぼう!」


 魔力を全開にして突進、腿を一度切りつけ、ターンして反対側の腿も切りつけた。


「やるじゃねーかよ!」


 そんなことを言ってはいるが、素早く動き回るアルを捕まえられずにいた。


 アルが部屋中を動き周り、エドガーがそれを追いかける。そしてその後からリアが銃弾を打ち込んだ。


 が、リアが放った銃弾はことごとく外れる。エドガーのスピードはアルには劣るものの、それでも常人のそれではない。素早いアルを追いかけているのだ、そう簡単には当たらない。


「そっちのガキは銃を捨てた方がいいんじゃねーのか? それとも先にやられてーのか?」


 エドガーが踵を返してリアの方へと方向転換した。エドガーから逃げるようにして駆けずり回っていたため反応が遅れてしまう。


「リア!」

「心配ありませんよ」


 エドガーの太い腕が上から下へ振り下ろされる。だがリアもアルと同じく、力はないが俊敏であった。バックステップで距離を取りながら銃口をエドガーに向けた。


「これで終わり」

「さあどうかな?」


 迷うことなく引き金を引いていた。アルから見ても非常に冷静で、双眸は確実にエドガーを捉えていた。


 放たれた弾丸は額に直撃。普通の弾丸ではなく魔法によって強化されたものだ。弾かれることもないだろう。そう思っていた。しかしエドガーの身体は弾丸を弾いた。


 リアは両目を大きく見開き、それでも瞬時に判断して左へとステップしていた。


「逃がすかよ!」


 リアの表情を見逃さず、行動に対しても機敏に対応されてしまった。右足を強く捕まれ、気がつけば宙吊りになっていた。


「その汚らしい手を離せ!」


 右足を狙って大きく鎌を振り抜いた。つもりだった。


「きかねえなあ」


 鎌は薄皮一枚切り裂いてそこで止まっていた。鋼のように硬く、けれど人間の肉体であるのを象徴するかのように血が滲んできていた。


 エドガーがこちらへと振り向く。口端が異様なほどに釣り上がった笑み。恐怖で足がすくみそうになった。


「化物……!」

「そんなちゃちな刃物がきくわけねーだろ」


 リアの身体を目一杯壁に向かって放り投げた。壁にぶつかった瞬間に骨が折れる音と「かはっ」っというなんとも言えないうめき声が聞こえた。


 このままでは二人共やられてしまう。最悪でもどちらか一人が生き残ればまだ先はある。


 けれどここで尻込みできるほど、姉妹たちに愛情がないわけがない。次女リュメイラも、三女のシンドリアも、アルセイナにとっては妹で、かけがえのない家族なのだ。


 一度距離を離し、地面に鎌の刃を刺した。


「武器、捨てちまっていいのかな? 姉妹はあんな感じだからもう動かねーぞ?」

「そもそも、私たちがなんの策もなしにこんなところに来ると思ってるの?」

「はー、なるほど。俺を殺すための策を考えてきたわけだ。それでこれか。大したガキじゃねーか。いたぶり甲斐があるってもんだぜ」

「残念だけどそれは無理だ」


 そう言って、右手を突き出す。


「これで終わりよ!」


 アルが鎌に魔力を込めると、地面が赤く光りだした。瞬く間に魔法陣が形成されていく。


「これが策か。どうなるか見ものだな」

「言ってなさいよ」


 ニヤニヤ笑うエドガーに向かって舌打ちを一つ。けれどその態度もこれまでだと、更に魔力を強めていった。


「お、なんだこりゃ。身体が重くなってきやがった。重力か、それも上級魔法だな。お前らが使えるような代物じゃねーな」


 エドガーが両膝をつく。勝った。まだ身動きを取れなくさせた程度だが、このままならばエドガーも抵抗できないはずだ。


 急いでリアに駆け寄り肩を貸した。


「大丈夫?」

「大丈夫に、見えますか?」

「いや、重症だな。やれるか?」

「左腕が折れただけです。さあ、決着をつけましょう」


 自分自身をヒーリングで回復したリア。左腕が完治したわけではないが、動かせるくらいまでには回復した。


「部屋を駆けずり回って魔法陣を描いたか。古典的な手だな。銃の方になにかしかけてあるかと思ったがそれはブラフだったってわけだ」

「それがわかったからってなにかできるわけじゃない。お前の命は私たちが握ってるんだから」


 今度は両手をつき、なんとか四つん這いの状態を保っている状態だった。


「お前はまだわかってねーんだ。なーんもな」


 ミシリ、ミシリと音がした。その音がどこからきているのか、わからないほどバカではない。


「床になにかしたのか!」

「違う。逆だよ。なにもしてねーんだ。この床の下、どうなっているか調べてねーんだろ?」


 突如として床が抜けた。あまりにもあっさりとしすぎていてなにが起きたのかを把握するまでに時間がかかった。


 下には地下室がある。それは最初の時点でわかっていた。だがその地下室がどれだけの広さで、床の強度がどれだけなのかなど知る由もない。


 落下していく。アルもリアも、そしてエドガーも。


 地下室はかなり深く、身体をしたたかに打ちつけた。急いで腕を立ててエドガーを見た。二人よりも不自然な体勢で落ちたはずだ。こちらの方が先に動けるはずだ。

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