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それでも俺は異世界転生を繰り返す  作者: 絢野悠
〈actuality point 5〉 Emission Heart
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九話

 食事を終えて二人の部屋に到着した。夕食は奢ってもらったので、明日は俺がなにかを奢った方が良さそうだ。たぶん断られるような気はする。社会人だってことを金棒みたいに振り回す小さな鬼がいるからだ。名をアルと言う。きっと本人には一生言えないだろう。


「男の正体は突き止めたのか?」


 イスに座り、リアが淹れてくれたコーヒーを一口飲んだ。すぐさまミルクと砂糖を入れると、双子が寄り添って笑っていた。苦いものは苦いんだから仕方ない。


「男の名前はエドガー=アールベック」


 アルがミルクと砂糖を入れながら言った。リアはサッと写真を出してくる。


 写真はバストアップだった。隠し撮りなのだろう、誰かと喋っているときの写真に見える。右目は眼帯で覆われ、いかにも強面といった堀が深い顔だった。髪の毛は長いく、その縮れ毛はおそらく肩まであるだろう。


「めちゃくちゃ体格いいな。ぶん殴られたら全身の骨が砕けそうだ」


 バストアップだが、胸部が盛り上がっているのがよくわかる。そういえば大男だって言ってたな。


「身長は今の私たちの二倍くらいはある。二メートルの優に超えてるから、組み伏せられたらどうすることもできない」


 下唇を噛むアルの姿が痛々しい。


 なにを考えているのか、手に取るようにわかった。本当は双子じゃなく三つ子で、真ん中の妹がエドガーに殺されたことも聞いた。幼少期にこんな大男に覆いかぶさられた。その恐怖は、俺には理解できなほど強烈なものだったに違いない。


「まだ町にいるのか?」

「たぶんね。協力者に聞いたけど、この町からは出ていないはずだって」

「その協力者ってそもそもなにものなんだ? 信用できるのか?」

「私たちの元上司。定年退職して移り住んだの。私たちのことを警察内部で知ってた数少ない人」

「それなら納得できるな。でもどこに泊まってるかは突き止められてないと」

「姿は見たけど逃げられたって言ってた。それからいろいろ調べてもらってるんだけど、これといった情報がない。だから自分たちの足で探す。それしかないからね」


 ズズッとコーヒーを飲み、更に砂糖を入れていた。俺より苦味に対しての耐性ないんじゃないか。


「筋力がすごいのはこの写真だけでもよくわかる。でも魔法の方はどうなんだ? それにスキルとかも知っておきたい」

「エドガーは何度か捕まってて、スキルや魔法に関しての情報が少しだけある。軽犯罪だから何年も服役してたってわけじゃないから詳細は難しかったんだけどね。魔法は強化系がほとんど。遠距離系の魔法も使えるけど、強化しないとそれほど脅威にならない。逆に強化されると、正直どうなるかわからない。強化系の魔法ばっかりってことは特化されてるだろうから」

「スキルの方はどうだ?」

「Pスキルはシークレットウォーク。人やモンスターからの認知力を下げる。だから私たちの上司も見失ってしまった。気をつけていれば見失うこともないけど、一度目を逸らしちゃうと見つけづらいみたい。Aスキルはマグネットシール。確か右手で触った物を右手に引き寄せて、左手で触ったものを左手で引き寄せる能力だったかな。これがめちゃくちゃ強力。有効なのは手だけだからまだいいかな、って感じね」

「触られたら強制的に引き寄せられる。距離を取りたくてもそれができない。でも至近距離では俺たちに勝ち目はない。救いなのは、相手が組織じゃないってことくらいか」


 面倒な相手であることは確かだが、デミウルゴスみたいな集団でやってくることもなさそうだ。同時にデミウルゴスのような狡猾さもないだろう。不意打ちでもできれば一気に勝ち目が出てくる。


「ちなみに言っておくと、今の所作戦という作戦はありません。なぜならば、まだ根城も突き止められていないからです。だから今夜は見回りです」

「これからか? 夜は危険だぞ?」

「夜の警邏なんて今に始まったことではありません。仕事でもやっています。それにここは町中なので比較的安全です」

「というわけで私たちはこれから警邏……というか情報収集に出る。アンタはとりあえず自分の部屋にもどった方がいい」

「でもそれじゃあ……」と、そこまで言いかけて、やめた。

「わかった。なにかあったら連絡くれ。そしたらすぐ助けに行く」

「なにも無いことを祈っていた方がいいけどね。それじゃあアンタは巨乳のフレイアちゃんのところに帰りなさい」


 シッシッと追い払われてしまった。それに胸部装甲のことは割と気にしてるんだな。


「それじゃあまたな。なにもないこと、祈ってるよ」

「ええ、おやすみ、イツキ」


 二人に手を振って帰路についた。


 またあの二人と仲良くなれた気がする。だが喜んでばかりもいられない。こんな血なまぐさいことで仲良くなって、手放しで喜べる方がおかしいのだ。


 宿に戻ると、入口付近に三人の人影が見えた。サアっと、血の気が引いた。


 三人の目がこちらを見た。夜行性でもないのに瞳が光っているように見える。一人は指の骨を鳴らし、一人は杖を握りしめ、一人は銃に手を添えていた。


「いや、違うんだよ。これにはちょっとした理由があるんだ」


 なんて俺の言葉など聞いてはくれないだろう。


「言い訳は、中でね」


 フレイアが人差し指を俺に向けると、双葉とメリルが俺の腕をがっしりと掴んだ。


 それから女部屋に連行され、ことのあらましを説明させられた。アルとリアのことは黙っていたし、フラッとでかけたとしか言っていない。


 それにして説教に三時間は、ちょっとやりすぎだと思った。


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