六話
復讐することに関してはできればして欲しくないと思っているが、それでもコイツらの念願が果たされるのだ。今くらいは安心してもいいと思う。
「ですが、相手は私たちよりもずっとレベルが高いと思われます。推定でもレベル150前後。レベル110にも満たない私たちにとっては脅威と言わざるを得ません。そこでお願いです。肩から胸にかけて大きな火傷を負った男を見つけたら教えて欲しい。尾行しろとまでは言いません。チャンスが増えるならば、その限りではないから」
「まあ、それくらいなら全然大丈夫だけど」
「でもフレイアたちには伏せておいて欲しい」
「そりゃいったいどうしてだ。アイツらにも協力してもらえばいいだろうに」
「たぶん、フレイアたちに言ったら協力してくれると思うから。あの人たちは強いから。欲しいのは情報。あとは私たちだけでやると決めてるの」
「俺がバラしちゃうかもしれないって考えない?」
「口が堅いのはいい男の条件ですから」
コイツ、わかってて言ってやがんな。「口が堅くない男はいい男になれません」ってことかよ。
「わかった。言わねーよ。でも俺からもいくつか言わせてもらってもいいか?」
「なにかあるの?」
「ヤバイと思ったら逃げてくれ。生きてさえいればまたチャンスはある。無理して死んじまったらそこで終わりだ」
「心配してくれてるんですね」
「そりゃ当然だろ。次会ったら死体でしたなんて、そんなの悔やんだって悔やみきれない」
「悔やむってなにを?」
「アイツらについていけば良かった、ってさ」
「なるほど、邪魔をされたくなかったら引き際を心得ろ、ということですね」
俺がコイツらについて行ったら、コイツらが言う「自分たちだけでなんとかしたい」という願いは叶えられない。しかし引き際を間違えて死ねば俺が後悔する。じゃあ後悔するくらいならばと俺がコイツらについていく。そういう無茶苦茶なループを回避したければ、ちゃんと逃げられる時には逃げておけよってことだ。
「命さえ無事ならなんとかなるもんだ。俺に邪魔されてくなきゃせいぜい死なないようにしてくれよな」
「死んでしまったら邪魔もなにもないのに、おかしな人ですね」
クスリとリアが笑って見せた。
アルもこんな風に笑うのだろうか。この二人とは二日間くらいしか一緒にいなかったけど、仲良くなったからには後悔させたくない。ただ、無残な死に様を見たいわけでもない。俺は俺で、コイツらが上手くやれるようにと願うばかりだ。
「それでは私はアルのところに戻ります。くれぐれも内密にお願いしますね」
「おう、心配すんな。で、そっちは無理すんなよ」
「ご厚意痛み入ります」
と、彼女はスカートの端を上げるようにしてお辞儀をし、背を向けて立ち去った。
リアがいなくなったあと、もう一度海を見た。波は穏やかで、ざぱざぱという音だけが聞こえてきた。
「あれ? お兄ちゃんこんなところでなにしてるの?」
「おお双葉か。ちょっと海を見てたんだ」
「中学の時みたいになっちゃう?」
「俺別にガチ厨ニだった時代ないが」
「でもポエマーだった時代が」
「おいやめろ、それ以上は良くない」
傷を抉るんじゃない。
「今日の予定は?」
「特にないな。食っちゃ寝して過ごすかなー」
「じゃあ今日は私と探検しよう!」
「探検て」
「昔はよくしたじゃない? おばあちゃんの家とかでもさ。その度にいろんな物壊して怒られたけど」
「そんなこともあったな」
ちょっと考えて、双葉の提案に乗ることにした。
「んじゃ探検するか。童心に帰るってのもいいもんだしな」
「うん、じゃあ準備してくるね」
「俺もこれ置きに行かなきゃな」
まだ着替えも済ませていないことを思い出す。今日は双葉とデート、ってことになりそうだ。昨日もそうだが、たまにはこういうなんてことない日常を満喫するのもいいだろう。




