鏡に映る幽霊
今日も憂鬱な朝が来た。
昨日も、ほとんど寝ることができずに朝を迎えた。
目覚ましの音に反応して体を起こすが、鉛のように体が重い。
「今日も、余り眠れなかったな。そろそろ睡眠薬を飲んだほうがいいのかもしれないな」
まだ、薄暗い部屋の中でそうつぶやいた。
顔を洗うために洗面台に立つと鏡には、目の下に濃いくまがあり、青白く不健康そうな顔が映っていた。
「まるで、幽霊みたいな酷い顔だな」
高校生だった3年前までは、十分な睡眠、適度な運動、バランスのとれた食事を食べ健康そのものだった。だが、一人暮らしを始めて3年経ち、寝不足くのため、年々目の下のくまは濃くなっていき、顔色はどんどん悪くなっていった結果が鏡に映っていた。
仕事が忙しく、最近朝食をいつ食べたかを思い出せない。台所には最後にいつ使ったか思いだせない炊飯器、流し台には栄養ドリンクがいくつも転がり、食器には埃が積もっている。
家には、ただ寝るために帰るだけだ。
「時間が勿体無い。すぐに着替えて近くのコンビニで菓子パン買ってから出勤するか」
そう独り言を呟いて、緩慢な動きで出勤の準備を整えた男・・・坂下幸太郎は玄関をでた。
外は11月になったばかりだが、冷たい風が吹いていた。