前を見据え
魔王が代替わりするとき、それは大きなチャンス
まだ未熟な新しい魔王なら討伐の可能性があるからだ
この可能性は遠い昔から示唆されて来ていたが、成し遂げたものは未だかつていない
この大きなチャンスを前に沢山の若者が「勇者」として名乗りを上げた
理由は様々 家族を守りたい者、俺が一番強いのだと証明したい者、ただモテたい者
しかし……僕は違う
僕の目的はただ一つ「勇者になりたい」それだけだ
馬鹿げていると思うだろう しかしこれが僕の夢
勇者になりたいのだ
昔、危ないところを勇者に助けられたわけではない
勇者になって富や名声を得たいわけでもない
深く考えるとなぜなりたいのかは自分でもよくわからない
ただ勇者になりたい
僕が勇者になりたいと思ったのは小学生の時
勇者という言葉を初めて耳にした時だ
僕は勇者という言葉に大きい衝撃を受けた
勇者は勇ましい者、そんな単純な言葉なのにどうしてか頭から離れない
そのとき勇者を志した
勇者に簡単になれないことぐらい知っていた
しかし運が良かった
ちょうど18歳の誕生日に代替わりが起きる、僕はそれを過去のデータから導き出していた
それからはがむしゃらに努力をした
毎朝10km走ることを日課にし食事もしっかりとり、筋トレも欠かさず野草の知識等まで蓄えた
学校で友達ができなくても、馬鹿にされて笑われても必死になってやった
たとえ体調が悪くても天候が悪くても精いっぱい取り組んだ
そして今日僕は18歳になった