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「それで?」


 建物内に元から備え付けられていたらしい風呂から上がり、何日放置されていたのか分からない肉体から綺麗さっぱりとしたところで、食事にしようと黒髪が言うので席に着く。


「要は、私は今ただの人間だが、知識は人のそれではない。従って、お前を蘇生するのは難しいことでは無かった。別段、必要なものはこの建物内にも幾らかあったし、お前の持ち物からも拝借したからな」


 言いながら黒髪は慣れた手つきで手際良く皿の上に調理済みの食材を盛り付けていく。


「あぁ、成程」

「まっ、それでもかなりの時間が掛かってしまったがな。こうしてお前と食事を共にできるというのは単純に運が良かったとも言えるな」


 向かいの席に座り、お互い揃って手を合わす。

 そうして料理を口へと運ぶ。


「美味いな」

「知識だけはあるからな」


 会話は続く。


「まぁ、それでだ。話を戻すが、簡単に言えばお前にはこの世界で私を他の者から守ってほしい」

「分かった」

「物分かりが良すぎるというのも考えようだな」

「何だ、話したいなら聞くが」

「なら聞いておけ。理由は単純だ。この世界のゴミ共に自身の知識を利用されるぐらいなら死んでやろうかとも思ったのだが、何と言うかそれはそれで癪だと思ったからだ」

「もっともな意見だな」

「だろう? それにもっと言えば、私の様に蘇生を可能としている者達も少なからず居る中で自ら命を絶つという選択はただの一時的な現実逃避にしかなりえないという現状もある」

「そうだな」

「何、心配するな。この世界に存在する奴らの事なら知識として持ち合わせている。恐れる事など何も無い」

「……そこまで分かっているならこちらから出向くのも大いにありというよりも時間の経過が少ない今――情報の誤差が大きくなる前――すぐにでも行くべきだと思うが……」

「どうした?」

「生憎、死んだ代償というか、生き返った副作用でな――今、すごく弱い」

「……どのくらいだ?」

「死んだ事が無いので正直な所分からないが、技能(スキル)には制限が掛かっているし能力値も大幅に下がっている都合上、装備にも影響が出ている。具体的に言えば頭以外は完全な下位互換だな」

「参ったな……それは、時間の経過で治るとみていいのか?」

「あぁ。だが、先程も言った通り死んだのは初めてでな。完治までの時間はある程度の情報としては持ち合わせているが、またここで復活方法がプレイヤーの技能(スキル)で無かったことを鑑みるに、まるで予測が着かない。それと敵だ」

「……一番重要な事をそっと付け加えるな。それで――戦えるのか?」

「心配ない。それよりも敵と言ったがまだ敵とは限らない。ただこちらに向かっているだけだ」

「それこそ心配するな。ここに居る時点で全て敵だと思え。まずは情報だな」


 二人して食事を切り上げ席を立つ――


「……先に言っておくが、見たら死ぬなんて奴はいないよな?」


 窓から視認しようとしてふと立ち止まった。

 考えるまでも無く、自身の常識が通用する相手とは限らない。


「死にはしないが詰むことはありうるな」

「……探知技能(スキル)に制限が掛かっていて気付くのが遅れた。この意味分かるか?」

「はぁ……。小柄で耳の長いエルフだったら帰って来い。逃げるぞ」


 聞き終えると同時に権限(ラグアーマー)の起動、オーラの解放、武器をその場に突き刺し――窓から飛び出す。降り際に標的を視認。聞いた話と別人である事を確認して一瞬で距離を詰める。頭を握り潰す。そうして転移。武器と自身の居場所が入れ替わった事を確認して現実に反映させる。

 この間数秒。

 探知技能(スキル)から反応が消える。


「終わった」


 短く報告する。


「……一歩も動いていないのに、死体が一つ転がっている。中々どうして不思議なものだな」

「そう見えるだけだ。――それよりも問題ないなら武器を拾ってきてもいいか?」

「あぁ。どうやら見たら詰む奴ではあったが――そいつは不死でも何でもなければ自力で復活も出来やしない」

「………………運が良かったな」

「全くその通りだよ……」


 二人して窓の外、遠い地平線を見つめる。


 先はまだまだ長そうだ――




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