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「……」
暗闇。
それも辺り一帯見渡す限り全てが、だ。
加えて探知技能にも反応は無く、自身以外の生物の存在を否定している。
更なる情報を視覚以外に求めて瞼を閉じた。
静寂へと耳を傾ける――
聞こえてくるのは空気を揺らす息遣い。
伝わってくるのは心臓の鼓動。
そのどちらもが自身のものであって、それだけがこの歪な空間にて今も尚、生を実感させるのだが、それ以上に得られるものは無く、周囲からは何も感じ取る事が出来ない。
吸い込んだ空気をゆっくりと吐き出しながら、目を閉じた状態で思考を整理する。
現状、ここについて分かる事はほとんど無い。
ならばここに来る前はどうであったか。
――簡単だ。
彷徨っていたのだ。自身に相応しい、死に場所を求めて。
まぁ、その次の瞬間にはこの暗闇の中であったが。
……成程。分からん。前後の事象に関連性が無さ過ぎる上に、ここに至るまでの過程が無いものだから益々分からん。一言で言うならば、お手上げだな。
そうして再び目を開けたその時――その者は居た。
刹那――頭より先に体が動いた。
奔る――距離を詰める。手を伸ばす。握り潰す。
幾度と無く繰り返してきた動作だけに淀みは無い。
しかし――
「やぁ」
探知技能に反応しないそれは、何事も無かったかの様に気楽な態度で気軽な挨拶をこちらへと向けてくる。
思考が働くよりも先に再び手を伸ばした――否、伸ばそうとして、手が腕ごと爆ぜた。
気にしない。
腕はもう一本ある――そう考えた時にはもう片方が爆ぜた後だった。
権限起動。
「ははは、よほど人を殺したいと見える。挨拶も抜きにこちらの頭部を握りつぶすとは――何、怒ったりはせんよ。しかし、その態度は頂けないな」
言い終えるが先か両足が爆ぜた。
足を失った体がその場に文字通り落ちる。
「ラグアーマー、だったか? まぁ、何でも良いが――これで少しはこちらの話を聞く気になったかな?」
往々にして仰々にこちらの蛮行に対して笑みを浮かべながらの答え様。
既に決着は着いたと言わんばかりだ。
だが、忌々しい事にも現状は、火を見るよりも明らかだ。
こちらに対しての――その支配者然とした物言いにも納得ができるだけの理由と説得力がある。
地に伏した状態でありながらも無理矢理に首を動かし、目線を自身の無残な体へと向ける。
……出す手足を失い、動きも封じられ、このままでは出血多量で死ぬ……か。
「これが本当の打つ手なし……ってね。はっはっは、落ちろ」
瞬間――世界が切れた。




