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「ダメね」
王国。そのとある一室に落胆の声が通る。
「うーん。毎度の事とは言え、こうも手立てが無いと……」
「やり方を変えてみては?」
同室にて居座るエルフ、人、モンスターと形容されるモノ、プレイヤーと呼ばれる者達の中から、男に見えなくも無い華奢な女性が声を上げる。
「正直やり尽くした感はあるけれど……他の方法に何かあてでも?」
「これだけ居場所を探して引っ掛からないとなると、貴女の魔法に対して疑問を抱く訳ではなくて、そのどれもが正しいと仮定して、そもそもこの世界に存在しているのかどうかすら怪しいとは思わない?」
「それは……プレイヤーって言う存在がこの世界に居る以上、否定は出来ないわね」
「一足先に帰っちゃった……何て事は無いですよね?」
未だ幼さが残るが気品と風格を兼ね備えた少女、この国の姫が不安を払拭する様にしてぽつりとその場に言葉を零す。
「それについては非常に言い難いのですが、最近掴んだ情報の中にどうやらクズさんは帰還方法についてある程度知り得ていたとの事が記載されていまして――真偽は定かでは無いのですが私の個人的な見解では真に迫るものであると認識しています」
「……これで益々この世界に~って件が真実味を帯びてきた感じね」
「そう。それで、具体的にどうすれば良いのかと言う話だけれど、この際、探す、のでは無くて、逆に召喚――もとい、呼ぶと言うのはどうかなと思って」
「うーん。そうねぇ。召喚自体は難しいものでは無いけれど、うーん……でも、いや……うん。ありね」
エルフはそう言ってやってみる価値ありと笑顔を周囲へ向ける。
「これでクズさんの件はとりあえず――」
「それは今すぐ可能ですか」
緑の髪が美しい、それまでじっとしていたモノが終止符に割って入る。
「あ、あー、えーっと、どうなの?」
エルフに自然と視線が集まる。
「気持ちは分かるし、私もそうだけど、今すぐには無理ね。今回は自分の意図する範囲のものなら何でも良いって訳――」
「良いです。分かりました。何か必要なものはありますか?」
「え、あ、うん。何か彼と関わりの深いものとかそう言ったものがあれば円滑に事が運ぶと思うわ」
「それでしたら、私が」
「い、いや、そういうことでなくて」
「違いありません。この件、私が最も相応しいのは誰から見ても一目瞭然です」
「いやだから、もの! ものだから!」
「私はクズさんのものです。所有物と言っても過言ではありません」
「い、いや、そういうことなら私だって彼とそれなりに? 深い? 仲だった訳だし?」
「緑さんもシスもその辺にしておきなさい。みっともないですよ」
姫の一声に因って場は落ち着きを取り戻す。
「それに、クズ様と一番深い仲なのは私です! 以後反論は認めません!」
「ちょ、ちょっとそれは――」
「それなら――」
「「えーーーー!」」
反論に次ぐ反論。
場はまた一瞬にして騒がしくなる。
それに王国にて最強と謳われる騎士長がやれやれ……と屋内にて見えない筈の空を追って天井を見上げる。
「師は一体どこで何をしているのだか……」
喧噪の中、言葉はそのまま誰の耳へも届かず空へと昇った。
時はクズと呼ばれる者が死地へと赴き、失踪してから幾許か――
王国に集いし者達は模索する。




