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「あ?」


 目の前で起こっている事が何が何だがまるで分らない。

 いや、分かるのだが、分かるのだがどうしてそうなっているのか、どうしてそうなったのかがまるで分らない。

 否、分からない事等無い筈だ。

 そのほとんどが分かろうとしていないだけに過ぎない。

 きっと今回もそうに違いない。


 いつの間にか止まっていた息をゆっくりと吐き出しながら、混乱している頭を徐々に整理していく。


 まず何が起こったのか。

 そう、端的に言えば、プレイヤーが飛んで行った。

 いや――飛ばされた? とでも言うべきか。


 どうであろう。


 飛んだ本人達もそれは予期していなかったように思える。

 少なからず――激しいものでは無かったし、声を漏らす者もいなかったが――動揺が見て取れた。

 もし仮に飛ばされたとするならばそれを実行した者が存在し、それと同時にその方法も存在する筈だ。


 考える――

 

 実行したのはクズで間違い無いだろう。

 だが方法は?

 技能(スキル)の中には動きを必要としないものも存在するが、自分がたった今見た様な事を再現できる様なものは存在しないと断言できる。

 では他の手段で実際にこの様な事が可能なものは――

 そこまで考えて答えは出た。


 そうか――


「お前……魔法を使ったな?」


 先程から飛んでいる最中にも微動だにしていなかったクズに答え合わせだ、と問いかける。


「はは、近からず遠からず」


 まさか、プレイヤーで魔法を使えるものがいるとは想定していなかったが、奴が居た国には魔法に精通したエルフ共、その中でも頂点と言われるエルフの姫君が協力関係にあった筈だ。

 教える者が優れていればプレイヤーも魔法が習得可能と言う訳か……今後はエルフを支配下、基、手の内に招き入れる事にも重点を置くべきだな。


「フッ、味な真似をしてくれる。まぁだが、これでお前の守りを失ったゴミ共は正真正銘のゴミに成り果てた訳だ」

「どうかな」


 会話はそれで終わった。


「……おい」


 辺りを見回し、近くに控えていた男に声を掛ける。

 何はともあれこちらはこちらの事をしなければならない。


「分かってるよ」

「……そうか。それなら良いが、死体はしっかりと回収しろ。蘇生した後に、二度と裏切れないようしっかりと教育してやる」

「……まー、個人的にはそこまで女共に拘らなくても良いと思うんだがねー。まっ、そこはマスターのため。善処するよ? あぁ、それと行先は王都で良いかい? どうせ追った所で追い付けやしないし、問題ないと思うんだがー」

「あぁ。それでいい」


 言った傍から人を掻き集め選別を開始している。

 非常に優秀な男であることには間違いない。

 何より話が早くて、こちらの意図を酌む事に長けているので重宝している。


 そうした後、さて、と再びクズの方へと向き直る。


「まだやるか?」


 至極簡単で真っ当な問い。

 こちらは追っ手を出すがそちらはどうする? こちらとしては放って置けばそのうち死ぬお前、死体同然の貴様など相手にせずとも何の問題も無いのだが? と、そう言った問いだ。


「やろうか」


 目の前の者はあっけらかんと言う。


 それはクズの立場から見れば当然の返答。


「面倒だが……」


 こちらとしては乗る必要性は無い、のだが、ここは乗る。

 敢えて、乗る。

 何故か? それは単純な事。

 ここでクズを殺せばいくら被害が出ようとやつの所持する膨大な装備、道具(アイテム)が全て手に入るから。

 それもほんの後一押しで、だ。


「仕方がないだろう?」

「フッ、それは確かにそうだが――こちらも何かと忙しい身、死体になってから後悔するなよ」

「はははっ! それはこっちの台詞だ」

「イカレてるとしか思えんな」

「良く言われる」

「フッ」

「ははは!」


 チッ――笑ってられるのも今の内だけだ。


「マスター! 準備出来たからそっちは任せたぜー」

「あぁ。問題ない――――行け」


 その言葉を皮切りに男と一行はこちらに背を向けゆっくりと速度を上げて行く。

 この間、自身がクズから目を離す事は無い。

 そうこうしている内に、少しずつ男との距離が開いて行く。


 未だ相手に動き無し、ならば――


「敵は龍騎士! 未強化の技能(スキル)、恐れるに足らず。攻撃は速度に重きを置き、多段、広範囲、対象指定に因って敵をその場に拘束、釘付けにせよ!」


 自身の号令に従い攻撃が一斉に開始される。


 いくら奴がオーラ持ちだからと言っても強化のされていない技能(スキル)で死ぬほどの者は少ない。

 対してこちらは死ななければ数にものを言わせた潤沢な回復によって瞬時に元通りだ。

 そうなると奴は必然的に一撃にてこちらを葬る必要性が出てくる。

 それは技能(スキル)の強化を意味するが――


「させなければいいだけの事。ここからは根競べだな」


 奴がこちらの攻撃を技能(スキル)で受け続けた所でそれも一瞬の判断ミス、集中力の途絶えで終わる。

 何の事は無い。

 奴は最強の個かもしれないが、それも限度があるというもの。

 圧倒的物量の前にはただ膝をつくのみ――


 そうして眺めていると、自身の探知技能(スキル)からクズの反応が消えた。


「あっけな、って――――――は?」


 同時――自身の後方にて青き閃光と共に龍が天へと昇った。


 自身の探知技能(スキル)に唯一つの反応を残して――


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