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「……凄まじいですね」


 自身へと向かって放たれた技能(スキル)が青き龍に因って無効化され、目の前から消失する。


「無人の野を行くとは正にこの事」


 前方を通さまいと塞いでいた者達が四散し、そうならなかった者もその場で息絶え、崩れ落ちて行く。


「私達を守りつつ迫り来る敵を迎撃」

「言うだけなら簡単ですね」

「ルート選択も完璧です」

「それを言うならこうして私達が呑気にもお喋り出来ているという状況、余裕を作り出している事にも目を向けて欲しいかな」

「言えてる」

「そうね」


 と、そんな戦場にはとてもじゃないが似つかわしくない雰囲気の中、一行は外へと向けて進んで行く。

 そうして、いとも簡単にと言った具合で、終着点その一歩手前――内と外をその身を持って隔てる壁の前へと辿り着く。


「飛び越えるには少し厳しいですね」


 壁を見上げた後に、脇に抱えたエルフの綺麗な女性へと目を移しながら言う。


「壊します?」


 仲間の一人が提案する。


「却下。時間が掛かり過ぎます。クズさんの力を借りると仮定してもその際、襲われれば全滅、または復帰不可能な程の壊滅的状況が――」

「おい」


 その一言で喧噪が止み、一時の静寂が辺りを支配していく。

 そんな状況下、こちらへと背を向けたままの状態で、声の主は続けてこちらへと問いかけて来る。


「この召喚士は味方か?」


 ……召喚士?

 言われて辺りを見回すもその姿は無い。

 だが、彼の言った言葉は静まり帰った中で聞こえたのであって、一言一句間違い無く召喚士だ。

 それならば何かの隠語であろうか?

 いや、その様な回りくどい聞き方はしない人だ。

 で、あれば、だ。

 この召喚士と言うのは今現在こちらへと向かっている外からの救援、援軍、仲間の事を指しているに違い無い。

 状況から考えるに機動力と運搬能力に長けた召喚士の技能(スキル)に因って――


「どうなんだ?」

「あ、っ、は、はい! 味方です! 恐らく先行して――」

「そうか」

「はい!」

「良い作戦がある」


 作戦。

 そう言った彼の下へと駆け寄ろうとした所、手で来るなと、そのままで良いと促してくる。

 見ると、敵がこちらの詰めた距離の分だけ彼へと近づいている。

 止めた、遮った理由は、今は時間が欲しい。

 そういったところだろう。

 そんな中、危うく自分達自らがこの拮抗した状態を崩し、もっと言えばそれが原因で再開されかねない戦闘に手が塞がっている身でありながら巻き込まれるところであった。


 冷や汗がつぅと背中を撫でる。


 そうして、その場に留まった双方を相手取りながら彼の口からその作戦が告げられる。


「何、簡単だ。歯を食いしばれ」


 双方共にゴクリと喉を鳴らし目の前の者からどんなイかれた、もとい、どんな素晴らしい作戦が発せられるのかと期待していればこれだ。

 いや、正直なところ、ある意味恐ろしい。

 だが、こちらの伝えるべき答えはただ一つ。


 肯定の意――それのみだ。


 歯をぐっと食いしばり、背に向けて首を縦へと振る。

 それに呼応する様にして、他の仲間達も続々と肯定の意を各々、言葉や態度、行動で表明していく。


 そうして全員のそれが終わった後、彼は応える様に一度だけ――その場で小さく頷いた。

 

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