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「おらァッ! 出て来い! カス! ゴミ! クズ! バカアホマヌケー!」
門を蹴破り敷地内全ての者に聞こえる様、声を張り上げる。
「ちょ、ちょっとちょっと! 確かにここに案内したのは僕だけど、そ、その、やり方が何と言うか……ちょっと……大丈夫なの?」
それに鎧を纏いつつ――オーラを出す事無く――大きな剣を右手に答える。
「大丈夫では無い」
「えぇー!」
横に居る男にも女にも見える者は驚きつつも軽装を纏い短剣を左手に構える。
「左手剣……? 珍しいな」
「い、いやそれよりも敵さんいっぱい出てきてるんですけどー! だ、大丈夫……です、よね……?」
適当に門を蹴破り叫んだだけだったが、それは大いに効果があったようだ。
周囲には続々と武装した者達が集まって来ている。
「周りを見ろ。これが大丈夫な様に見えるか?」
「ぜっ、ぜぜぜ、全然大丈夫じゃないですー!」
「つまりそう言う事だ」
ついでに大きく頷いてやる。
「ええーーー!」
周りを取り囲んでいる敵など気にせずこちらへと非難の声を上げ、じたばたと騒ぐ。
こいつはとんでもない大物か、違うならただの馬鹿だ。
「そ、そうだ! さ、策! こんなに派手に登場したんだから何か考えが! あるんでしょ!」
そこには一種のあって欲しいという願望が含まれていた。
だがそれに一切の憂い無く答えてやる。
「無い」
派手に登場した理由は確かにあるが、それは策と言える程のものでは無く、ただ、一々隊長とやらが守っている所を攻めて探すよりも、敵を釣り出し迎撃しつつ待つ方が楽だと思ったから、それだけだ。
そして先程上がった声が再び上がる。
「ええーーー!」
同じ事の繰り返し。
それに――その、敵を前にしての間抜けなやり取りに苛立ったのか大きな怒声が辺りに響き渡る。
「貴様等は舐めているのかァッ!」
「ええー! 等って! 等って! 私も含まれてるー!」
男女は私は違うの関係ないのとうるさい相手に訴えかけている。
「戯言をほざくな! この期に及んで自分のやったことをやっていないなどと!」
「ぜ、全部この人がやったんですー! 私は無理矢理連れてこられたんですぅー! 信じてくださいぃー!」
……別に仲間でも何でも無く、殺すべき対象だがとんでもない奴だ。
「まぁ、お喋りはその辺にしてそろそろ殺し合わないか? 昼飯を食うのが遅れてな。このままでは夕飯も遅くなってしまう」
やった、やっていないなどという会話に割り込んで話す。
「あぁ? ここに攻めて来て置いて尚、また飯が食べられると思っているとは……ガッハハハ! こいつは何の冗談だ? それともお前は狂人か何かか?」
「強いて言うなら後者だろうな。良く言われる」
「チッ、もう良い。二人共殺せ! ただし、油断はするなよ。ここに攻めて来るってこたぁ――プレイヤーで間違い無いだろうからな」
「ひぃぃー! 何気に僕も……あ、あの! 勿論、私の事、守ってくれますよね?」
とても良い笑顔を伴って男女はこちらへと問いかける。
何だこいつ……先程まで自分がしていた事を覚えていないのか……。
行動言動が滅茶苦茶だ。
「知らん。自分で蒔いた種だろう。自分でどうにかするのが男というものだ」
こいつが男かどうか分からないがその様なことはどうでも良い。
「そ、そ、そんな……私の命運もここまで……か……」
男女との会話はそこまでで、自己強化技能・支援魔法と言った、能力を上昇させる技能を発動し終えた敵が一斉に攻めへと転じ、襲い掛かって来る。
「愚かな者達に鉄槌を!」
掛け声と共にある者は突き、ある者は上段から振り下ろし、ある者は足元を薙ぐ。
それに合わせて遠距離・中距離からの投擲、矢、魔法といった様々なモノ達が迫り来る。
それを剣を盾にし防ぎ弾き躱し、同時に敵の武器をへし折り、蹴りを繰り出し吹き飛ばし、隙有らば首を跳ね飛ばし、可能ならば敵の体をどことなく斬りつける。
「……やはりな……」
酷く弱い。
こいつらの数の多さを見て予感はあったが――雑魚の寄せ集めだ。
とは言え、数の多さから遠・中距離から攻撃してくる敵には近距離が邪魔で攻撃することが出来ず、中々どうして気を抜けば簡単に死ぬ事が出来るだろう。
そうして暫く殺し合った後、敵から声が上がる。
「くっ……コイツ! 中々やるぞ!」
それは最初、自身に対しての言葉かと一瞬思ったが、声のした方向をチラリと見てなるほどと理解する。
男女が雑魚とは言え、これだけの数相手に善戦しているのだ。
それも左手剣で――
敵とは言え、賞賛もしたくなるだろう。
「死にたくない死にたくない死にたくないー!」
……使い手はアレだが、使っている武器――左手剣は敵の攻撃を打ち合った上でその軌道を逸らし、それに因って崩れた体勢の相手へと逆に攻撃を浴びせるという反撃主体の中々特殊な武器だ。
言葉だけで説明するなら簡単だが、防御と攻撃を一連の流れで行うため使う者の技術が問われるのは勿論の事、それに因って強さというものがまるで変わってきてしまうため、自ずと高いものが必要とされる。
これは……殺す時がとても楽しみになって来たな……。
そんな事を考えつつも戦況は刻一刻と変わって行き――終わりは訪れる。
「ぐはぁっ……」
自分の元へと迫って来ていた最後の者を斬り捨て、辺りを見回す。
そこには自分でもこれだけの数を殺したのかと思える程、夥しい数の死体が転がっていた。
全身は赤く染まり、武器は盾としても使用したため刀身はボロボロだ。
男女はと言うと、今だ数人の者達と戦闘を繰り広げている。
これもそのうちに決着が着くだろう。
そう思い、戦いを眺めつつ雑魚との戦闘中には姿を現さなかった隊長とやらの登場を期待し、待つ。
――さすがにこれだけの部下を殺したのだから出て来てもらわないと困るが……果たして出てくるだろうか?
その様な若干の不安も少しばかり残るが……そこは運任せだ。
そうして呆然と立ち尽くしていると、その事に気付いたのか、男女がこちらへと暢気にも話し掛けて来る。
「ちょ、ちょっと! 終わったのなら手伝ってくれたって――」
が――その言葉が最後まで発せられる事は無かった。
突如として降り注いだ大量の青き炎を灯した矢に因って――




