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「はろはろー」


 昼下がりの飲食店。

 そんな気軽な挨拶と共に男にも女にも見えるその者は現れた。


「はい?」


 辺りを見回すも店内には自身しかおらず、こちらに話しかけてきている事は火を見るよりも明らかだ。


「君、プレイヤーでしょ」


 ズバリと、その者は言った。


 こちらはと言えば、一挙動で立ち上がりプレイヤーと言った者へと手を伸ばす。

 が、しかし躱される。


「へっへーダメだよーそんなに簡単に人を殺そうとしちゃー」


 その者は最初から分かっていた風にニコニコしながら目の前の席へと腰を下ろす。


 チッ――


「ちょ、ちょっとー、舌打ちー? 殺せなくてイライラするなんて本物の殺人鬼だねー」


 やめてよーなどと言っている。


 思わず、舌打ちが出てしまったが、その理由は殺すことに失敗したからではなく、こちらの身分と即死技能(クソスキル)の所持を事前に知られていたことからだ。

 

 まぁ、身分の件だけで言うなら鎌をかけて来たのかも知れないが、わざわざ店に一人で居る所を狙って話し掛けて来たところを考えるに恐らく何かしらの確信、確証があってのことだろう。

 しかし、顔を隠すこともせず、死体を放置しているとは言え、少なからずこちらの情報をこの目の前に居座っている者は知っているということだ。

 そして、そういった事を知っても尚こちらに接触して来た。

 つまりここで重要なのは、その目的が何かと言うこと。

 

 相手の目を見てみる。

 だが、見たところで相手の考えなど分かりはしない。

 考えるのも面倒になり、素直に聞いて見ることした。


「何の用だ」

「えー、どうしよっかなー。こっちとしてはー殺されそうになった訳だしー」


 その顔に悪戯な笑みを浮かべ、上目遣いで渋る。

 只管に渋る。


 果てしなく鬱陶しいので、余計な事を話し続けるようなら今すぐ殺すと目線で分からせてやる。


「って、ごめんごめん話すってば! もー……おっかないなー本当にもー」


 まぁ、話したところでどのみちプレイヤーであろうこいつは殺すことに変わりは無いが。


 そうして、目の前の者は深呼吸を一度した後、一息でこちらの意図を突いて来た。


「強いプレイヤー、探してるんだって?」


 …………王都に居るであろう少女意外に話した覚えはないが……あの少女が他人に話すとは思えない。

 だが、こうして黙っていては、肯定と取られ兼ねないのでとりあえず否定して置く。

 

「探していない。人違いだろう。」

「うん、うん。そうだよね、そうだよね。探してるよねー知りたいよねー。うん、って! そこは肯定してくれなきゃ話が進まないところだってば! もー、本当素直じゃない! こうなったら勝手に話しちゃう! 僕って超優しい!」


 そうして、したり顔をこちらへと向けてくる。


 対してこちらはと言えば、眉間に寄った皺が戻らない。


「……話すならとっとと話せ。話さないなら表へ出ろ……殺してやる」

「わ、わわ、分かった、分かったからその目で私を見ないでー! 本当におしっこ漏れちゃいそうになるから……。え、ゴホン、えー、えーと、強いプレイヤー、居ます。知っています。この街の守備隊の隊長です!」


 これは……時間を無駄にした。

 自分は、元からその守備隊の噂を聞き、その全員を抹殺する予定でこの街へ来たのだ。

 

 立ち上がり、表へ出ろと目の前の者へと顎で促す。


「え! 知ってた? もしかして……これってまた私殺されちゃう?」


 非常に度が過ぎた挙動で困惑している。


「ほう、また、と言ったか。通りで――」


 こちらの事を知っている訳だ。


「お前に覚えは無いが、また、殺してやるからとっとと表へ出ろ」


 そしてこいつを街中で殺せば、騒ぎを聞きつけた守備隊が駆けつけて来てくれるだろう。

 少し早いが祭りの始まりだ――

 そう考え、思わず笑みが浮かぶ。


 それを無視してあたふたとしている者は、突然、何かを閃いた様にこちらへと顔をがばっと向けて来る。


「え、ええ、えええ、えと、じゃ、その、そう! そうよ! これは知ってる? その隊長がオーラ持ちだって事!」


 オーラ持ち……その言葉に先程まで口元に携えていた笑みは消え失せ、変わりに歓喜のそれ、笑い声がこみ上げてくる。


「クッ……クック……クックック……ハーッハッハハッハッハ!」


 オーラ持ち。

 それは強者であることの証明であり称号であり強者であるならば持たずとも持っているものだ。


「え? えと? えええ、えと、どどど、どうしたの? 急に!」

「良い事を聞いた。それが本当かどうかは疑わしいが、お前の処刑は後回しにしてやる。だが――逃げられると思うなよ」

「う、うそー! うそでしょ? ふ、ふつうはここから共闘とかして絆とか信頼とかを深めていってー!」

「ほう? そうか、そういうのをお前はお望みか」

「え! 分かってくれたの? や、やった! 言ってみるもんだね! これで殺されなくて済む? あたしってもしかしなくても超ラッキー!」


 飛び上がり、跳ね、全身で喜びを表現しているそれは、一種の見世物の様だ。


「あぁ、お前は超ラッキーだな。しっかりと正確に愛情を込めて信頼を込めて絆を持って殺してやろう」

「って! 結局殺されちゃうのー? 僕ー!」


 そうして大げさに項垂れているそれを横目に出口へと向かう。


 この件が真実か否かは分からないが、もし仮に自身を釣るための餌、嘘、罠だったとしても、危険を冒して行くに値する十分な理由――強者――がそこにはある。


「ちょ、ちょっちょっとー! 置いてかないでよー! 私もついていくんだからー!」

「……お前……逃げないとは殊勝だな。それに免じて殺すときは出来るだけ痛みを感じないように一瞬で優しく愛情を込めてだな」

「ってそれはもういいってのー!」


 言いながらこちらの手が届かないように、適度な距離を開けて横に並ぶ。


 ……話を最後まで聞かないのはこちらの専売特許なのだが……。


 まぁいい。

 今は目の前の楽しみだけ考えよう。


 そうして、まだ見ぬ敵へと思いを馳せる。

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