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 王都の外で龍が天へと昇った。

 時を同じくして、息絶えた王を取り囲む者達――


「陛下……」

「くそっ、何で陛下がこんな事に……」

「あいつか……あいつが悪いのか」

「そうだ、あいつが来てからだ。あいつが来てから王国はおかしくなったんだ!」

「そうだ! 全てあいつの所為だ! あいつが来なければ陛下も死ぬ事は無かったのだ!」

「クソッ! プレイヤーだからって調子に乗りやがって……」


 そんな悪態が王の周りを包み、皆、そうだ、そうだと同調しそれは広がって行く。

 だが、それを止めたのは意外にもその場で一番王の死を悲しんで居た少女であった。


「やめて……おじいさまの前でそんなこと……やめてください」


 目を赤く腫らせ、拭いでも拭いでも湧いてくる涙を余所に少女はそう言った。


「し、しかし! この様な事態になったのはあの傭兵の所為であるのは明確です!」


 皆それに、そうだそうだと口を揃える。


「……たしかに、あの方の……責任で、あるかも、しれません。ですが、あの方が居なければ、いま王国がこうして存在し、おじいさまの……死を……こうして悲しむことができたでしょうか?」

「そ……それは……」

「それに、あの方をお選びになられたのはおじいさまです。あの方を悪く言うのであれば、それはおじいさまを悪く言うのとおなじこと。あの方を悪く言う事はおじいさまを貶めることになるということを知りなさい!」


 今だ、涙が枯れる事無く流れ出しているが、その目にははっきりとした意思が感じられた。

 それも王が生きていた頃にその目に宿していたものと同じものである。


「今後、あの方を悪くいうことは私が許しません! 私はおじいさまが信じられた、あの方を信じます!」


 そう言い切った少女の迫力に押されてか、喚いていた者達は口を閉ざす。

 目の前で一番悲しいであろう少女がそこまで言うのだ。

 王国の民である自分達が信じなくてどうする、そういったところだろう。

 そうして訪れた、束の間の静寂。


 それを打ち破ったのは二人組みの女だった――



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