始まり
これは私の想像のお話です。現実とは分けてお楽しみください…
少しでも多くの方に楽しんでいただければ幸いです。
『無理』
これは僕の口癖だった。
だって面倒な事はしたくないし、関わりたくない。それは皆同じでしょ?
だったら最初からやらなければいい。
僕の名前は『X』。勝手にそう名乗っている。
本当の僕の名前はない。
捨てた。というか捨てられた。
ここは少年院。
僕は人を殺したらここにいれられた。
ここにいる人たちはみんな脱走しようとする。
脱走したってどうせまた捕まるのに…。逃げるなんて無理だ。
「なーに考え事してんだ?」
不意に僕の顔を覗きこみ話しかけてきたのは雰囲気が明るい男。僕より年上だろう。
名前は『Y』。
こいつとはよく話す方だ。
「別に…」
「冷てーなー」
「…なぁ」
「ん?」
僕は思っていたことを1拍おいてそのまま口にした。
「ここから脱走したいって考えた事あるか?」
「なんだよいきなり」
Yは笑った。
「勿論あるさ。ただ、今は違う。だってここから出たら行く場所ねぇもん。ここは寝れるし不味くて少ないけど飯も出る。それに…」
Yが1度話すのを止める。
別に興味がある訳ではないが一応聞いてみる。
「それに?」
「…それに、お前がいるしなっ」
Yはニカッと笑った。
「…ふーん」
「あっれ!?反応薄っっ」
反応が薄いのは表情に出ないだけ。嬉しいような、恥ずかしいような…そんな感情が僕の中で混ざる。
「お前は?」
「え?」
「お前は、脱走したいって考えた事あるのか?」
「…ないよ」
あるわけないだろ。
「脱走なんて無理だ。できやしない。」
「そうか…」
「…それに…ここにはお前がいるから出なくても楽しいんだ」
さっきのYの言葉を借りる。出来てるか分かんないけど笑顔を作ろうとした。
「お…おう!俺はずっとお前の側にいるぞ!」
「ずっとはやだな」
「ヒドッ」
Yは僕よりずっとうまく笑顔をつくる。その笑顔があるだけで辛いことも乗り越えられる気がした。
ここにいる人たちはもう人生が終わるような暗い表情をしている。実際そうなんだけど、そんな中こいつは笑顔でいられて純粋に凄いと思う。
そんな事を考えていたら監視員達が騒ぎはじめた。
《No.7が脱走。No.7が脱走。早急に確保せよ。》
放送まで鳴る。
「ちゃんと見張っとけよ!」
「あいつ捕まえんの至難の技だよな…」
「俺ら全員でも数時間かかるし…」
「少なくとも一人は死ぬな」
そんな会話と共に監視員が走り出す。
「なぁ!俺らも混ざろうぜ!」
「は!?」
「鬼ごっこみたいな感じでさ!」
「ちょ…っ」
僕の返事も聞く前にYは走り出した。
「待てよ!」
僕も後をすぐ追いかける。
「…はぁ…はぁ…どこいった…」
だが見失ってしまった。
「なんなんだよ…」
結構走ってきてしまってここがどこか分からない。
とりあえず近くにあった扉をあけた。
「……え…」
そこはただの監視員の寝室のようだった。
しかし、壁は赤く染まり真ん中には人だった物が落ちている。
「なんだよ…これ…」
最後までおつきあいありがとうございました!
本当嬉しいです…!
これからも是非よろしくお願いします!!