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Jewel/box  作者: しろ
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第一話

注意事項で書いておりますが、こちらの作品はTSF作品です。


男が実は女で、女として暮らしていくような話です。

あとラブコメと言うかブラコメ(ブラコン+コメディー)な感じです。


医学的観点とか、そこらへんは丸ごとポイっと投げ捨てた完全女体化みたいなカンジです。

ごめんなさい。


以上を踏まえて、OKな方のみ閲覧ください。

宜しくお願いいたします。



***




***













 ありえない。


ぼさぼさの髪と瓶底眼鏡、体系を隠すほどのだぼだぼのパーカー。

くたびれたジーンズ。

地味男、そう一言で終わることのできるほどの、青年が目の前にさわやかに開き直った顔をして彼の前にいた。


彼―駒形蒼こまがたあおは、先ほどまで言い辛そうに言い訳を考えていた三つ年上の幼馴染の青年を見た。


今はもう、開き直って笑顔さえ浮かべている。

その様に、腹が立つ。心配していた。心配していたのだ、蒼は。

高校卒業後、県外の大学に行きお盆もお正月も帰郷することが無かった青年。

蒼の青年との記憶は、オールマイティーに何でも卒なくこなしサッカー部のエースとして活躍し、蒼に勉強を教えてくれて、試験勉強のときは手作りの夜食まで準備してくれた。


大好きなお兄さん、そして尊敬する兄。


その気持ちは崇拝や妄信にも似ていた。


そう、幼馴染の『新城正樹しんじょうまさき』はひときわ輝く宝物様な存在だった。決して、地味でダサい男ではなかった。輝いていたのだ。――蒼の中では。


大学に入学した年の夏までちょくちょく連絡をくれていた彼が夏を過ぎてもまったく連絡をよこさなくなった。

それから二年半、音信不通の状態だった。蒼は正樹の父に幾度となく尋ねるが要領を得ず、そしてある日気づく。

いや本当は気づいていたのだ。けれど認めたくなかったのだ。

避けられているということに。

そして、蒼の中で正樹の存在が自分が思っている以上、心の拠り所だったことに気づいた。

会いたかった。すぐにでも。今すぐにでも。

その日はちょうど休日で翌日は創立記念日で休校日だったので、蒼は夜行列車のキップを購入し列車に乗り込んだ。

そして、早朝から彼の大学の校門に立つ。学生たちは蒼を訝しげに見つめ、そして一部は声をかけてきた。親切心を装った暇つぶしの女子大生に絡まれた。物珍しさなのだろうが今の蒼には目ざわり以外の何物でもない。

「人を待ってます」と、はねつけるように告げると「待ってても来ないんじゃないの?」と、嘲笑うように笑われた。

勘に触る笑い方にイラついていると現れた一人の男が蒼の腕を取り、笑う女に言った。


「悪いけど、彼借りるな」


女が何かを言う前に、蒼が抵抗する前に、強引に素早く腕を取り男は大学近くの喫茶店に連れ込んだ。

落ち着いた雰囲気の喫茶店で、開店間際なのかお客は一人しかいなかった。


「正樹の幼馴染の駒形蒼君?」


強引に対面式のソファーの席をつ座らせられて、今度こそ抵抗しようとした蒼に男は言った。驚いて固まった蒼に「俺、アイツの親友」と笑って喫茶店のメニュー表を渡し、


「俺さ。今日朝ごはん抜いててさ。ちなみのここのオススメは本日のチーズサラダサンドだよ」


手書きで書かれた軽食のメニュー表の一番上を指差して男は言った。

男の名前は相沢翔あいざわしょうといった。

相沢が告げる用件はただひとつ。


「正樹さ。君と会いたくないんだって」


その言葉に、息が止まる。相沢はまだ何か告げていたが、蒼は血の気が下がり相沢の声が気負えない。

やっぱり、避けられていた。

嫌われていた。嫌われるようなことをいつした?記憶にあるか?ぐるぐると思考が回る。

生きてきた中で唯一の救いで、蒼が肉親よりも信頼している存在。

目頭が熱くなり、唇が震えた。ああ、自分はいま、泣きそうなのだと―。柄にもなく、涙がこぼれてから、泣いてしまってから『泣きそうだ』と思った。


「うげっ」


蒼が涙をこぼしたことによって相沢が声を上げた。

オロオロとし始めた相沢が、「泣くようなことじゃないだろう?!」と焦って声を上げるが蒼から流れる涙は止められず、手の甲で懸命に拭う蒼は「うるさいっです」と弱弱しく呟いた。

困った、と言う風に蒼とは別の意味で青ざめた相沢の後頭部にアルミのペンケースが叩き付けられた。

ガン、という鈍い音とうめき声が同時に上がり、相沢はソファーの上に落ちて転がったペンケースを握り締めて怒鳴った。


「ぃ、痛いな!正樹!」


二つ離れた席に野球選手のような投球の構えを取っていた唯一の客の男が、瓶底のような分厚い眼鏡越しに相沢を睨みつけた。


「翔のドアホが!なに蒼泣かせてんだよ!蒼が泣いてんだろーが!」


胸倉を勢いよく掴み瓶底眼鏡をかけた目をすごませて、男は叫んだ。

ぼさぼさの、目を覆うぐらいの髪と色落ちたパーカー。くたびれたジーンズとスニーカー。一見どこの苦学生だ、と目を疑うが聞き覚えのある声と相沢を怒鳴りつけて怒る理由。

そして、


「正樹が会いたくないって言うから俺が力を貸してやったんだろう!殴られる筋合いないはずだ!」


「そんなことよりも蒼泣かすんじゃねえよ!蒼が泣いてんだろう!」


「はぁ!?大体会わないって決めた正樹がキレるのはおかしいだろう!?会いたくないなら最後まで出てこないで静観してろよな!だいたい俺だって年下、泣かす役目なんてやりたくないよ!」


取っ組み合いにまで発展し、二人は手近にあったものを掴み投げる―前に、ドンっと鈍い音が店内に響き、木製のトレイが真っ二つに割れカウンターに突き刺さってる様を見て取り身体を硬直させた。


「君たち、店で騒がない」


笑みを浮べたウェイトレスの女性が突き刺さったトレイをカウンターから抜き、


「相沢くん。店から出る」


「え、え?!俺なの?!」


出入り口を指差した女性は、笑みを浮べて頷く。

朝ごはんまだなのに~と、悲痛な声を上げ相沢は女性の言葉に従って項垂れて出て行った。

そして、


「新城くん。理由は知ってるけど…、きちんと話なさい。彼かわいそうよ」


そう言ってぼさぼさ頭の男―正樹におしぼりを渡した。温かいおしぼりを渡された正樹は硬直してどうして言いか分からずオロオロし始めた。そんな彼を呆れたように見て、


「座る」


と、相沢が座っていた席を指差し正樹を座らせると、


「渡す」


手に持ったおしぼりを渡すように指示し、


「スペシャルデラックスウルトラミックスパフェ一つね。ご注文ありがとうございました~」


と伝票が挟まれたバインダーを取り出しさらさらと頼まれもしない注文を取る。


「は?!待てよ!!それ3890円(税別)だろ!?」


「二人で食べれば大丈夫でしょう?」


「それ5人前計算のパフェだろ!?」


一人で食えるか!と喚き立った正樹に、女性は微笑んで言った。


「うっさい。食え」



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