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鼓動  作者: 吉川明人
39/42

前夜


 ……そっくりだけど、あくまであたしじゃないあたしは、今朝も正面の司祭に切りかかられる。

 不思議だった。コワがってない。刀で切りかかられてるのに、ぜんぜんコワそうじゃないなんて……見てるあたしのほうがコワい。それとも催眠術とか、薬みたいなので恐怖感失ってるのかもしれない……。

 でもあたしはこのラサケセスのあたしと一体になる。どうなるかわかんないけど、一体にさせられてしまうんだ……もうすぐ。

《ソウ、モウスグ》

 頭の中に声が響いた。

《ヤット、モドッテキテクレルンダ》

 とたんに心臓がドキドキと早まってく。これは……クグラ岩の前で起こったのと同じ……。

「だめ! まだだめ! もう少し。お願い、もうちょっとだけ待って!」

 思わず叫んでた。

 もうちょっと……もうちょっとだけ。

《マッテル、スコシダケ……モウスコシダケ》

 目が覚めたのは、目覚ましが鳴る5分前だった。

「あれ、あたし……途中で起きなかった……」

 心臓の鼓動もふつうになってる。

 でも頭の中にはさっきの『モウスコシ、モウスコシダケ……』が、いくら振り払っても繰り返される。

 ……教えてもらおう……いつなのか。いずれハッキリさせないといけないんだ……。


 心が決まると、いてもたってもいられなくなって目覚ましが鳴る前に起きた。

「おはよう、お母さん」

「おはよう佳那ちゃん。今日は早いわね」

「あ、お姉ちゃん今日は早い。昨日みたいだったらどうしようって思ってたのに」

 あたしの夢がはじまってから朝のパターンが変わることが多くなったせいだと思う。

 紗弥はなんにもいわないで、以前より早く起きて用意はじめてくれてる。

「うん、ゴメン心配かけて。今日は大丈夫だよ」

 いつもの時間に玄関出て、途中で紗弥と別れ、次の駅に着くとちいが心配顔で飛び乗ってきた。昨日別れたあと、犬澤君が天凪君たち呼んでくれたおかげでスゴくスッキリしたこと話す。

 あたしが平気になったの知って、『安心したわ』といってから『……で、磐拝君はどうだった?』って聞かれても、元気そうだったとしか答えられない。

 学校に着いて、教室に入ると犬澤君が待ってた。あたしと目が合ったとたん目が優しくなった。いわなくてもわかる。『決めた?』って聞いてる。目合わせたままうなずくと、ついてくるようにっていうように、スッと立ち上がって教室から出てく。


「いつがいい?」

 数人しかいない朝の図書室で背中向けに座って本で声反射させながら小声でつぶやく……こんなのでも意外に声って届くんだ。

「今知りたい。その日がいつなのか……今朝の夢でもいってたの。もうちょっと、もうちょっとだけって。このままじらしても一緒だと思う」

「うん。だと思ってた。実は……ほとんどそこまで近づいてきてる。ハッキリいうとね」

 思わず唾飲み込む、心臓もドキドキしてる。

「ゼラが復活する全ての条件がそろう日は、4日後の日曜日だよ」

 4日後……あと4日……。

「わずかな日数だけど、がんばって。みんな本多さんを応援してるから」

 あと4日……。

 知りたかったことなのに、知ってしまうとショック抑えきれない。

 4日……。

 チャイムにうながされて教室に戻った。あたしの様子心配しながらも、人前であたし励ますことができない犬澤君は足早に、でも引き離さないよう先に歩いてく。

 カクゴ決めないと……夢の中のことなんて、誰も助けてくれない。助けることができない………それでも犬澤君やちいや天凪君たちはあたし励ましてくれる。信じてくれてる。

 あたしがやんないと……。

 あたしがやんないと……。


 ……その日のこと教えられてから、あっという間に3日すぎた。

 ほんとにあっという間だった。

 会う人、起こることの全部が、ひょっとするともう会えなくなる、起こらなくなることじゃないかと思うとスゴく大切に思えてきて、これまでこれほど充実した日はなかったと思う。

 お父さんやお母さん、紗弥やクラスの友だちにちいまでも、あたしの変化に驚いてた。

 どう思われてもいい。あたしには、ハッキリかぎられてる日数しかない。その中で精一杯のことやっておかないと……。


《モウスコシ……モウスコシダヨ》

 うん。もう明日だもんね。

 土曜日の午後に、もう1度犬澤君が天凪君たち呼んでラオムに集まった。今度はちいもきてくれた。

 夜寝る前のお風呂は、いつもより念入りにからだ洗って、ちょっと長めにお湯につかりながら、思い出せるかぎり小さかった頃からの楽しかったこと思い出してみる。

 もし明日の朝、また目覚めることができたら、もう1度海見にいこうかな……今度はゆっくり景色ながめよう。


「おやすみなさい」

 お父さん、お母さん、紗弥に挨拶してベッドに潜り込む。ほんとはいろいろ話したいと思ったけど、泣きそうになるからやめておいた。

 あたしがいなくなるわけじゃない。仲間の誰かが減るなんてこと考えにくいって、犬澤君もいってくれてるし、意識切り離すの成功するかもしれない。

 不安で眠れなくなるかと思ったけど、ほどなくして眠気に包まれる。

 心構えがあったのが良かったのかもしれない……。


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