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鼓動  作者: 吉川明人
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「ほんと。生きてるみたいに鼓動してる……」

「かなぼ〜、あんたなんでも信じやすいから、そんな気分になってるだけじゃないの?」

 眉ひそめながらちいがあたしのぞき込む。

「そんなことないよ。なんか子犬とか子猫抱いてる感じする」

「ほんとに〜?」

 ちいが受け取る。

「やっぱりなにも感じないわよ。天凪くん!」

 大声で叫ぶちいにみんな驚く。

「なんだ?」

「こっちきて! あんたも触ってたしかめるの」

「だから俺は……」

「ええい! 早くしなさい! 手に乗せるだけでいいから」

 ちいの大声に、天凪君がスゴスゴやってくる。

「まったく、強引なやつだな。ほんとに手に乗せるだけだぜ」

 ニヤっと笑いながらちい見る……やっぱりちいってスゴイ。天凪君はものスゴく慎重に手のひらに乗せてもらって、なにもいわずにじっとしてる。

「……たしかに、ただの木じゃねぇな。佳那のいう通り、生き物に触れてる感じがするぜ」

 天凪君のあとに交代でみんなが薙に触れたけど、あたし含めた4人以外にその感じがわかるのは誰もいなかった……。


「ありがとうございます。参考になりました。ところで、饕餮文で試されたのはどんな意味があったんですか?」

 祝鎮さんがたずねると、お祖父さんは少しテレながら笑う。

「あれは趣味じゃよ。古美術商という職業柄、古い物に触れることが多い。あくまで本業は日本の美術品じゃが、見聞をひろげる意味で世界中の古物や遺跡も知っておきたい。

 その中で見つけた興味深いものを、理解してくれそうな誰かに話すのがおもしろいんじゃ」

「そういう話はオレも大好きです。今度は個人的にうかがってもいいですか?」

「ぜひ来てくれ。これからはヤツカノノフルナギだけでなく、古美術で必要なことがあれば、いつでも相談にきてくれれば力になろう」

 犬澤君が答えると、初めと打って変わってお祖父さんは本当に嬉しそうにニッコリ笑った。


 天凪君たちとは、駅でみんなで携帯番号とアドレス交換しあって別れた。

 交換なんてどうやっていいかわかんなくて困ってたら、犬澤君が「見てもいい?」って確認してからポチポチって、すぐにやってくれた。

 アドレス増えたのって、家族以外にちい以来だけど、これからも使うことがあるかどうかはわかんない……犬澤君のアドレス知ってるなんて、園美と奈絵が知ったらコワイことになるからぜったいだまっておこう。


 帰りの電車待つ時はもとの4人になっただけなのに、スゴく少ないような気がする。

「とにかく本多さんと同じ夢を見る人が、どのくらいいるのか把握しておいたほうがいいね」

「そんなのどうやって調べるの? 1人1人に聞いてまわるなんてできないっしょ?」

「たぶん大丈夫だよ、ネットの情報網は展開が広いし収集も早い。それにこういうのが好きな仲間もいてくれるからね。

 それから高校生以外の兄弟がいるなら、協力してもらえると調査範囲が広がるんだけど、兄弟はいる?」

「残念! うちは兄キしかいないわ」

「おーい、本当に調査にきてる人間だぞ」

「だったら兄キどこ調査するの? 大学行ってないんしょ?」

「休学してるだけで、やめたわけじゃない。それに個人開業医も含めた精神科を1件ずつしらみ潰しに尋ねてまわっているんだ。そんな訴えをする人がいれば連絡してもらえるように手配してある」

「兄キにしたら手際いいじゃない」

 2人とも笑ってる。お兄さんってこんな感じなのかな……受験勉強のじゃまになるんだったらダメだけど、紗弥に頼めないかな?

「本多さんに兄弟は?」

「中学の妹がいるんだけど、来年受験だから勉強のじゃまになるんだったら頼めないから……」

「そうだね、それじゃ仕方ない。ともかくどのくらい感応してる人がいるのか、大体の手がかりがほしいですよね? 祝鎮さん」

「その通りだ、まず全体像を把握したい。修仁くん、ネットに送れるかな」

「それなら昨日のうちにこの手のことが好きな人たちにも手分けして探してもらうよう手配済みです。HPやFacebook、Twitterでも呼びかけてますから、日ごとに手がかりらしきものも出てくると思いますよ」


 あたしとちいと祝鎮さんは、ホームからもう1つ向こうの駅で降りる犬澤君見送ってから一緒に改札出る。ほんとはこの駅で降りるのはあたしだけなんだけど、夕闇時にさしかかってたから、うちまで送ってくれることになった。

「ところで兄キ、今日はどこに泊まるの?」

「とうぶんは西藤のところでやっかいになるつもりだ」

 え? 祝鎮さん、うちに帰ってなかったんだ。

「ったく〜。ちゃんとうちがあるくせに、どっちも意地張るんだから。昨日もいったっしょ、父さんああいってるけどほんとは寂しがってるって。兄キの部屋だってそのままにしてあるんだから」

「分かってるよ。分かってる上でああなるんだからしょうがない。それを避けるのはどっちかが出ていかないといけないんだから」

 ……う、気まずい。いつもの明るいちいからは、ちょっと想像しづらい家庭の事情……。

「それに西藤さん? いつまでも住みつかれると迷惑でしょ〜に」

「そんなことないぞ。迷惑どころか、頼むからいつまでもいてくれってさ」

「どーしてよ?」

「泊めてもらう替わりにメシ代はこっち持ちだ。普段からロクなもの食ってないからあいつスゴく喜んでるぞ。なんせあいつのアパートの部屋、ガスと水道まで止められていたんだからな」

「どうやって生活してるの!?」

「なんとかなるもんだな感心するよ。業務用のスパゲティって4キロも入ってわりと安いらしい。最悪、生で噛ったりしてるぞ」

 スゴイ……。

「でも電気は止められてなかったんしょ?」

「止められていたけど、確保してたぞ」

「どうやって?」

「大きな声じゃいえないが、自分でメーター直結して使ってた。あいつそういうのは器用なんだ」

「それって犯罪でしょ〜に!」

「世間ではそういうな。で、溜まってた料金替わりに支払ったから今は使えるようになってる」

 なんかスゴイ部屋想像してしまう。見たくないけど見てみたい気もする……。

 2人とはマンションの前で別れた。このあと祝鎮さんはちい送って、例の西藤さんの部屋に……。

 コワイ。考えるのよそう……。


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