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鼓動  作者: 吉川明人
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心臓と肺


「ええ。さっきもいったんですけど、この列石にちょっと変わったペトログラフがあるんですよ。

 ええっと、中心の岩の台座は……あれだな……あった。これです」

 しばらく石のとこにしゃがみ込んでた犬澤君のとこにみんなが集まる。

「ホォー。きれいに残ってるな……大地と豊穰の神を讚える文字だな」

 祝鎮さんはていねいに、石の足もとに彫り込まれてる記号みたいなの触れずに指でたどりながら感心してる。

「ええ、そして反対のこっち側に、海と大漁の神を讚える文字があるんですよ」

「1つの岩に相対する2つの神名があるのか」

「めずらしいですよね。これが公的に管理させることになった理由の1つですよ」

「なるほど」

 あたしには、ただ石になんか彫ってあるなってだけで、なにがなるほどなのか、さっぱりわかんない。

「なあ、それってスゴイのか?」

 さっきの5人も集まってきて、犬澤君に勝ったって男のコが話しかけてきた。


「俺は天凪仁狼。仁義の仁に狼って書いて、ひとつてって読むんだ」

 ニヤッと笑って親指立てる。

「わたし舞貴! 諏訪内舞貴っていうの。みんな東弥栄高の2年生だよ」

 天凪君とくちゲンカしてた女のコ。

「田中智恵で〜す! 邑久辺高で、わたしたちも同じ2年よ」

「その兄の祝鎮だ。ちなみに祝うに鎮座の鎮って書く」

「兄キは大学生だけど、精神年齢はそう違わないから遠慮しなくていいわ」

「お〜い! 少しは遠慮してくれ」

 2人のやりとりにみんな笑う。

「さっきいわれた通り、犬澤修仁」

「……あ、あたし、本多……佳那」

 時々『ほんとかな』っていわれることあるから、あんまりフルネームいうのは好きじゃない。ちょっとあいだ区切っていうようにしてる。

「神流原鈴乃です」

 犬澤君のこと知ってたコ。

「私は……御小波佳月」

 小さな声だったから聞き取りにくかったけど、名前の佳月だけは、ハッキリ聞こえた。

「磐拝順崇」

 最後にずっと黙ってた男のコが自己紹介。

 スゴく背が高い。ちいよりまだ頭2つは大きい、2メートルはありそう……それより目……つぶってるんじゃないと思うけど。最後の磐拝君の名前聞いた時、犬澤君があの笑い浮かべた。

 ちゃんと見なくても、なんか『笑ってる気配』が急に強くなるからすぐわかるようになってきたな。

「修仁か、すげえな。それなら鈴乃も負けてねぇぞ」

「やめてよぉ、仁狼ちゃん」

 天凪君がなんかいいかけると、神流原さんがスゴく困った顔して止める。なんだろう。

「1つ教えてほしいんだけど」

 犬澤君がニコニコしながら話しかける。

「この5人以外にもう2人。スゴく親しい友だちいない?」

「もう2人? っていっても」

 首かしげながら天凪君がほかのコに振り返る。

「珠希ちゃんじゃない? 織竹珠希ちゃん。漢字は…」

 御小波さんが犬澤君に教える。

「違うみたいだね」

 考えることなく、すぐ否定した。

「だったら、黒居沙苗、原樹絵梨、今墨秀徳、菱貝右近……」

 たくさんの名前あがったけど、ぜんぶ否定されてとうとうみんなあきらめた。

「だったら、どんな名前なら納得するっていうんだ?」

 逆に天凪君が尋ねる。

「そうだね、1人は太陽、光に関係してて、女のコかな。天凪君と関係が深いはずだよ」

「光に関係して、女のコ」

 天凪君はそう繰り返してハッとしたように顔上げて神流原さんのほう向くと、彼女も大きく目開いて驚いた顔してる。なんか思い当たることあるみたい。

「なによ〜ひとつて! 2人だけでなんか分かったみたいだけど。ひょっとして隠し子でもいるの?」

「いるわけねぇだろ!」

 諏訪内さんが不満げに2人責めるけど、そんなことあるはずない……と思う。

「じゃあなによ。わたしたちにも教えなさいよ」

「なんでもねぇよ」

「そ、そう。なんでもないよ」

「じゃあやっぱり隠し子なんだ」

「だから違うって!」

 なんでもないと思えない、2人がなんか知ってるのはわかる。

「それにもう1人は田園や清流……景色のいい流れ、渓流なんかに関係してて、やっぱり女のコかな。たぶん磐拝君と関わりが深いよ」

「それは……思いつかねぇな。どうだ? 順崇」

「いや」

 磐拝君が答えるけど……今度はほんとに誰も知らないみたい。

「まあいいか。そのうち解かるから…祝鎮さん、まだ2つペトログラフがあるんですよ」

 そのうちわかる……1人で根拠納得しながら、列石の1番外側に歩いていって、石の1つにしゃがみこむ。

 天凪君たちも顔見合わせながら、あとに続いてゾロゾロみんな集まる。

「これは……見たことないな」

 祝鎮さんが、石に彫られた文字? じっと見ながらつぶやく。2つのいびつな楕円形がならんでて何本かの線でつなげてある……縦に長いメガネみたい。

「これの意味は正確に解明されてないんですけど、一般的には蝶ではないかとされてます」

 昨日うちで神話思い出したのと同じく、さっきの名前聞いた時と同じに笑う犬澤君。

「一般的って、なにかあるな修仁くん」

「ええ、実は昨日この手のことが好きな者ばかり集まるサイトで、今回のこと話してたんですよ。そこでここのペトログラフのことが話題に上がったんです。

 それで面白い仮説を1つ思いついたんですよ……こっちにきてください」

 さっきの石からちょうど中央の石挟んで反対側にある、1番外側の石の前で止る。

「これが、寄り道して見せたかった本命です」

「……まさか!」

 最初に祝鎮さんがのぞき込んで、あたしたちも見た。

「これって……かなぼ〜の」

 いびつな楕円形の上のほうから出てる何本かの線……そこに彫られてるのは、たしかに夢の中に出てくる祭壇に描かれてる図形……スゴく抽象化されてるけど、描こうとした物の意志はたしかに感じられる。

「もちろん、これもまだ解明されてませんが、蝶に対して昆虫だと考えられてます。

 でもヴァフラ・ヴァウラの心臓と結びつけて考えるとすれば……あらゆる可能性の中で最も可能性が高いと思えるのは…さっきのが肺だとしか思えないんですよ」

 肺? そういわれてみればそんな気もする。

 でもなんで心臓と肺がべつべつの場所にあるんだろう?

 なんでほかの部分は描かれてないんだろう。


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