忍者
「あー、分かった。ちゃんとできたてのを買いにいくよ」
祝鎮さんがあきれながらいうけど、あたしもできたての食べられるのは嬉しい。
「それと一応、クグラ岩も調べておいたほうがいいかな。修仁くん、学校終わってから、一緒にいかないか? どうも君がきてくれたほうが、なにかと調査がやりやすそうだ」
「いいんですか? じゃあいきます。できれば本多さんにもきてほしいな、鼓動に感応してる1人だからなにか変化があるかもしれないし」
「あたしも?」
どうしよう。夢のことはスゴく気になるけど……その、なんかの変化っていうのはコワイ。
「わたしだけ仲間外れにしないで! 絶対ついていくからね」
ちいはあたしがいくものと決めてる。
「あたりまえだろう。これだけ聞いてお前がいかないなんていい出したら、こっちがビックリするよ…それじゃ明日、授業が終わる頃にでも高校の近くにあるどこかの喫茶店にでも入って待ってるから、携帯呼んでくれ」
「ん。オッケー兄キ」
……結局、あたしの返事は誰も聞いてくれないままみんな帰ってしまった…。
次の日、いつものように学校着いて教室に入ったとたん園美と奈絵、クラスの女のコ達に囲まれた。
「かなぼ〜!!」
コ……コワイ。園美コワイ。
「あんた昨日、犬澤君と一緒に帰ったでしょ」
「どういうコトか説明してよ」
口々に詰め寄ってくる。え〜と、え〜と……。
「よう! かなぼ〜はいるかぁ!」
後ろからちいの大声が響く。
「あ! 田中もかなぼ〜と一緒だったのよ」
「ええ! 本当に?」
「智恵ちゃんどういうこと?」
「へ? なにが」
ちいはなんでもない顔で答える。
「昨日、犬澤君と一緒だったでしょ?」
「ああ、あれね。犬澤くんがうちの兄キに会いたいっていうから一緒に帰ったんだよ……っていってたら本人がきたわ。おーい、犬澤くーん!」
大声でちょうどやってきた犬澤君呼ぶと、女のコ達は急に静かになる。
「おはよう、田中さん。どうしたの?」
あたし取り囲んでる女のコ見ながら不思議そうにやってきた。
「ちょっといってやってよ。昨日一緒に帰ったのは、うちの兄キの話が聞きたかっただけだって。でないとかなぼ〜が大変な目に遭うんだ」
あいかわらずちいらしいストレートないいかた。そんなこといったら、周りのコ達が昨日いってた犬澤君のファンだってバラしてるようなものなのに。
「うん、そうだよ。田中さんのお兄さん、モンゴルで発掘調査されてる遺跡の研究員なんだ。今ちょうど日本に戻ってこられてて、本多さんに用があるところに、ムリいって会わせてもらったんだよ」
そんなこと気にする様子もなく、ニコニコしながら答えてる。
「そうだ、五十嵐さんと新鳥さん。このあいだ貸してあげた本どうだった?」
取り囲んでたほかのコ達の視線が、園美と奈絵に集中した。
「あ……あの、まだ半分も読めてないけど、けっこうおもしろいよ……宇宙が膨張してる証拠の地球からどんどん離れていく星の光……赤方偏移の否定的なところなんか……」
園美が観念したようにいう。
「わたしは、イマイチ納得できないところはあるが、たしかに意外だけど分かりやすい理論だと思う」
奈絵も重い口開く。
「ほかにもいろいろあるから、いつでもいってくれれば持ってくるよ」
そういい残して自分の席に戻ってく。
「園美! 本ってなに?」
「なーちゃん、どういうこと?」
周り囲んでたコ達が2人に詰め寄る。その隙にちいがあたし引っ張って、みんなから離してくれた。
「どう、うまくいったっしょ?」
笑いながらウインク。そうか。こうなること予測してきてくれたんだ。
「なんでわかったの?」
「決まってるじゃない、わたしも教室に入ったとたん『智恵〜!』よ。あんたのことだから、なにもいえずにオロオロしてたんしょ?」
その通りだけど……。
「ちいはどうやって逃げてきたの?」
「わたしは犬澤くんファンじゃなくて、バスケ部の伴野先輩が好きなのって、ハッキリいってやったのよ。あんたも誤解されたくなかったら、好きなやつの1人や2人作りなさい」
「……2人もいらないと思うけど」
チラッと犬澤君のほう見ると、園美と奈絵囲んでたコ達が一斉に集まってる……良かった、これであたしに集中するはずだった攻撃がちょっとは散らばりそう。
「お? なんだかなぼ〜。犬澤くんのこと気になるのか〜?」
あたしの視線に、ちいが誤解する。
「違う違う。逃げられて良かったって思って……」
「まあ、今日も一緒に行動するんだし、そのうち気が変わるかもしれないもんね」
ニヤニヤしながらあたしの顔のぞき込む。うぅ……そんなコワイこと考えたくない。ともかくちいのおかげであたしは無事にすごせたけど、園美と奈絵はなんだかスゴく悔しがってた。
放課後、約束通り校門前で祝鎮さん待った。
「よっ! お待たせ」
携帯電話に連絡とってから5分くらいして、やのよろしの袋片手に祝鎮さんがやってきた。
「さっきでき上がったばかりのやつだよ」
「エライ!」
受け取りながら、ちいが嬉しそうに叫ぶ。
「あれ? 修仁くんはどうした」
「なんだかわかんないけど、駅で先に待ってるって」
「え? なんでわざわざ…」
「さあ? 犬澤君の考えてることなんてわかんないわよ」
ちいが祝鎮さんの背中押しながら歩き出す。
「……ほお、修仁くんやっぱり変わり者か。だろうと思ってたよ」
「兄キも人のこといえるの?」
「ははは!」
駅に着いて、先にきてるはずの犬澤君探しても……どこにも見当たんない。
「どこにいったんだ? トイレかな。ちょっと見てくるよ」
祝鎮さんが振り返ったとこに犬澤君立ってた。
「おっと、なんだいたのか」
「すいません、できるだけ目立たないようにしてたんです」
「あんたは忍者か!」
「みんなのぶんの切符は買ってあるよ」
突っ込みにも気にしないで、切符配ってくれる。




