興味
「……そのお吸い物なんで固まったの?」
「そう! 私もそれが不思議だったの。お父さん肉類ぜんぜん食べられないでしょ、お父さんと知り合うまで私はなんでも食べてたからゼラチンだったらすぐ分かるんだけど、そんな味しなかったし……でね、聞いてみたら寒天みたいなものなんだって」
「寒天? あれってそんなにすぐ固まったっけ? それにくちに入れたくらいで溶けるなんて……」
「詳しいことは教えてくれなかったけど、『タイミングと量のバランスだよ』とだけいってわよ」
「あっ、今日お姉ちゃんもそんなこといってたね」
「そ、そうだっけ? でもお料理はそうだよ……」
「なにいってるの? あんたたち。料理はどれだけ相手のことを思って作れるかでしょ」
「それがさっきのお父さんの料理だったっていうわけだね」
あ、お母さん薮つついた。紗弥の矛先がお母さんに向けられる。
「も、もう、いいじゃない」
さっきはお父さんがいたからケラケラ笑ってたけど、1人になるとやっぱり恥ずかしくなってきたらしく、赤くなってお茶碗かたづけはじめる。
ココでグズグズするといつこっちに紗弥の追及モードがセットされるかわかんない。空気察して部屋に戻ることにする。紗弥は、2人のなれ初めなんかしつこく聞きたがってる。きっと話すまで逃がしてくれないんだろうな…。
部屋に戻って、さっそく今日買ってきた本読むことにした。途中お風呂に入って、寝る前まで読むつもりだったけど、ついついやめられなくて最後まで読んでしまった……。
「……おはよう、佳那ちゃん。起きないと遅刻するわよ」
「え! そんな時間?」
お母さんの声に起こされる。あわてて時計見ると…これはかなり大変! ベッドから飛び出して、とりあえず着替え終わらせて鏡見る。
「うわぁ、髪の毛はねてる!」
「あははっ! お姉ちゃん、そのままアニメに出てもおかしくないよ!」
「おかしいほうがいいよぉ」
あたしの声に紗弥がわざわざ見物しにくる。とにかくお水で押さえて応急処置。あとは時間が解決してくれるの祈る。
キッチンにいっても、ご飯食べてる余裕なんてない。おなか空くけどこのままいこう……そう思ってると、お母さんがあたし呼ぶ。
「佳那ちゃん、これ持っていきなさい」
ラップに包まれたおにぎり渡してくれた。
「どこかで隠れて食べなさい」
「? うん。そうする」
お母さんは時々真顔で冗談いう。たまに本気の時があるらしいけど、見分けはつかない。
「お姉ちゃん早く」
「あ、待って。いってきま〜す」
とにかくいつもの時間に出かけることができた。
「……お姉ちゃん大丈夫? だんだんひどくなるようだけど」
「違うの、実は昨日遅くまで本読んでたの」
「そうなんだ? なんだ、お母さんも心配してたんだよ」
「ゴメンね」
「それだったらいいけど。お姉ちゃんタイミング悪いよ」
あたしは紗弥から別れるとこまでお説教された……うぅ。
「お〜っす! かなぼ〜。あれ? 今日は特に眠そうだね」
顔見るなりちいに指摘される。
「そんなに眠そうに見える?」
「目が起きてないよ……例の夢?」
「違うの、ゆうべ遅くまで本読んでて、あんまり寝てないの」
「なんだ。も〜、このコは心配かけるんじゃありません」
笑いながらあたしの頭ペシッとはじく。
「今日、帰りにいつものとこで待ってるからね」
「あ、そうか。お兄さんと会うんだ」
「そう、だいたいの時間見計らって、近所でお茶してるっていってたわ」
「ところで、かなぼ〜あんたもいいかげん携帯の操作覚えなさい!」
「うぅ、あたしもそう思うんだけど、コンピュータみたいにボタンいっぱい押したりするの、よくわかんないから」
「コンピュータと携帯は違うでしょ! って…ハァ。やっぱり、この手の話題はあんたにゃムリね」
「うん!」
あたしは自信もって断言する。スポーツに次いで携帯電話とかコンピュータとか機械のことはわかんない。
「ハイハイ。わたしが悪かったわよ。でも、よくそれで生活していけるわね。かなぼ〜見てると時々感心するわ」
「べ、べつに、あたしのうちじゃフツーだよ……って、紗弥とお父さんとお母さんはちゃんと使ってるけど」
「あんたがほんとにこのまま社会に出ていけるか、あたしゃ心配だよ」
「え〜っ。そんなことないよぉ」
学校着くまでちいから『携帯電話のことくらいは知ってなさい』といろいろ便利なこと教えてくれたけど、いってる言葉自体よくわかんなかったりする。
教室に入ると、すぐに犬澤君がやってきた。
「本多さん。これ昨日いってた本だよ。じゃあ、読んだら感想聞かせてね」
あたしが返事する間もなく、犬澤君はさっさと向こうへいってしまった。3冊ほどあたしの机に置かれた本は…。
『あらたまに おにやらい』『冀望』『失われた種族』。
うぅ……なんか違う、よくわかんないけど、なんか違う気がする。
どうしようか困りながらパラパラ本めくってると、クラスの園美と奈絵がやってきた。
「ねえ、かなぼ〜って犬澤君と友だちだったの?」
「なにをもらったのかね、犬澤君に」
「……へ? べつに友だちってわけじゃないよ。それにもらったんじゃなくて貸してくれるっていって、置いていったんだよ」
本見せると2人ともキョトンとあたし見る。
「かなぼ〜、こういうのに興味あるんだ」
「違うよぉ、犬澤君がムリヤリ置いてったんだってば」
「へーっ、ムリヤリねえ」
「かなぼ〜、これはコワイことになったぞ。これからは暗い夜道に気をつけんといけなくなるぞ」
園美がへんな目で見るうえに奈絵がおどかすけど、なんの話かわかんない。
「ど、どしたの。犬澤君ってなんかあるの?」
「かなぼ〜知らないの? 犬澤君って成績はスゴクいいんだけど、変わってるのよ」
「そして部員でもないのだが、部の存続のためにって頼まれて出た陸上でインターハイに出場して400メートル優勝するなどスポーツも万能など文武両道。
しかもめちゃくちゃイケメン。ハッキリいって敵は多いのだが……やはり少し変わってるのが問題だな」
「あたし、犬澤君って昨日初めて話したんだけど」
昨日の本屋さんでの姿思い出すと、スゴく納得。
「なにか変なこと言われなかった?」
園美が顔近づける。
「べ、べつに、昨日本屋さんで、あたしが買おうとしてた本に犬澤君も興味があっただけみたいで……」
「あ〜、もうあんた犬澤君の頭の中で仲間にされてるわよ」
「な、仲間にされたらなんかマズイの」
「マズくはないけどさ、あんたもこれから変わり者の仲間入りになったってことじゃない。
それで、犬澤君と成績合わせようと思ったら、これからよっぽど遅くまで塾通いになるわよ。だから暗い夜道には気をつけないとね」
そんなことなんだ。だけどあたし仲間じゃないから成績合わせる必要ないし、塾にもいかなくていい。




