魔法少女マジカル☆魔女リティ 【短編版】
連載してたのをラストを少し変えて短編にしました。
連載版はあんま動かそうとしてません。
リティはいつも、ピンクのフリルドレスを着て、
空を飛び、キラキラの魔法で悪者をやっつける
自分を想像していた。子供の頃からだ。
幼稚園の卒園式で「将来の夢は魔法少女!」
と発表した時、周りの子たちは笑ったけど、
リティは本気だった。
母親は「かわいいわね」と微笑んだが、
父親は「現実を見ろ」とため息をついた。
でもリティは諦めなかった。
中学生になっても、高校生になっても、
心の奥底でその夢を抱き続けていた。
今、リティは18歳。
東京の小さなアパートで一人暮らしをし、
アルバイトをしながら専門学校に通っている。
専門はイラストレーション。
夢はプロのイラストレーターになること。
でも本当の夢は、魔法少女。
現実では無理だってわかっているけど、
夜な夜なノートに魔法の呪文を書きなぐったり、
アニメの魔法少女シリーズを繰り返し見たりする。
かわいいキャラクターが日常を過ごしながら、
突然現れる敵を倒す。
あのキラキラした世界に、リティは憧れていた。
ある雨の夜、リティは帰宅途中に奇妙な出会いを果たした。
路地裏で、濡れた段ボール箱の中に小さな生き物がいた。
白い毛玉みたいなもの。耳がピンと立って、
大きな目が輝いている。
「マスコット?」リティは思わずつぶやいた。
アニメみたいだ。
「こんにちは、リティちゃん!
私はメルだよ。君の夢を叶えてあげるマスコットさ!」
その声は可愛らしく、媚びた感じで響いた。
リティは目を丸くした。夢?
どうして私の名前を知ってるの?
でも、なぜか心がざわつかなかった。
むしろ、興奮した。
「本物のマスコット? 魔法少女になれるの?」
メルはにこにこ笑って、ピンクの宝石を差し出した。
「これがマジカルジュエル! これで変身できるよ。
君は選ばれたんだ。魔法少女マジカル⭐︎魔女!」
リティは宝石を握りしめた。
温かかった。心臓がドキドキした。
子供の頃の夢が、現実になるなんて。
魔法少女アニメの主人公みたいだ。
ゆるふわの日常が、キラキラの冒険に変わる瞬間。
翌日、学校でリティは興奮を抑えきれなかった。
授業中もジュエルをポケットに忍ばせ、時々触っていた。
昼休み、屋上で一人でいると、突然メルが現れた。
「リティちゃん、準備はいい? 敵が現れたよ!」
「敵? 今?」
メルは頷いた。
「怪物だよ。街を脅かすマイノリティの化身さ。
排除しないと、社会が乱れるんだ。」
マイノリティ?
リティは少し引っかかったけど、興奮で流した。
変身の呪文を唱える。
「マジカル⭐︎チェンジ! 魔女リティ、参上!」
光が爆発し、リティの体が包まれた。
フリルのドレス、ピンクのブーツ、
リボンがいっぱいのヘアアクセ。
魔法のステッキが手元に現れる。萌え萌えの姿だ。
リティは鏡代わりの窓ガラスに映る自分を見て、
頰を赤らめた。「かわいい…!」
敵は学校の近くの公園に現れた。
怪物は奇妙だった。人間みたいな形だけど、
肌が青く、角が生えていて、目が複数ある。
叫び声が響く。
「助けて! 私たちはただ生きてるだけなのに!」
リティはステッキを構えた。
そこに、もう一人の少女が現れた。
黒髪のロングヘア、クールな表情。
「小鳥遊さん?」
小鳥遊アリス。
学校の先輩で、イラストレーション科のエース。
いつもクールで、みんなの憧れ。
「リティ、後輩か。君も選ばれたのね。私はマジカル⭐︎魔女アリス。メルのパートナーよ。」
「えっ…!あなたが…!?」
魔女⭐︎アリスはネットで話題の魔法少女。
私の密かな憧れ。怪物を倒す姿がかっこいいの!
メルが飛び跳ねた。
「アリスちゃん、先輩として指導してあげて!
この怪物は排除対象だよ。
社会のルールに合わない存在さ。」
怪物は怯えていた。
「私たちは差別されてるだけだ! 何も悪いことしてないのに!」
リティは迷った。でも、メルの声が響く。
「撃て、リティちゃん。みんなのためだよ。
魔法少女の夢、叶えよう!」
リティは目を閉じて、ステッキを振った。
「マジカル⭐︎ビーム!」
光のビームが怪物に直撃。
怪物は悲鳴を上げ、消滅した。
公園は静かになった。近くの人が拍手した。
「すごい! 魔法少女が怪物倒した!」
リティは胸を高鳴らせた。みんなから讃えられる!
夢が叶った!
その夜、リティはスマホをチェックした。
ニュースアプリに、自分の姿が映っていた。
「謎の魔法少女、怪物撃退! 街のヒーロー誕生?」
コメント欄は沸いていた。
「かわいい! 萌え!」
「アニメみたい!」
「リティちゃん、推せる!」
リティは頰を緩めた。
でも、スクロールしていくと、雰囲気が変わった。
「怪物が可哀想。なんかしたの?」
「ただ違うだけなのに、やりすぎじゃね?」
「差別だろ、これ。マイノリティ排除?」
リティは凍りついた。
SNSでトレンド入り。
「#マイノリティ差別」
「#怪物可哀想」
ポストが次々。
「あの怪物、ただの異文化持ちだったのに。なぜ殺す?」
「魔法少女って、結局多数派の道具かよ」
「炎上商法? でもやりすぎ。通報した方がいい」
リティはパニックになった。
「え、なんで? 私はみんなを守ったのに…」
メルがベッドの上に現れた。
「リティちゃん、気にしないで。
ネットの連中は暇なんだよ。
あの怪物はマイノリティさ。
排除されるべき存在なんだ。
そのほうが社会に都合がいいだろう?
みんなが同じルールで生きる方が、平和だよ。」
リティは耳を疑った。
「マイノリティを排除? そんな…差別じゃないの?」
メルは可愛らしい顔で笑った。
「差別? 違うよ。現実だよ。
社会は多数派のためにあるんだ。
少数派は邪魔者さ。排除して、みんな幸せになろうよ。
君の夢、ブラックな部分も含めて叶えてあげる。」
リティはジュエルを握りしめた。
ネットの誹謗中傷が、リティの心を蝕み始める。
翌朝、学校で小鳥遊さんがリティを呼び止めた。
「リティ、昨日のことだけど…大丈夫? ネット見てた?」
リティは頷いた。
「炎上してる…。怪物が可哀想だって。」
小鳥遊さんはため息をついた。
「メルはいつもそう言うの。『マイノリティは排除しろ』って。あいつ、差別主義者だよ。でも、魔法少女の力は本物。社会を変えられるかも。」
「変えられる? でも、みんなから嫌われてる…」
小鳥遊さんはスマホを見せた。
SNSのポスト。
「#リティ差別キャンペーン」
「怪物は被害者。魔女は加害者」
コメント
「やりすぎ! 怪物は何もしてないのに」
「これはヘイトクライムだ」
「魔法少女? ただの差別主義者のマリオネットじゃん」
リティは涙目になった。「私はただ、夢を…」
メルが現れた。
「リティちゃん、泣かないで。あの連中は偽善者さ。怪物みたいなマイノリティがいるから、社会が乱れるんだ。排除して、みんな同じにしようよ。それが本当の平等だよ。」
リティはメルを睨んだ。
「平等? 排除が平等なの?」
メルはにこにこ。
「そうだよ。多数派のルールに合わない奴は、
消せばいい。ネットの炎上?
あれは誹謗中傷じゃない。真実さ。君は英雄だよ。
次はもっと大きな怪物だ。倒せば、みんな認めるはず。」
リティは迷った。
子供の夢は、こんなブラックなものじゃなかったはず。
アニメで、みんな笑顔で終わるはずだったのに。
現実が、夢を汚していく。
その夜、再び怪物が現れた。
今度は街の中心部。怪物は叫んだ。
「私たちはただ、違う文化で生きてるだけ! なぜ排除する?」
リティは変身した。
小鳥遊さんが隣に立つ。
「リティ、一緒に戦おう。でも、メルの言うこと、信じすぎるな。」
メルが囁く。「撃て。排除しろ。社会のためだ。」
リティはステッキを構えた。
でも、手が震えた。ネットの声が頭に響く。
「差別だ!」「可哀想!」「やりすぎ!」
ビームが放たれた。怪物は消えた。
でも、今回は拍手はなかった。
代わりに、スマホの通知が鳴り止まない。炎上が加速する。
家に帰ったリティは、ベッドに崩れ落ちた。
SNSを開くと、トレンド1位。
「#魔女リティキャンセル」
ポストの嵐。
「怪物は何の罪? ただ違うだけなのに」
「魔法少女って、現代の差別象徴かよ」
「夢見てるだけの差別主義者」
リティはメルに問うた。
「これが私の夢? みんなから嫌われて、差別を助長するのが?」
メルは可愛く首を傾げた。
「夢なんて、そんなもんだよ。
光の表層の下に、たくさんの闇がある。
社会はマイノリティを排除したがってるんだ。
君はそれを実行するツールさ。
みんなのため、社会の都合のため。」
リティはジュエルを投げ捨てた。
「こんな夢、いらない!」
でも、ジュエルは光り続け、メルは消えなかった。「リティちゃん、逃げられないよ。
これは現実だ。夢なんてなかったんだ。」
リティは目を閉じた。
子供の頃のピンクの夢が、黒く染まっていく。
ネットの誹謗中傷が、彼女の心を蝕む。
魔法少女は、甘いものじゃなかった。
批判と中傷だらけの、地獄の仕事。




