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『導かれる者たちの中で 〜レベルを上げて魔王を倒す。それが正しいと、誰も疑わなかった。〜』  作者: 街角のコータロー
第1章

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第4話: 王座の違和感

バチッ。


頭の奥で、何かが弾けた。


闇。


いや、違う。


赤黒い光が揺れている。


ゆっくりと視界が定まる。


高い天井。

巨大な柱。

冷たい石の床。


王座。


……王座?


自分の手を見る。


黒い甲冑。

指先まで覆う、重い装備。


胸の奥に、濃い魔力が渦巻いているのが分かる。


「魔王様?」


声がした。


低く、揃った声。


階段の下。


四人が膝をつき、頭を垂れている。


……四人?


炎将。

氷姫。

獣王。

闇宰相。


我が軍最高戦力。


四天王。


……そうだ。


余は魔王だ。


人間と争い、世界を覆い尽くす存在。


そうだったはずだ。


だが。


何かが、薄くズレている。


「魔王様、如何なさいました?」


炎将が顔を上げる。


その動きが、やけに整っている。


四人とも、同じ角度で、同じ距離で、同じ姿勢。


揃いすぎている。


「報告を続けろ」


余は言う。


声は低く、重い。


「はっ!北の砦が落とされましたが想定内です!」


想定内。


便利な言葉だ。


「想定とは何だ」


一瞬、間。


「……我らが軍勢は計画通り進軍しております」


計画。


誰が立てた。


「人間と争っている理由を述べよ」


沈黙。


四天王が顔を見合わせる。


やけに、ゆっくりと。


炎将が答える。


「我らの代より前から続いております」


「起源は」


「歴史書には……明確な記述はございません」


明確でない?


なぜだ。


戦争の理由が、曖昧?


「では、なぜ争う」


氷姫が口を開く。


「人間は敵です」


「なぜ敵だ」


「……人間だからです」


噛み合わない。


余は身を乗り出す。


「最初の衝突は誰が起こした」


闇宰相が答える。


「……記録はございません」


「誰が侵攻を決めた」


「……魔王様です」


余か?


記憶を辿る。


霧。


玉座。

軍勢。

号令。


だが、決定の瞬間が曖昧だ。


理由がない。


動機がない。


あるのは“結果”だけ。


「なぜだ」


余は問う。


炎将が困惑する。


「魔王様……?」


その目に、理解がない。


余の問いが、理解されていない。


「何故、人間と争う」


氷姫が繰り返す。


「……それが我らの役目」


役目。


まただ。


勇者も言っていた。


役割。


導き。


揃いすぎている。


四人。


炎。氷。獣。闇。


均衡が取れている。


あまりに整っている。


まるで——


誰かが配置したみたいに。


「会議は中止だ」


玉座から立ち上がる。


四天王が同時に声を上げる。


「魔王様!?」


同時に。


揃いすぎだ。


「散歩だ。ついてくるな」


扉を開ける。


廊下。


魔族の兵が頭を下げる。


同じ角度。


同じ動き。


城を出る。


森へ。


魔気が濃い。


胸の奥が落ち着く。


だが、疑問は消えない。


なぜ我は疑問を持った。


今まで、疑わなかったはずだ。


人間は敵。


滅ぼすべき存在。


そう教えられた。


……誰に?


思い出せない。


森の奥で、唸り声。


巨大な影。


ドラゴンゾンビ。


腐敗した翼。

骨の露出した顎。


余を見るや、咆哮する。


無礼だ。


獣風情が。


余は剣を抜く。


一閃。


魔力を込める。


斬撃が空間を裂く。


ドラゴンゾンビの身体が、縦に割れる。


一撃。


他愛もない。


その瞬間。


頭の奥で、硬い音。


【レベルが上がりました】


……何だ。


【力が10上昇しました】


【知能が5上昇しました】


【次のレベルまで15000】


15000?


余は目を細める。


何の話だ。


【スキル《裂空》を習得しました】


情報が流れ込む。


知らぬ技。


知らぬ軌道。


身体が勝手に理解する。


余は空を斬る。


衝撃波が木々を薙ぎ払う。


森が裂ける。


……強い。


だが。


余は、これを知らぬ。


この感覚は、鍛錬ではない。


付与だ。


誰かが。


余に。


【ERROR】


視界が赤く染まる。


世界が一瞬、色褪せる。


音が歪む。


【修正】


胸の奥から、何かが引き抜かれる。


さっき得たはずの感覚が、薄れる。


裂空の軌道が曖昧になる。


余は息を吐く。


「……修正だな」


口から言葉が漏れる。


誰に向けた言葉だ。


勇者たちは、これを繰り返しているのか?


上がる。


付与される。


そして、修正される。


予定調和。


その言葉が、浮かぶ。


余は森を見渡す。


空は暗い。


だが。


この世界の暗さは、別のところにある。


勇者は疑わない。


四天王は答えない。


余だけが、問いを持った。


問いを持った瞬間、


ERRORが出た。


つまり。


疑問は、想定外なのか。


余は剣を握る。


冷たい。


確かな感触。


だが、この感触すら、演出かもしれぬ。


レベルを上げる。


勇者は強くなる。


余も強くなる。


そして、ぶつかる。


それが、正しい。


誰も疑わなかった。


だが。


余は、疑っている。


ならば。


この物語は、どこへ向かう?


森の奥で、風が鳴る。


その音が、やけに機械的に聞こえた。




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