第2章 「ひこうと一軒家の人」
今回も続けて言うが、この物語にハッピーエンドと言う物は断じて”存在しない”。そしてこれはのちに凶悪犯罪者となる彦雨がどんどん闇に堕ちていく物語である。前回は店員に呼ばれたと思われるパトカーから離れるためにどこか遠くを目指して走り出したところからの続きである。
「はあ……はあ……」どれぐらい走っただろうか、足の筋肉が勝手にピクピクするぐらいは走ったのは確かだ。
ふと前を見ると白髪が少し混じった中年ぐらいの男性がすぐ近くでこちらを心配そうに覗き込んでいた。 「うわっ!!!」つい叫んでしまった。
「あ、すまないすまない驚かせるつもりは無かったんだ」
話を聞くとどうやらぼくは少しふらつきながらすごく息が荒くて心配になり少し近くで様子を見ようとしたところぼくが気づいて…そして今に至るわけだ。
「ご心配おかけしてすみません今親と大喧嘩をしまして家出中なんです。すぐには帰れないので1日だけでも泊めてくれませんか?」ぼくは無意識の間に嘘をついたもちろん嘘がいけない事はわかってる、けど口が勝手に動いたような感覚でぼくにはどうすることもできなかった。男性は少しの間迷ったのちに言った
「本当に1日だけならいいよ、何日もいられると警察に捕まってしまうかもしれないからね。あとわたしの名前は慶太だよよろしく君の名前は?」もう一回嘘をつこうか迷ったがぼくの答えは一つだ。
「創真です。創作の創に真実の真で創真です。」前にぼくを拒絶した彼の名前である。もしぼくが犯罪を犯したのがバレたときに彼への評判や周りからの目がキツくなるようにぼくからあいつへのちょっとした呪いだ。
それからぼくは慶太さんの家で泊まる事にした。案内されたのは玄関からすぐ右の階段を登って一番近い空き部屋である。もともと慶太さんの息子がいたらしいが10年前程前に奥さんが子供を連れて「さよなら。」と書かれた手紙を置いて出ていってしまったらしい。慶太さんはそれについてこう言っていた
「息子と会えなくなった事は悲しいがわたしもあんまり良い父ちゃんじゃ無くて…カッとなるとすぐ大きな声でどなって、冬だろうが家の外に追い出して5分ぐらい放置するような感じのクソ親父だったからさ息子にとってはうるさい親父がいなくなって、今は笑顔で新しい父ちゃんと笑いながら生きてると信じたい」ぼくはなんとなく息子さんは生きていないと思った。何を思ったかそれを慶太さんに言ってしまった。すると慶太さんは怒るわけでもなく泣くわけでもなくこういった。
「雨彦みたいな事を言うんだね?」
「アマビコ?」
「そう、雨彦、むか〜しいた妖怪でね、3本足で顔を除く体が体毛に覆われた猿に似た見た目で、海中から出てきては良い事や悪い事を予言したりする奴だよ、諸説あるけどね」
そう言って紙に書いてもらい、雨彦の漢字を見せてもらった。
彦雨の名前に似ている。それでぼくの名前の由来について思い出した。
ぼくが小学2年生の時の授業で「自分の由来について保護者にインタビューしてみよう!」という物があった。そしてぼくはお母さんに聞いた
「おかあさん!ぼくのなまえのゆらいってなに?」
お母さんは仕事を中断し少しイライラしながらもぼくを傷つけないよう、優しく言った。
「あなたの名前はお父さんが決めたのよ、由来は雨彦っていう妖怪からで良い事や、悪い事を事前に教えてくれる子なの。それで彦ちゃんが良い事を予言するいい子の雨彦になりますようにってつけたの」と教えてくれた
ちなみにお母さんの仕事は小説家で、実は家のお金はすべてお母さんが稼いでいて今までには2回ほど賞をとり何回か映像化している。すごく成功している小説家だった。
そういえば、そんなお母さんにぼくのお父さんは…
「小説など個人の頭の中にある妄想を無駄に長い文章にしてるだけだ!遊びと一緒であいつはちゃんと仕事をしていないんだ!俺はこんなに頑張ってお前みたいなクソガキを世話してやってんのに!クソが!」と”機嫌の良い時”に言っていることがあった。
そんな事を思い出しながらぼくは案内された部屋のベッドに横になる。感じたことのないほど気持ち良いベッドだった。まぶたが岩の様に重たくなり、気づけば寝ていたようだ。まだ日付は変わっていない、すると下の階からいい匂いがする。
1階に降りると慶太さんが優しい顔をして迎えてくれた。なんと匂いの正体は豪華な晩御飯だった。献立はプロのシェフが作った様な完璧なミディアムレアのステーキ、そしてツルツルで湯気が塔の様に立ち上るとても美味しそうな白米、わかめと豆腐の味噌汁があった慶太さんは笑顔でこう言った
「息子が帰ってきたようでとても張り切ってしまったよ!おかわりはいくらでもあるから遠慮せずに食べてくれ」ぼくはステーキなんて良いもの人生で一度も食べたことがなかったので慶太さんに食べ方を教えてもらいながらなれない豪華な料理を口に運ぶ、それは美味しすぎて自分の手がロボットの様に自動で動くほどである。今日までのストレスを無くすために沢山、沢山食べた。気づけば涙がながれていた。
びっくりした慶太さんが
「そうだろう、そうだろう、感動するほどうまいだろう?これでも元はシェフを目指してステーキだけは美味しく作れるんだよ」ぼくはシェフを目指していた事に尊敬を抱いた。「本当に感動しました!でもステーキ以外も美味しいですよ?」
その後、二人でゲームをする事にした。とても有名なゲームで内容は「ヒゲを生やした姫が冒険して赤い帽子の男性をスッポンの化け物から救う。」という内容である。ゲームもやった事が無いのでグダグダだったが1時間ほどで慶太さんよりも上手くなっていた。
でも数日前からは一切想像できなかった幸せの連続で怖くなっていた。
慶太さんは一冊の本をくれた、どうやら小説のようである、しかしぼくはその小説の作者を知っていた。「花子」と書いてある、ぼくのお母さんのだ。慶太さん曰く「この本はわたしの知り合いからもらった物だ。わたしはもう読んだし君にあげようその小説を読むと人生が幸せに生きやすくなる事がいっぱい書いてある」ということだぼくは貸してもらっている自分の部屋のベッドに入りその小説をすべて読んだ。
読み終わったあとすぐに睡魔が襲ってきた。体が疲れていたのかすぐに眠りについた。
朝だ。静かな朝、鳥の鳴き声しか聞こえない、まだ日が登ったばかりの時間、
「さよなら…」
と独り言をつぶやき部屋を出ていった。
後日ニュースで聞いた話だがこの近くの市で女性とその息子と思われる子が寒い森の中、冷たくなった状態で発見されたらしい。
ぼくの予想…いや、予言は偶然あっていた。これでは本当に雨彦だなと自分で思った。
ぼくは遠く、でも大きい音の大量のパトカーの音を耳に入れながら自分がもう戻れない事を思い出して
ぼくはまたどこか遠くを目指してクラシック音楽の様に軽快なステップを刻み、今度はどんな人に会えるのかと思いながら走り出した。
新しいエピソードを投稿するのに少し間が空きましたがそれは僕が趣味でやっているからです。投稿頻度がバラバラですが楽しんで読んでもらえると幸いです。どうなるかはよくわかりませんが次か次の次にひこうくんが何かすごい事をする章になるんじゃないかなと僕は思います。ひこうくんが幸せになりますように。




